ドイツの自動車部品メーカー、マーレ社(Mahle GmbH、本社:ドイツ シュトゥットガルト、CEO:ヴォルフヘニング・シャイダー、Wolf-Henning Scheider)は、圧縮天然ガス(CNG)とダウンサイジングエンジンを組み合わせることで、内燃機関開発継続の意義を証明した。
同社によると、エンジン設計を最適化することで、CO2排出量を最大31%低減することが可能と云う。但し、この注目に値する結果も、コンポーネントがCNGモノフューエル運転の厳しい要求に耐えられなければ現実のものとはならないとも云う。
CNG駆動車自体は、既に何年も前から様々なメーカーによって市場に投入されてきた。
ただ、それらの多くのエンジンは元来、一般的な自動車燃料を使用するように設計されたものでありながら、燃料を変更するだけでCO2発生量が著しく減少し、最大24%の削減が可能になっている。
しかし今日でも市場に、CNG車の数は圧倒的に少なく、この事がCNGエンジン開発の推進を妨げているのだとも云う。そうした中、同社は、新たな取り組みにより、CO2排出量をさらに低減させる可能性を見出した。
その第一歩として、今回まずダウンサイジングエンジン(1ステージ過給 3気筒直噴式ガソリンエンジン、排気量1.2L )を、天然ガスとガソリンのバイフューエル運転が可能となるように適合させ、このエンジンをテストベンチで試験して結果を適用。それを実験用車両に搭載して計測した。
第1段階の目標は、「バイフューエルエンジンの可能性と限界を探ること」、そして「改善の余地のある分野を知ること」、および「その改善のための要件を確認すること」だったと云う。
その結果に基づく第2段階では、モノフューエル運転に最適なエンジン並びに、それに必要なシステムやコンポーネントの設計を進める計画としている。
また同社はモノフューエル仕様に対して、エンジンのコンポーネントに要求される高度な耐圧性および熱伝導性を確保するため、次の技術適用を計画に入れている。
– ピストン:EVOTEC® RSCピストン。 鋳込み耐摩環と冷却チャンネルを備え、高い安定性と最適な冷却を結合。
– リングセット:3部分から成るオイルリングを含む、摩擦性能と摩耗を最適化したリングセット。
– コンロッド:増大した面圧をより有効に逃がすテーパー型コンロッドと圧入ブッシュ(軸受メタル)。
– バルブ:熱的安定性を向上させ、入口および出口をナトリウムで冷却する、 ボトムプレートを強化した中空バルブ。
– ピストンピン:DLC処理を施したピストンピン。
– ベアリング:ポリマーコーティング付きコンロッドベアリング(ブロンズ上にスパッタ) およびメインベアリング(アルミニウムバイメタル )。
これら構成要素をベースにエンジンを最適化することで、必要とされるピーク圧への耐性および温度限界の向上を実現でき、これにより、出力110kW/l及び公称トルク270 Nm(1,600 rpm以上)という数値がCNGモノフューエル運転で達成されている。
これを空車重量1,700kgのファミリーバンに例えると、CO2排出量は約106g/kmとなり、同性能の現行のガソリンエンジンモデルを31%近く下回る計算だ。
マーレグループについて
自動車やエンジン業界のリーディンググローバルOEMサプラヤーとして、同社は内燃機関及びエンジン周辺、EV用のパワートレイン、フィルター、熱管理、エアコンにおける重要な技術(部品・モジュール)を提供している。
現在、全世界で生産されている車両の2台に1台はマーレの部品が搭載されている。また、モータースポーツ業界でも、長年の実績を誇っています。
さらに、産業用エンジン、鉄道、船舶、航空宇宙等、自動車業界以外の多岐にわたる分野にも部品・モジュールを提供。2014年度、グループの売上高は99.4億ユーロ。従業員数は約66,000名に達している。
現在、世界30ヶ国以上170ヶ所の生産・営業ネットワークを有し、グループの基盤の強化を続けている。
また、ドイツ、英国、ルクセンブルグ、スロベニア、米国、ブラジル、日本、中国、インドで展開しているテクニカルセンター16ヶ所で5,000人以上のエンジニア・技術者が研究を重ねている。