アジア太平洋地域のトレンドでは、品質感の高いパールホワイトと、解放的なアジアのエネルギッシュな創造性を表す強い色調を打ち出す
BASF(本社:独ラインラント=プファルツ州ルートヴィッヒスハーフェン、取締役会会長兼CEO:クルト ボック、以下、BASF)は先の6月14日、東京都内に於いて、2017-2018年の世界全域を俯瞰・網羅した『自動車カラートレンド予測2017-2018』を発表した。
この自動車業界全域を対象とした、同社のカラートレンド予測は毎年、『EMEA(欧州・中東・アフリカ)』・『アジア太平洋』・『欧州』・『北米』など複数地域で研究を重ねている同社所属の色彩の専門家達が、各地域の分析を経て説得力の高い流行の源泉を打ち出し、毎年春期に今後数年間で自動車塗色に影響を及ぼす傾向を発信するもの。
そして当該業界は、同社からのカラー情報を得ることで、時代を象徴するとも言える車体色トレンドを、いち早い段階で見極めることができるようになる。
そんなBASFの最新カラートレンド予測は、今回2017—2018年のテーマに、デジタル社会を迎えて久しい社会環境下で『透明と不透明の間』(トランスルーシッド:Translucid)を据えた。
これを踏まえて、同社が提案したカラーパレットは、『透明感』と干渉効果のある『曖昧さ』を下敷きとしている。この『透明感と曖昧さ』と云うテーマ設定が、意図するものは以下の通りである。
まず例えとして、『いち個人』に対峙する『世界(世間)』との間に『1枚のガラス』があると見立てた。
つまりそれは、ガラスの遮蔽された窓(画面)であり、これは今日、多くの人々が日常的に利用している『スマートフォン』や『PC』など(デバイス)の画面(ガラス窓)を通じて、世の中と個人が双方向で繫がっているような状況を表現している。
しかしこのガラス窓は、昨今のフェィクニュースの伝播の様に、時には不透明なフィルターとなってしまうことがあり、本来は正しく行き来きしなければならない真の情報を『無意識』に、または『意図的』に曇らせることがある。
そしてそんな不透明で、危うい環境から沸き起こる不安感から、それぞれの人々は真の実体(真実)を求めるようになると云う。
また人々は、互いに価値を共有する豊かな未来社会を実現させるために、この不自由な『透明』と『不透明』の間を行き来するフィルターを介して、より良い方向や、方策を見つけ出していく柔軟さが求められるとも云う。
そんな次世代のデジタル社会に於ける2017—2018年のテーマ設定に対して、世界のBASF各拠点のカラーデザイナー達は、互いに共鳴しながら、65色の新たな時代を自動車塗色で表現した。
その基調となるのは『デジタルシフト』であり、それは強い色調のブルーと新たな明るい色となる。
一方で人々は、個人から吸い上げられるビッグデータの収集や、監視社会から距離を置き、本来の生身の身体が持つ自然な美しさに代表される、直に手で触れられる実体のある『アナログ』的なものを求めているとした。
この流れから、この『デジタル』と『アナログ』というふたつのトレンドカラーが、2017—2018年の自動車塗色にも影響を及ぼすと云う。
具体的には、アナログらしさの象徴として、人の肌を表す『暖かなベージュ』を提案しており、先のデジタルシフトを意味する『ダークブルー』や『ライトブルー』は、そんなアナログとの融合を求めて、生身の人間に浸透してくるテクノロジーの力を表現した。
実際、現代社会は『時間』や『空間』の制限なく、膨大なデータが交換されることで、『透明と不透明』との境界線が流動的になっている。
それに伴い現実の交通社会に於いても、ドライバーが様々な環境から情報を得て、コミュニケーションを取らねばならない場面が、益々増え、自動車そのものが『A地点からB地点へ移動する』単なる乗り物から、複雑な製品へと日々進化している。
このような状況が奥行きのある輝きや、爽やかで鮮明なテクスチャ効果に反映されていると云う。
また併せて提案されたパステルカラーや、色調の強いブルーは、そのような新たなテクノロジーのイメージを表しており、デジタル世代のユニークさを、ことさら強調しているとする。
結果、人々はデジタル社会を等して、曝け出された自身の姿に恐れを抱きつつも、デジタルに魅了される気持ちも並行して沸き起こり、『ダークグレー』と『ミディアムグレー』の間を揺れ動く状態として表現されている。
なお、こうしたコンセプトを背景に、世界各地のカラーデザイナーが打ち出したカラートレンドについては、BASFジャパン株式会社コーティングス事業部・カラーデザインセンター アジア・パシフィックのチーフカラーデザイナーである松原千春氏により、下記の様に語られた。
EMEA(欧州・中東・アフリカ) – 未来への回帰
「欧州、中東、アフリカに於ける注目の新色は、デジタルから離れたカラーになります。
アラブ世界の高級製品を表したような品位のあるゴールドカラーと、暖かみのある煉瓦のようなカラーに滑らかな効果をもたらす処理を施すことで、古い時代から新たな時代へと突き進む先進性を表現しています。
一方、EMEA(欧州・中東・アフリカ)の人々は、世界的なライフスタイルや、カスタマイズされた製品以外の部分に目を向けています。
彼らは自身のアイデンティティーを表現するために、艶消しのクリアコーティングが施されたイエローグリーンなど、通常の標準的な自動車パレットにはない色を求めています。今後は欧州の街並みが、こうした色合いで鮮やかに彩られることでしょう。」
北米 – 自然への回帰
「対して、北米のトレンドは、最先端テクノロジーが侵入している日常生活から離れ、より自然な世界感やコミュニティ、自らの身体と再び結び付きたいというナチュラルな願望が表現されています。
そんなこの地域の鍵となるカラーは、神秘さを醸し出し、自己に立ち返ることを意味する、シルキーな質感の非常にダークなネイビーブルー「Undercurrent Blue」(アンダーカレント・ブルー)となります。」
アジア太平洋 – 自由意志
「さて、そうしたなか世界では、ユニークなアジアスタイルの用途や製品が存在感を示すようになっていますが、特にこの地域のユニークな精神性を表す象徴的なカラーとして、パールホワイトの存在が際立っています。
また、新しいアジアのスタイルは反抗的な精神にも満ち溢れています。
これは、家族や社会の期待に応えるという大きなプレッシャーや、ストレスからの解放を求めるアジア地域に於ける中国の若い世代の反抗心を表しています。
2000年以降に成人となる、あるいは社会人になる世代を指すミレニアル世代は、あえて過去のステレオタイプな見方に反対し、独自の自信に溢れた冷静さを持ち合わせています。
彼らは『未来は自分の手の中に』をモットーに自信を高め、さらに活動的になっています。
そんな彼らの精神性が、煌めくガラスフレークを散りばめた深みのある鮮やかな赤に表現されており、彼らのクールで反抗的な精神が見て取れるのです。
昨今、これらのカラートレンド予測は、特に有彩色のトレンド変化が速く、これを捉え、新たな自動車塗色に活かしていくことこそ、世界の各地域のエンドユーザーにアピールする上で戦略的に重要であると考えています。
また我々BASFは、世界をリードする自動車塗料サプライヤーとして、そうした世界の広域に亘る自動車業界と密接に連携し、当該地域のお客様のビジネスの成功につながるサービスを、今後も積極的にお届けいたしてまいります」と述べた。
なお今発表を行ったBASFのコーティングス事業本部は、自動車用塗料・自動車補修用塗料・装飾用塗料、及びそれらの応用に必要なプロセスの開発・生産・販売を行っている。
2016年におけるBASFコーティングス事業部の世界の売上高は、ヨーロッパ、北米、南米、アジア太平洋などの複数拠点を介した広範なネットワークを通じて32億ユーロを売り上げている。
加えて昨年となった2016年に同社は、メタル、プラスチック、ガラス基板など幅広い産業での表面処理事業を担うシェメタルを買収。
こうしたポートフォリオの拡大によって、BASFはより一層力強い塗料のソリューションプロバイダーとして、Solutions beyond your imagination(想像をはるかに超えたソリューション)を提供していくと構えだと云う。
BASFコーティングス詳細情報
http://www.basf-coatings.com (英語)
http://www.basf.co.jp/coatings (日本語)