米・ナイロン・マグネティクス、レアアース不使用モーター開発に目処

米・ナイロン・マグネティクス( Niron Magnetics )社は9月29日( 米ミネソタ州サーテル発 )、自社拠点のミネソタ州サーテルに、年間1,500トンの生産能力を誇る最新鋭の永久磁石製造施設を新たに建設するべく、米製造業の未来に期待を寄せる州当局者、業界のリーダーなどが招いて新工場の起工式を行った。

ちなみにナイロン・マグネティクス社は、予てより窒化鉄をベースとした磁石技術を独自で研究し磨いてきた企業であるが、今回、遂に希土類元素などの重要物質を利用しない高性能磁石原料の商用化に成功したという。

そんな同社では、米国エネルをギー省およびミネソタ大学と共同で約10年に亘る研究開発を経て、商業的に実現可能な新磁石材料を開発したことで今回、優れた永久磁石を製造できるようになったという。

また今回の新工場の起工式が希土類元素を必要としない窒化鉄系永久磁石の生産規模拡大の節目になると語り、それゆえ永久磁石の安定したサプライチェーンを求めるメーカーにとって、自社製品が魅力的な選択肢となるとした。

新工場は、旧ヴァーソ製紙工場の跡地(約19万平方フィート)建設され、2027年初頭に稼働を開始する予定。製造、エンジニアリング、オペレーションの分野で175人以上のフルタイム雇用を創出。データセンター向けの冷却ポンプ、自動車用モーター、ロボット用素材、民生用電子機器、防衛・ドローンなど、米国経済にとって重要な産業向けに希土類元素フリー永久磁石の供給能力を拡大ししていく構え。

近年、世界規模で地政学的緊張と世界的な永久磁石需要の高まりによって、希土類に係るサプライチェーンへの地政学的圧力が強まるなか、同社は希土類元素を一切含まずに鉄をベース(窒化鉄)とする豊富な元素から製造されているため、国内サプライチェーンの強靭性を図ることができると謳っている。

この新事業へ向けた取り組みに際してナイロン・マグネティクスのCEO、ジョナサン・ロウントリー氏は、「金曜日の起工式は、ナイロン・マグネティクス、サーテルコミュニティ、アメリカのイノベーション、そして国内製造業の未来にとっての勝利を象徴するものです。

この国産技術を中西部産業の中心地に展開できることを誇りに思うと共に、このコミュニティがアメリカのサプライチェーンの自立を支える中核となることを大変嬉しく思います。

この度新たに設けるサーテル工場は、2024年にミネアポリスに開設された当社のパイロット工場に於ける成功を基盤としています。ステランティス社、サムスン社、アリソン・トランスミッション社、マグナ社など多くの投資家や商業パートナーに於かれ、既にパイロット施設で生産した同製品のサンプルを採用・実証されておられ、現段階でもサーテル工場は、ミネソタ州並び米国内の数多の産業に大きな経済効果をもたらす可能性を秘めています」と自社新事業の可能性について説明した。

また更にステランティスで先進システムエンジニアリング担当副社長兼電動駆動システム責任者を務めるシニサ・ユルコビッチ氏は、「永久磁石は現代の自動車に不可欠な要素であり、パワートレインや冷却システムからシートモーターやスピーカーに至るまで、あらゆるものの性能の中核を担っています。

私たちはお客様に選択の自由を提供することに尽力しており、これらの磁石の統合はその使命にとって極めて重要です。

ステランティスは、ナイロン・マグネティクス社と提携し、新興の磁石技術のパイオニアとなることを誇りに思います。私たちは2023年から同社と協力し、窒化鉄ベースの次世代モーターとして、安定した性能が得られるよう目下、精力的に取り組んでおり、同素材技術は、クラストップの性能を備えた車両の設計と提供に役立つものと信じています」と述べている。

 
 




 
 

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