WRC第9戦ドイツ、北欧に続きトヨタ自動車が連続優勝


トヨタのタナックがドイチェランドで2連勝、今季3勝目を飾る
ラッピは総合3位で表彰台フィニッシュを達成

2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・ドイチェランドで、トヨタ・ヤリスのオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が今シーズン3勝目を飾った。

2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・ドイチェランドの競技最終日にあたる「デイ4」は8月19日、ドイツ西南部のボスタルジーで消化された。

この結果、トヨタ自動車傘下の「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」のオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組 (ヤリスWRC 8号車)が、前戦ラリー・フィンランドに続き優勝を果たし今シーズン3勝目を挙げた。

またエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組(9号車)は、総合3位に入り、今季2回目の表彰台フィニッシュを達成。なお総合3位につけていたヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ組(7号車)は、メカニカルトラブルによりリタイアとなっている。

WRC9戦の最終日となったデイ4は、モーゼル河近くのブドウ畑を中心とする「グラフシャフト」のステージを2回連続で走り、その後サービスパーク方面へと移動。

このステージでトップ5タイムを記録した選手に対して、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」を含む農道コースを走行する3本のSS計72.18kmでタイムを競われた。

そのなかでオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組は、その前に消化したデイ3で総合2位の選手に対し、43.7秒差というアドバンテージを構築。

常に安定した走りを見せて最初の2本のSSを走破。最後のパワーステージは全開で攻め、セカンドベストタイムを記録して優勝を決めると共に、ボーナスの4ポイントを獲得した。

その内容からタナックは、SS2を除く全てのSSで首位の座を保ち続け、ヤリスWRCとしても初めてターマックラリーをリード。チームは 2017年のWRC参戦以来初となるターマックラリー優勝を実現している。

一方、デイ2で総合5位に順位を上げたラッピは、上位の選手が脱落した事もあってふたつポジションを上げ、総合3位でフィニッシュした。

但し脱落した選手の中には、僅差の2位争いをしていたラトバラも含まれている。ラトバラはオープニングのSS16でクルマに技術的な問題が発生。自分たちの力で修復を試みたが問題解決には至らず、リタイアを余儀なくされた。

なおそれでもタナックとラッピによるダブルポディウムにより大量のポイントを得たチームは、マニュファクチャラーズランキングでトップのチームと13ポイント差の2位に浮上している。

この勢いでトヨタ陣営は、次回WRC第10戦・ラリー・トルコに挑む。開催は9月13日(木)から16日(日)に掛けての4日間。

トルコでのWRC開催は2010年以来で、さらに地中海に面したリゾート、マルマリスを舞台とするのはWRCにとっても今回が初となる。

ラリー・トルコの路面はグラベル(未舗装路)であり、フラットで高速なステージと、多くの石が転がる荒れた山岳ステージが入り混じった、複雑なコースであり、かつ9月中旬は日中気温がかなり上昇するため、クルマの熱対策が重要な課題のひとつとなると見られている。

トミ・マキネン(チーム代表)
我々のチームにまたしても素晴らしい時間が訪れました。オットは前戦のラリーフィンランドに続き今回もまた週末を通して傑出していました。唯一、今朝ヤリ-マティのクルマに問題が起こってしまった事には失望しました。

我々は彼が今日のステージできっと活躍するだろうと確信していたので、本当に残念に思います。運に恵まれなかったとも言えますが、できる限りヤリ-マティをサポートするつもりです。

ドイチェランドはミスをしやすいラリーなのですが、エサペッカは、ミスなくクリーンな素晴らしい走りをしました。今回は、チーム全員の献身的な働きにより、ターマックラリーで素晴らしい結果を残す事ができました。そして、今季の残るラリーにも最大限の努力で臨もうと、皆がモチベーションを高めています。

ヤリ-マティ・ラトバラ (ヤリスWRC 7号車)
最初のSSに向かうロードセクションで止まった時、ギヤを1速に入れようとしたのですが、入りませんでした。油圧ポンプが止まってしまったのです。

ギヤチェンジを手動に切り替える事はできたのですが、油圧ポンプが作動していないためギヤボックスに大きなストレスがかかり、結局駆動を完全に失いました。

今年は何度も運の悪い出来事に遭遇してきましたが、今週末は良いフィーリングを感じていただけに残念です。クルマのパフォーマンスは非常に高く、戦いを楽しめたことが今回1番の収穫です。

オット・タナック (ヤリスWRC 8号車)
間違いなく、今まででもっとも大変な思いをして手にした勝利です。週末を通して激しいバトルが続き、ひたすら全力で攻め続けなくてはなりませんでしたが、金曜日のブドウ畑のステージでは、快適に運転する事ができました。

土曜日の午前中はあまり自信を持てなかったのですが、チームが日中のサービスでクルマを大幅に改善してくれました。そして今日は、クリーンな走りだけを心がけました。我々のチームは今週末本当に強く、とても満足しています。

選手権争いについても正しい方向に進んでいると思いますが、それでも自分としては1戦、1戦を大事にしています。現在は次戦トルコに集中しており、できる限り万全な準備をしてラリーに臨みたいと思います。

エサペッカ・ラッピ (ヤリスWRC 9号車)
本当に大変な週末でしたが、それでも問題もミスもなく戦い続けた結果、ポディウムに立つ事ができました。自分のまわりでは、昨日から今日にかけて色々な出来事がありましたが、それがラリーというものであり、自分もそのような経験をしてきました。

週末を通して前進する事ができたと思いますが、それでもダーティな路面で限界がどこにあるのかを理解するためには、もう少し多くの距離を走る必要があります。ドイチェランドはミスに寛容なラリーではないので、今回はミスをしないよう、細心の注意を払って走りました。

豊田 章男(チーム総代表)コメント
週末、ドイツで行われた世界ラリー選手権でタナック選手、ヤルヴェオヤ選手組が優勝し、フィンランドに続く2連勝を果たしてくれました。

加えて、フィンランドでは悔しい想いをしたラッピ選手、フェルム選手組が3位表彰台に立ち、TOYOTA GAZOO Racing WRTとしては2戦連続での1-3フィニッシュとなりました。

ヤリスWRCのエンジンは、ドイツにあるTMG(Toyota Motorsport GmbH)でつくられています。その設計・開発に携わる関係者が見守る地ドイツでドライバー達がポディウムに立った姿は、私にとっても、とても嬉しく、感動的なシーンとなりました。

感動的な週末に導いてくれたチームのみんな、本当にありがとう。そして、いつも応援いただいているファンの皆様、今週も熱い声援を送ってくださり、ありがとうございました。

一方で、悔しい想いもありました。ラトバラ選手がマシントラブルにより、ドイツの道を完走できずに終わってしまいました。先日、ラトバラ選手は、私に「ヤリスは乗りやすいクルマです」と話してくれました。

今回も彼は「ヤリスの運転を心底楽しめている」と言ってくれていましたが、マシントラブルで彼のドライブを止めてしまいました。我々はドライバーが安心して全力で走れるクルマをつくる責任があります。しかし、まだ我々には、それが果たせていません。

この悔しさを、しっかり受けとめもっといいクルマをつくるチャンスに変え、努力していかなければならないと、改めて、強く感じています。ドライバーが安心して走りを楽しめるクルマを目指し、今後も戦ってまいります。

皆さま、引き続き、応援よろしくお願いいたします。

ラリー・ドイチェランド デイ4の結果
1_オット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (トヨタ ヤリスWRC)_3h03m36.9s
2_ティエリー・ヌービル/ニコラス・ジルソー (ヒュンダイ i20 クーペ WRC)_+39.2s
3_エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (トヨタ ヤリス WRC)_+1m00.9s
4_セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (フォード フィエスタ WRC)_+1m34.5s
5_テーム・スニネン/ミッコ・マルックラ (フォード フィエスタ WRC)_+2m02.9s
6_アンドレアス・ミケルセン/アンダース・ジーガー (ヒュンダイ i20 クーペ WRC)_+2m13.8s
7_クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン (シトロエン C3 WRC)_+2m39.1s
8_マリヤン・グリーベル/アレクサンダー・ラーツ (シトロエン DS3 WRC)_+10m41.2s
9_ヤン・コペツキ/パヴェル・ドレスラー (シュコダ ファビア R5)_+13m12.8s
10_カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (シュコダ ファビア R5)_+13m16.6s
R_ヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ (トヨタ ヤリス WRC)