2,000馬力のパワーユニットを搭載し、230.02マイルの絶対速度記録を達成
トヨタ自動車株式会社(本社 : 愛知県豊田市、代表取締役社長 : 豊田章男、以下トヨタ)の車種ラインナップ中、随一のヘビーデューティー車両である「ランドクルーザー」が、米国・カリフォルニア州トーランスに於いて、世界最速SUVの称号を獲得した。
元NASCARドライバーのカール・エドワーズ氏がステアリングを握ったブラックボディのランドクルーザーは、これまで「世界で最も速いSUV」として保持されていた世界記録を19マイル以上も上回り、その絶対速度は時速230.02マイル(時速370km)に達した。
さらにカール・エドワーズ氏によると、より長い直線距離があれば、このクルマは、さらにこの速度記録を大きく上回ることができるだろうとコメントした。
この世界最速SUVの速度記録に挑戦するという破天荒なプロジェクトは、トヨタ販売部門のマネージャーであるスティーブ・アッペルバム氏が発案したもの。車両は、市販のトヨタランドクルーザーをベースに、2016年のSEMAショーでデビューした「ランド・スピード・クルーザー」に白羽の矢が立てられた。
それまでの世界最速SUV記録211マイルを打ち破るべく、トヨタのモータースポーツ・テクニカルセンター(MTC)のエンジニアチームによってモデファイされた同車は、パワーユニットに5.7リットルの3UR-FE型V8エンジンを搭載。
これを基礎に最大55PSI(重量ポンド毎平方インチ・379,212パスカル)のブースト圧を可能にするバレーボールサイズのギャレット製ターボチャージャーを追加。
MTCチームは、この強い圧力に耐えるエンジン構造を綿密に研究して、堅牢なピストンやロッド、カスタムメイドのインテークマニホールド等を組み込んで、史上最強のパワーユニットに仕立て上げた。さらにこの高出力ユニットが生み出す2,000馬力ものパワーに耐えるべく、レーシングトランスミッションが組み込まれている。
しかし、実際にクルマ造りで難航したのは、こうしたパワーユニット造りに関わる取り組み部分ではなく、時速200マイルを大きく超える速度に対して、いかに安定した車体制御を実現するかに腐心したと云う。
具体的には、車体下側を通る乱気流を抑えるため、整流効果を高めたボディ構造とし、より高速走行に応えるためミシュラン製パイロットスーパースポーツを装着、これに見合うサスペンションなどで足まわりが固められた。
速度記録に挑戦した舞台は、カリフォルニア州モハベのモハーヴェ空港 & 宇宙港 (Mojave Air & Spaceport)。
ここは1935年に開港され、第二次世界大戦中の1942年に海兵隊の訓練基地となった後、1972年に民間運営に戻され、現在、様々な航空機の実験及び開発の拠点として運営されている。
また英国ヴァージン・グループ傘下のヴァージン・ギャラクティック社と航空機開発を行うスケールド・コンポジッツ社による宇宙旅行の宇宙船の開発拠点が置かれていることでもよく知られている場所だ。
ここは米国内で、超音速飛行が許される限られた場所のひとつであり、同飛行場の2.5マイルの滑走路が記録挑戦の環境として選ばれた。
ドライバーのカール・エドワーズ氏は、最初の走行で198マイルを記録。さらに2回目の走行で211マイルを刻む。そして遂にランドスピードクルーザーを駆って、230.02マイルの絶対速度記録を打ち立てた。
この速度記録への挑戦についてカール・エドワーズ氏は、「225マイルを超えたあたりから、若干ステアリングの落ち着き感が弱まったものの、我々は遂に230マイル超の速度記録を達成した。
このランド・スピード・クルーザーの速度記録が当面破られることはなく、この地球上で最も速いSUVが今日誕生した」と語った。