米国・J.D. パワー発表の2016年米国自動車商品魅力度(Automotive Performance, Execution and Layout 、略称APEAL)調査で、評判の良いドライバー・アシスト技術が自動車の商品魅力度を大幅に向上させていることが明らかになった。
この調査によると、死角モニタリングや低速域衝突回避などの安全装備を搭載している新車は、このような技術を搭載していない車両と比べて総合APEALスコアが大幅に高いことが明らかになった。
死角モニタリングを搭載している車両は、調査対象のうち41%となっており、この技術を搭載していない車両のユーザーと比べて総合APEALスコアが高かった(821対787ポイント)。
また、同様に30%が衝突回避技術を搭載しているが、この技術を搭載していない車両のユーザーよりもAPEALスコアが高かった(828対790ポイント)。
J.D. パワーの米国オートモーティブ品質部門バイス・プレジデントのレネ・ステファンズ氏は、「技術を活用した安全装備によって、ドライバーは車両の運転中に快適さと信頼感を得ることができる。
このような装備は、完全自動運転機能への『入り口となる技術』でもあるため、新車におけるより進んだ自動運転技術の導入を含め、自動車業界の進化に合わせて消費者の関心を引き続けることが重要になってくるだろう」と述べている。
商品魅力度に極めて重要な新商品の発売
今年の総合APEALスコアは、多くの新車が発売されたこともあり、業界平均で801ポイントと前年から3ポイント向上した。
2016年は、本調査の対象となった30モデルの新型車またはモデルチェンジ車のうち22モデルのスコアが、該当セグメントの平均を上回っている。
過去10年間をみると、新たに発売された車両のスコアは、該当のセグメント平均よりも平均で29ポイント高かった。
先のステファンズ氏は、「成功するモデルとなるために重要なことは、発売時の商品魅力度が非常に高いことと、発売してから数年の間に往々にして見られる商品魅力度の低下を抑えることである。
自動車メーカーは自社の商品に先進技術を含む機能を追加し続けているが、商品魅力度を維持するための重要な方法の一つは、アップグレードが容易で直感的に操作できる技術を設計することである。
直感的に操作できる技術が廃れることはない。直感的な操作を可能にする設計とは、例えばインフォテインメントシステムなら、大きなボタン、大きなスクリーン、ドライバーが理解しやすいように配置されているメニューなどのシンプルなものを指す」と語った。
主な調査結果
APEALは推奨意向に影響:APEALスコアが平均以上(801ポイント以上)で、新車を購入またはリースしてから90日以内に不具合を経験していないユーザーのうち90%が、購入モデルを他者に「必ず」勧めると回答している。
その一方で、APEALスコアが低い(800ポイント以下)ユーザーでは、車両の不具合を経験していなくても推奨意向は64%に低下する。不具合を1件以上経験したユーザーでは、推奨意向は49%と著しく低下する[1]。
懸念材料はナビゲーション:純正ナビゲーションシステムは車両ユーザーにとって引き続き懸念材料の1つである。
最も評価が低かった項目の2つがナビゲーションシステムに関する項目で、「ナビゲーション機能の使い勝手のよさ」と「車載ナビゲーションシステムの使いやすさ」だった。
燃費の向上
今年の調査では10カテゴリーのうち9つが向上し、前年から向上幅が最も大きかったのは「燃費」だった(+14ポイント)。
また、「オーディオ/コミュニケーション/エンターテインメント/ナビゲーション(ACEN)」は6ポイント、「視認性と運転安全性」は4ポイント向上した。
変速中のもたつき:今年、唯一スコアが低下したカテゴリーは「エンジン/トランスミッション」であり(-1ポイント)、「トランスミッションの変速時のスムーズさ」の項目に対する評価の低下幅が最も大きかった。なお8速および9速自動変速装置の普及が進んでいる。
ブランド別ランキングのトップブランドとセグメントアワードのトップモデル
ブランド別ランキングでは、ポルシェが877ポイントで12年連続第1位となった。
第2位はBMW(859)、第3位は同率でジャガーとメルセデス・ベンツ(852)、第5位は同率でランドローバー、レクサス、リンカーン(843)が入った。
ノンプレミアム系ブランドでは、フォルクスワーゲン(809)が最も高く、ミニ(808)、起亜(807)、フォード(803)、ラム(803)、GMC(802)が続く。
セグメントアワードでは、ゼネラルモーターズが6モデルでアワードを受賞して最多となり、続いて現代自動車の5モデル、BMW AGとフォルクスワーゲンAGのそれぞれ4モデルがアワードを受賞した。
日産自動車とトヨタ自動車はそれぞれ2モデルが該当セグメントでアワードを受賞した。
ブランド別のセグメントアワード受賞モデルは以下のとおり
◎ゼネラルモーターズ:ビュイック・カスケーダ、シボレー・カマロ、シボレー・コロラド、シボレー・ソニック、シボレー・タホ、GMC・シエラHD
◎現代自動車:ヒュンダイ・ツーソン、起亜・オプティマ、起亜・セドナ、起亜・ソレント、起亜・ソウル
◎BMW AG:BMW・2シリーズ、BMW・X1、BMW・X6、ミニ・クラブマン
◎フォルクスワーゲンAG:アウディ・A6、ポルシェ・911、ポルシェ・ボクスター、ポルシェ・マカン
◎日産自動車:日産・マキシマ、日産・タイタン
◎トヨタ自動車:レクサス・RC、トヨタ・RAV4
セグメントアワードを受賞したその他のモデルは、ランドローバー・レンジローバー、スマート・フォーツーだった。
[1] このパラグラフにおける不具合に関するすべてのデータは、J.D. パワー米国自動車初期品質調査SM(IQS)に基づいている。
※調査について
今年で21年目となるAPEAL調査は、新車に対する愛着や期待感などから新車の魅力度を調べる業界のベンチマーク調査の役割を果たしている。
ユーザーは、アクセルを踏んだ時に感じるパワーから運転席に座った時に感じる快適さや高級感まで、77の項目で車を評価し、その合計(1,000ポイント満点)が総合APEALスコアとなる。これらの結果の重要性は誇張してもし過ぎることはない。
この調査では毎年、APEALスコアが高いほど推奨意向や顧客ロイヤルティが大幅に上昇することを示している。
APEAL調査は、世界中のメーカーがさらに魅力的な車両の設計と開発に役立てるため、消費者には購入の際の目安として幅広く活用されている。
APEAL調査は、新車購入(もしくはリース契約)後90日以内にユーザーが経験した不具合に焦点を当てたJ.D. パワー初期品質調査SM(IQS)と対をなすものである。2016年の米国APEAL調査は、2016年型の新車(自家用車およびライトトラック)を購入もしくはリース契約した80,000人以上の対象者に、購入(またはリース)後90日を経てから調査した回答を基にしている。本調査は、2016年2月から5月にかけて実施された。