石井国交相、完成検査不正でSUBARUに勧告書


スバルに対する勧告には、「完成検査の現場に対する把握・管理体制に問題があること等が数次にわたり明らかになった」と記され、四半期毎に再発防止策の実施状況を報告するなど6項目が記された。(撮影=中島みなみ)
SUBARU(スバル)に対する勧告には、「完成検査の現場に対する把握・管理体制に問題があること等が数次にわたり明らかになった」と記され、四半期毎に再発防止策の実施状況を報告するなど6項目が記された。(撮影=中島みなみ)

「信頼を損なう事態を引き起こしたことは極めて遺憾」6つの是正求める

「国土交通省としては、不適切事案の再発防止状況を厳しく確認するため当分の間、御社を重点的な監視対象とする」
石井啓一国土交通相は14日、SUBARU(スバル)中村知美社長を大臣室に呼び出し勧告書を手渡した。同社の完成検査の不適切事案について、道路運送車両法に基づく是正措置を措置を求めた行政処分だ。

厳しい表情で勧告書を受けたった中村社長は、いつもと変わらぬ冷静さを表情に宿していたかに見えたが、大臣室を出て記者の質問に答えた時には、指が小刻みに震えていた。(取材執筆/撮影:中島みなみ/中島南事務所)

勧告書の内容は、完成検査不正に歯止めが効かなかった経営陣の姿勢を問うものだった。
「直近では貴社が平成30年以降は実施していないとしていた、駐車ブレーキの全数検査時にブレーキペダルを踏む不適切な行為等が最近まで行われていたことが判明するなど、貴社における、完成検査の現場に対する把握・管理体制に問題があること等が数次にわたり明らかとなった」

石井啓一国交相から完成検査の不適切事案再発防止の勧告書を、大臣室で受け取ったスバル中村朋美社長。「深く反省し、二度と起きないよう万全を尽くす」と頭を下げた。(撮影=中島みなみ)
石井啓一国交相から完成検査の不適切事案再発防止の勧告書を、大臣室で受け取ったSUBARU(スバル)中村朋美社長。「深く反省し、二度と起きないよう万全を尽くす」と頭を下げた。(撮影=中島みなみ)

同社は9月末、不適切な完成検査の原因究明と再発防止策を盛り込んだ報告書を、国交省自動車局長に提出した。勧告が例示する直近の不適切行為とは、報告書の提出後の10月16日、17日、22日に自動車局が立入検査を行い、その指摘で発覚したことだった。

その後、SUBARUはリコール対象とする期間を今年10月まで拡大して対応したが、国交省はこれを含む経営陣の後手に回った不手際を重く見た。

勧告書の申し渡しと共に、SUBARU報告書の精査結果が公表されているが、その中で同社の不適切行為はこう断じられた。
「長年にわたり続いた一連の完成検査の不適切事案に対する、経営層を含めた組織の責任は極めて重いと言わざるを得ず(中略)SUBARUにおける完成検査の現場の把握・管理は、深刻な状態にあると言わざるを得ない」

勧告書は、不適切事案の発見・検出能力の抜本的強化を含めた再点検、経営層のリーダーシップのもと、現場の第一線までコンプライアンス重視を浸透させることを含めて、再発防止策の徹底と実効性確保を図ることなど6項目をSUBARUに求める。

勧告書を受け取ったスバル中村社長は「完成検査部門に対する経営陣の関与、関心が薄かった。しっかりと受け止めたい」と語る、スバル中村知美社長。(撮影=中島みなみ)
勧告書を受け取ったSUBARU(スバル)中村社長は「完成検査部門に対する経営陣の関与、関心が薄かった。しっかりと受け止めたい」と語る、スバル中村知美社長。(撮影=中島みなみ)

中村社長は勧告を受けとった後、報道陣に心中を語った。
「完成検査部門に対する経営陣の関与、関心が薄かった。勧告にも『再発防止をさらに見直して徹底すること』という言葉があったので、しっかりと受け止めて努めたい」

また、完成検査不正だけでなく、エンジンや燃料計のリコール対応を迫られていることについては「販売店をどうやって支援できるか継続して考え、しっかりとしたお客様対応をとっていきたい」と述べたが、その前途はかなり険しいものになりそうだ。

(編集部)なお同日15日・16時51分発信の同社リリースでは、「完成検査の不適切事案の再発防止に関する国土交通省からの勧告等を受けて」と題して、下記内容の文面を掲示した。

本日、当社の完成検査に関わる一連の不適切行為に関し、国土交通大臣より再発防止策の見直し及び徹底など6項目に渡る勧告を受けたことを、極めて厳粛に受け止めています。

今後、当社は「品質第一」の意識を徹底し、法令遵守の推進と再発防止策の確実かつ迅速な実施によって、皆様からの信頼を可及的速やかに回復すべく、全力で努めて参ります。

中島みなみ
(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。