不確実な市場環境下でもEV購入検討意向は安定、更なる普及促進には手頃な価格帯での商品提供と消費者の啓蒙が重要
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関のJ.D. Power(本社:米国ミシガン州トロイ)は、現地時間5月15日に2025 U.S. Electric Vehicle Consideration (EVC) Study(2025年米国EV検討意向調査)の結果を発表した。
将来の電気自動車(EV)市場への関心に暗雲が立ち込め、また、自動車業界全体に影響を与えかねない経済的な逆風が吹くにも関わらず、EVに対する消費者需要は安定していることが明らかになった。
調査によると、新車購入検討者の24%がEVを購入する可能性が「非常に高い」と回答し、35%が「ある程度検討している」と答えており、昨年と同水準であった。
2025年調査の主なポイントは下記の通り
EV購入希望者は複数ブランドを横断的に比較
EVの購入意向が「非常に高い」層は平均2.9のブランドを比較検討し、「ある程度検討している」層は平均2.8ブランドを比較している。
同様の傾向は、「2025年米国自動車セールス顧客満足度(SSI)調査」でも見られ、EV購入検討者は平均3ブランドを比較しているのに対し、ガソリン車購入検討者は平均2.5ブランドとなっている。
より多くのEVの選択肢が市場に出回るにつれて、この兆候は自動車メーカーにとって、自社ブランド以外の顧客を引き込むチャンスとなるだろう。
調査によると、EV購入検討者は、マスマーケットブランドとプレミアムブランドのモデルを同様に検討していることも示されており、これまで検討していなかったブランドやモデルで消費者の関心を引き付けるチャンスが存在することが浮き彫りになった。
価格と維持費への懸念は減少する一方、充電への懸念は依然として大きい
EVを拒む最大の理由は充電インフラの不足であり、新車購入検討者の52%がこれを理由にEVを検討しないとしている。充電に対する懸念が続いていることに加え、EVへの関心が全体的に停滞していることは、これらの問題に関する消費者への啓発活動が進んでいないことを示している。一方、購入価格への懸念は前年比-4ポイントの43%、維持費への懸念は前年比-2ポイントの33%となった。
若年層と高所得層のEVへの関心は高いが、両者はあまり重ならない
25〜49歳の回答者のうち、年収10万ドル以上の割合はわずか17%であった。若年層はEVに最も関心が高いものの経済的に購入が難しい傾向にある。
一方、年配の消費者は経済的な余裕があるものの、関心は低い傾向にある。マスマーケットブランドEVが成長を牽引しており、より手頃な価格の商品に対する潜在的需要が示唆される。
米国中西部はEVに対する関心が低い
地区ごとにEV購入検討率を見ると、EV購入意向が「非常に高い」層が少ない州は、ウィスコンシン州とケンタッキー州(各18%)、ミネソタ州(17%)、オハイオ州(16%)であった。寒冷地でのEV性能への懸念や、伝統的な自動車メーカーへのブランドロイヤルティが強いと考えられる。
J.D. パワー EV部門 エグゼクティブディレクター ブレント・グルーバーのコメント
「市場の変動にもかかわらず、EVは消費者の確かな選択肢となっています。今後、更なる消費者の関心向上、普及促進には、消費者のニーズに合った製品を手頃な価格で提供することが必要です。
また、消費者へのより良い啓蒙活動を通して、消費者のEV保有への懸念を軽減することも重要です。例えば、公共充電に関する懸念は、実際にEVを所有してみるとそれほど問題にならないことが多いのです」
J.D. パワー 2025年米国EV検討意向調査SM概要
12か月以内に新車購入(リースを含む)を検討している消費者を対象に、EV(電気自動車、バッテリー式電気自動車)の購入検討について聴取した調査。
実施期間:2025年1月~4月
調査方法:インターネット調査
調査回答者数:8,164人