独・シェフラー、新たなドライブバイワイヤー技術を獲得


自動車産業と産業機械サプライヤーの独・シェフラーAG(本社:ドイツ・ヘルツォーゲンアウラッハ、CEO:クラウス・ローゼンフェルド)は、Paravan GmbH(創設者兼CEO:ローランド・アーノルド)と互いに提携し、新たな合弁会社「Schaeffler Paravan Technologie GmbH und Co. KG」を設立する基本契約を8月6日(独国内時間)に締結した。

目下、同締結内容はドイツ連邦・カルテル庁の承認待ちであるが、予め双方は、契約上の財務情報を開示しないことで合意に達している。

そんな新会社の事業本部は、ノルトライン・ヴェストファーレン州アイヒェラウと、バイエルン州ヘルツォーゲンアウラッハに置かれる予定だ。

Paravanの創設者であるローランド・アーノルド氏が、新たな同合弁会社のCEOに就任し、シェフラーのシャシーシステム事業部門の責任者であるディルク・ケッセルグルーバー氏。そしてシェフラーグループの従業員1名で経営チームが構成され、事業運営の指揮を執っていく。

この「Schaeffler Paravan Technologie GmbH und Co. KG」設立に至った目的は、ParavanのSPACE DRIVE(ドライブバイワイヤー技術)のさらなる開発と販売拡大のため。そして新たに立ち上がる合弁会社はParavanのドライブバイワイヤー技術を取得。新会社の90%の株式を所有することになる。

近年、自動車業界で広く注目を集めているドライブバイワイヤー技術は、Paravan GmbHによって開発されたもの。それは機械式の車両制御システムを100%信頼できる電動システムに置き換えて、身体障がい者の運転を支援することで社会に貢献していく役割を担っている。

この技術の具体的内容は、電制アクセルと電制ブレーキの組み合わせに加え、信頼性の高い車両操舵を完全電動を介して実現するステアバイワイヤー機能が搭載される。

そのため同技術を搭載した車両は、ハンドル、ステアリングコラム、及びこれらに関連する機械的リンク機構が一切不要となるのが大きな特徴だ。

またこのステアバイワイヤー技術は今後、自動運転車の実現を目指すためにも最重要な背景技術であり、安全で信頼性の高い操舵は、未来のクルマ造りに於いて基本要件となるものである。

例えば、仮にハンドルを搭載した半自動運転車を実現させる場合にあっても、バイワイヤ技術を背景にステアリングコラム自体が不要になるから、車体パッケージ上で大きくスペースが節約され、車両設計で新たなフロンティアが切り拓かれるだろう。

加えて、現在世界でただひとつの一体型ドライブバイワイヤーソリューションとなる同社のSPACE DRIVEドライブバイワイヤーは、操舵系統に繫がるラインが3重冗長になっていることが大きな特徴のひとつであり、厳しい機能安全基準として知られるISO 26262 ASIL Dによる認定を通過しているなど、高い安全基準に沿って製造されている。

その仕様は、5億km以上の無事故走行実績を背景に、複数国の公道での使用が既に許可されているシステムであり、同時に各国に於いて自動車の大量生産体制に応えられる実力を持っている。

このような新会社の設立に至った経緯についてシェフラーAGのCTO(最高技術責任者)ペーター・グッツマー氏は、「アーノルド氏が我々のパートナーとして役員会に名を連ねることを喜ばしく、また誇らしく思います。

同合意はシェフラーにとって重要な節目です。この信頼できる、定評あるSPACE DRIVEドライブバイワイヤー技術を取得したことにより、弊社のシャシーシステム事業部門をシャシーシステムインテグレーターに発展させることが可能となります。

このローリングシャシー事業は、シェフラーにとって自社のコアコンピテンシーを活用し、急成長する自動運転車市場での技術的な足掛かりを得る絶好の機会であり、自社のパワートレインとシャシー事業をさらに多様化するチャンスを得ることになります。

よって同契約は、シェフラーが未来のモビリティ社会に貢献するためにも大きな一歩となるものです。エレクトロニクスを背景とする高度なドライブバイワイヤー 技術は、シェフラーのメカトロニクス技術の組み合わせにより互いのコアコンピテンシーを補完する理想の関係となります」と語っている。

一方、先のシェフラーのシャシーシステム事業部門の責任者であるディルク・ケッセルグルーバー氏は、「我々のSchaeffler Moverコンセプトは、メカトロニックシャシーシステムに対して革新的なパートナーになり、この能力をさらに高めて中期的には、ローリングシャシーシステムの大手プロバイダーとして、戦略的な地位確立を目指すものです。

Schaeffler Moverコンセプトは基本的には、自動車メーカーが未来の製品を開発し、産業化するためのプラットフォームです。

私たちはSPACE DRIVEドライブバイワイヤーが、このプラットフォーム上の基盤技術になると見ており、合弁事業では積極的な開発と改善を強力に推し進めていき、未来の物流企業やサービス提供企の自動車プラットフォーマーになる路を目指して行きます」とコメントした。

最後に新会社のCEOに就任するローランド・アーノルド氏は、「シェフラーは、弊社独自のSPACE DRIVEドライブバイワイヤー技術の開発・拡大・産業化を進める上で完璧なパートナーです。

シェフラーには、特に機械式アクチュエーターシステムで技術的な専門知識があります。このような側面はあくまでも私見ですが、両社が文化的な事業要素を補い合える関係であることが大変重要なことだと考えいます。

またお互いに同族所有企業である両社の価値観もよく似ています。従ってこの合意は両社にとってWIN-WINの関係となります。今後はシェフラーだけでなくParavan GmbHのお客様にも、今パートナーシップの恩恵を提供することができると信じています」と結んでいる。