欧州理事会、税関に係る主要な枠組みについて合意

EU理事会は6月27日、EU関税枠組みの抜本改革に関する部分的な交渉権限について合意した。これによりEU全体の税関当局は、特に電子商取引における貿易量の急増、国境で検査が必要となるEU基準の急増、そして変化する地政学的現実や危機といった動向に対応するための、より現代的なツールボックスを備えることになった。

全体としてEUは、規制に準拠していない、危険または安全でない商品のEUへの流入を阻止し、関税をより効率的に徴収し、当局や貿易業者に過度の負担を掛けずに適切な管理を実施するための適切な手段を獲得していくことを目指す。

また同合意により、次のような改革の中核的側面について欧州議会との機関間交渉が開始されることになる。

(1)税関のための新たな分散型機関であるEU税関当局の設立。この機関は、各国税関当局のリスク管理業務を支援・調整し、EU税関データハブを管理する。

(2)EU全体に亘る単一のオンライン環境(EU税関データハブ)の構築。税関とのやり取り、データの完全性、追跡可能性、税関管理の強化のための単一の中央ITプラットフォームが用意される。
(3)最も信頼できる貿易業者向けに強化された税関簡素化を導入し、時間と費用を節約する。

(4)急速に変化する環境の現実に適応した、より現代的な電子商取引のアプローチの開発を行う。

同合意に際してアンジェイ・ドマンスキ、ポーランド財務大臣は、「増大する課題と世界的な潮流に直面し、EU税関は単一市場を守るための近代的な手段を緊急に必要としています。本日の合意は、EU当局が一体となって行動することを可能にする、将来を見据えた枠組みに向けた重要な一歩です」と述べた。

EU税関当局
新たな枠組みでは、EUの分権的な税関機関であるEU関税当局が設立され、EU関税同盟のガバナンスを様々な分野に於いて調整する。

特に、EU関税当局は、新たなEU関税データハブにおいて常に更新される輸出入データを活用し、各国の税関当局の業務を支援するEUレベルのリスク管理を可能にし、EU関税当局は、税関分野でのEUレベルの危機管理にも対処する。

EU税関データハブ
EU税関データハブは、データの収集と分析、およびリスク管理に対処するために設計された単一のオンライン環境となる。

企業は、貿易貨物の通関義務を履行するために、個々の税関当局ではなく、この単一のポータルに通関情報を一度だけ提出するだけで済む。また、複数の貨物に同じ情報を入力できるため、時間と費用を節約できる。

結果、各国の税関当局は、貿易の流れとサプライチェーンの全体像を把握できるようになる。併せてEU税関当局の支援により、加盟国は同じリアルタイムデータにアクセスし、情報を集約することで、より迅速かつ一貫性を持って効果的にリスクに対応できるようになる。

トレーダーを信頼し、チェックする
改正法により、最も透明性の高い事業者を新たに分類し、「トラスト・アンド・チェック・トレーダー(信用取引業者)」という名称が設けられた。

この制度では、事業活動に関する最大限の情報を提供し、その他の厳格な基準を満たす事業者は、簡素化された関税義務の恩恵を受け、場合によっては、税関による積極的な介入を一切受けることなく、EU域内で商品を流通させることが可能になる。

評議会の修正
理事会の部分的な交渉権限は、当初の欧州委員会の提案にいくつかの修正を加えるものとなる。

例えば、この修正案では、特定の税関手続きをより詳細に明確化し、EU税関当局や現場の職員による実施を容易にする。

信頼できる貿易業者に関しては、理事会のマンデートは、数千の中小企業が通関義務の簡素化のために既に利用している既存の認定経済事業者(AEO)制度を維持する。

この制度は、中小企業による新規則の遵守を支援するための、個別対応策を規定する。

最後に、この文書では、遠隔販売を通じて EU に入ってくる小口貨物に対して税関当局が徴収する取扱手数料という新しい概念を導入していく。

次のステップ
同日、理事会の部分的な交渉権限が採択されたことを受けて、議長国はこの問題に関して欧州議会との交渉を開始する。

EU関税当局の所在地、簡素化された関税制度、取扱手数料の具体的な設計など、全体的な改革の特定の側面に関する議論は、後の段階で行われる予定だ。

背景
1968年に設立されたEU関税同盟は、欧州経済統合の礎となっている。貿易を促進し、市民を保護し、イノベーションを促進し、EUが世界経済におけるリーダーシップを維持する上で重要な役割を果たしていく。

なお以上は、全てのEU加盟国はEU関税同盟に関わることを意味しており、これは以下のように説明できる。

(1)自国は、世界各国から自国に輸入される商品に対して、同一の税率または輸入関税を適用する。関税は商品の種類と原産国に基づいて算出される。

(2)EU域内における物品の取引には関税は課されない。物品が通関を通過すると、追加関税や国境検査を受けることなくEU域内を自由に流通できる。

関税同盟はEU単一市場を守り、域外国境を管理することで域内物品の自由な流通を可能にしている。

関税同盟がなければ、EU​​域内の物品の自由な移動は不可能だ。同時に、EU域外国境に於ける税関管理は、消費者を危険物や健康被害をもたらす可能性のある物品から保護する。

また、絶滅危惧種の違法取引に対処し、動植物の病気の蔓延を防ぐことで、動物と環境の保護にも貢献する。EUの税関は、組織犯罪やテロリズムと闘うために法執行機関や移民当局と緊密に連携していく。

EU関税同盟(背景情報)