FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第17戦メキシコGP(開催地:メキシコ・シティ10月30~11月1日)の決勝レースが11月1日、1周4.421km(海抜2,200m)のオートドロモ・エルマノス・ロドリゲを71周する形で行われた。
実にこの地では、23年振りのF1グランプリ開催となった同レースは、予選でポールポジションを獲得したメルセデスのニコ・ロズベルグが中盤のルイス・ハミルトンの追撃をかわしポール・トゥ・ウインで優勝し、今季4勝目を挙げた。
2位はルイス・ハミルトンで、今季大半のレースパターンとなったメルセデスによる1-2フィニッシュとなった。3位はバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)が食い込んだ。
ちなみに、フリープラクティス2まで好調を維持していたマクラーレン・ホンダは、メカニカルトラブルが相次ぎ、ジェンソン・バトンが14位。フェルナンド・アロンソは、オープニングラップを1周したのみでピットに戻り、そのままリタイアとなった。
決勝時の環境は、ドライコンディションで気温22度、路面温度56度、湿度40%。
スタート位置は、メルセデスのニコ・ロズベルグと僚友のルイス・ハミルトンがワンツゥー。もはや定席となったこのふたりの後方2列目にセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)とダニール・クビアト(レッドブル)が並ぶ。
ここのところ調子を上げてきていたキミ・ライコネン(フェラーリ)は予選15番手だったのだが、ギアボックス交換で5グリッド降格。
同じくギアボックスに加え、エンジンも交換した予選16番手のフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)は、10グリッドの降格で18番手となった。
同じチームのジェンソン・バトン(マクラーレン)は、2度のエンジン交換などで70グリッド降格。ライコネン(フェラーリ)も、コンポーネントの載せ替で35グリッド降格となり、19番手ライコネン、20番手がバトンという布陣となった。
スタートでは、ここ数戦のパターンとは逆に、第1コーナーまでロズベルグがハミルトンを抑え込んでコーナーに侵入。2列目はベッテル(フェラーリ)がクビアト(レッドブル)と接触し、後方集団に飲み込まれる。
1周を廻ってきたアロンソ(マクラーレン)は、MGU-Hトラブルでチームから呼び戻され、そのままリタイアとなった。
周回序盤のフォーメーションは、ロズベルグ(メルセデス)、ハミルトン(メルセデス)、クビアト(レッドブル)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、マックス・フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、ニコ・ヒュルケンベルグ(同)、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)となった。
レース9周目以降から15周目の段階で、中団グループの各車両は装着タイヤをミディアムコンパウンドに交換する作業が始まる。
その間、2番手を走るハミルトンはスタート時のタイヤを履いたままロズベルグの直近に付け様子を伺う。
その後、トップ集団を追いミディアムタイヤで我慢の走りを続けて来たライコネン(フェラーリ)は22周目に5番手に浮上するも、ニュータイヤに履き替えたボッタス(ウィリアムズ)とバトルになって接触。この際、ライコネンはサスペンションを破損しリタイヤとなった。
26周目までトップを走り続けたロズベルグ(メルセデス)は、ここでタイヤをミディアムコンパウンドに交換。
続く周回でハミルトン(メルセデス)もタイヤを交換し、首位ロズベルグ(メルセデス)、2番手ハミルトン(メルセデス)、3番手クビアト(レッドブル)、4番手ボッタス(ウイリアムズ)、5番手マッサ(ウイリアムズ)、6番手リカルド(レッドブル)、7番手ヒュルケンベルグ(フォースインディア)、8番手フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、9番手ペレス(フォースインディア)、10番手サインツ(トロ・ロッソ)というフォーメーション。
47周目には、ロスベルグ(メルセデス)が2回目のピットイン。52周目には、ベッテル(フェラーリ)が第7コーナーでコースアウトしてリタイヤとなる。
このためコースにセーフティカーが侵入して、フルコースコーションとなる。
これを切っ掛けに各車両のタイヤ交換が進んだ。57周目に、セーフティカーが退き、各車のバトルが再開。
周回数も残り少なくなった終盤、ハミルトン(メルセデス)は、ファステストラップを更新してロズベルグ(メルセデス)に追いすがるも、ロズベルグも意地を見せて逃げ切り、ほぼ71周の大半でトップポジションを維持したままチェッカーフラッグを潜った。
2位は辛くもトップに届かなかったハミルトン(メルセデス)。3位はボッタス(ウイリアムズ)となり、表彰台の一角をもぎ取った。
4位クビアト(レッドブル)、5位リカルド(レッドブル)、6位マッサ(ウイリアムズ)、7位ヒュルケンベルグ(フォースインディア)、8位ペレス(フォースインディア)、フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、10位グロージャン(ロータス)までが入賞圏内。
完走は、11位パストール・マルドナド(ロータス)、12位マーカス・エリクソン(ザウバー)、13位サインツ(トロ・ロッソ)、14位バトン(マクラーレン)、15位ロッシ(マノー・マルシャ)、16位スティーブンス(マノー・マルシャ)となった。
優勝:ニコ・ロズベルグ (メルセデス)
「良い予選結果を残した上、首位でレースをコントロールすることができました。
人生最高の表彰台で、自分がステージ上のロックスターになった気分。この勝利を特別なものにしてくれたメキシコのファンに感謝したいと思います。
マシンの状態はリアタイヤのグリップが不足していて、中盤、セーフティカーが入ったため、タイヤが冷えてしまって苦労もしたけれど、終盤は完璧でした。
今週末のパフォーマンスは、特殊なコースコンディションに合わせ、素晴らしいセットアップを実現したエンジニアとのチームワークの賜物。次のブラジルでも、この調子を維持してレースを迎えたいと思います」
2位:ルイス・ハミルトン (メルセデス)
「今日はハードにプッシュして、全力を尽くした良いレースだったし、心から愉しめたと思う。
ニコよりもレースのペースは良かったと思います。終盤のピットストップの指示の件はそれほど気にしていません。あの時は2回目のピットストップに納得できなかったけれど、そうした判断はチームが決定するし、彼らのことは心から信頼しています。
結果チームとして1-2が獲れたし、メキシコの観衆は熱意を持った沢山の人たちがいて、このスポーツに熱狂している。だから今週は最高の気分です。
次のブラジルは、まだ勝ったことがないラウンドだから、優勝を目指して頑張ります」
3位:バルテリ・ボッタス (ウィリアムズ)
「今日の結果には満足。戦略面でチームの判断は正しかったし、チームとして僕たちが成し遂げたことを本当に嬉しく思っています。
最近は不運が続いていて、それを挽回するため大変なハードワークをしてきたから、今回は結果に繫がって良い気分。表彰台に立つのはやはり素晴らしいです。
レース中のフェラーリとの接触に関しては、お互いに不運だったけど、あのようなカタチで終わることを望んでいなかったし、それがとても残念です」
フェルナンド・アロンソ
スタート 18番手
レース結果 DNF ※MGU-H回転センサーの不具合のためリタイア
「今日はMGU-Hの回転スピードの問題を抱えていました。これは昨夜、見つけた不安材料でしたが、残念ながら今朝それが不具合であることが確認されました。
部品交換をするほど十分な時間がなかったため、レースに出場するか欠場するかの2つの選択肢しかありませんでした。
我々は1つ目の選択肢を選び、メキシコのすばらしいファンの皆さんに敬意を表するために、できる限りのことをしました。グリッドについて、スタートを切り、その後に何が起こるのか私自身も見てみたかったのです。
結局、たった1周でレースを終えましたが、それでも楽しかったです。少なくとも我々はやってみたのです。何事もあきらめるよりは、やってみる方がいいのです。
遠征先での長い2週間が終わりましたが、私が獲得したポイントはゼロです。ただ、ここメキシコシティの観客の皆さんの姿を見て、とても報われる想いです。ここの皆さんは今シーズンの中で最も良い観客の一つですし、週末を通してすばらしかったです。
我々は今回のことは忘れて、今シーズンの残り2戦に備える必要があります」
ジェンソン・バトン
スタート 20番手
レース結果 14位
ファステストラップ 1分23.006秒 49周目(トップとの差 +2.485秒、15番手)
ピットストップ 2回:30周目(ピットストップ時間 3.46秒)および47周目(ピットストップ時間 3.29秒)[プライム→オプション→オプション]
「メキシコのファンの方々は自身に誇りに思うべきです。ファンの皆さんは週末を通してすばらしかったです。
それとは対照的に、私は自分のレースについてポジティブに語れることがほとんどありません。
ストレートでは我々よりも他のマシンの方が遥かに速かったです。ただ、プラス面は、最終セクターでは中位陣のマシンよりも我々の方が速かったことです。ストレートでは彼らに追い抜かれましたが、最終コーナーで追いつきました。
標高の高い、ここのサーキットでは、我々は他のチームよりもパワーを失う量が多かったと思います」
エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「悲しいことに、今日はレースが始まる前から、フェルナンドが完走できる可能性はほどんとないと分かっていました。
問題は、彼のマシンのMGU-Hの中にある回転センサーが、昨夜、不安定な状態になったことです。
そのため、午後のレースで多くの周回を重ねられる可能性はほとんどなかったのですが、それでもレースに出場したいというのがフェルナンドの強い要望でした。
これは、フェルナンドが真のレーサーであるがゆえの想いであり、観客の皆さんの前で良い走りを見せたいという気持ちが強かったためです。
当然のことながら、我々はフェルナンドの想いを全面的にサポートしましたが、残念ながら、彼のレースはたった1周で終わってしまいました。
それに対して、ジェンソンが完走したことはポジティブな点でした。ただ、それほどポジティブではない点は、レース結果が14位だったことです。
今週末に何度も言ってきたように、ここのサーキットは我々のマシンのパフォーマンスには適していないので、ここで入賞圏内を走る上位陣を苦しませることはできない状態でした。
それでも、今日は雲間から差し込む希望の光がありました。他チームのマシンがジェンソンを周回遅れにする中、サーキットの曲がりくねった部分では、ライバルチームの速いマシンの多くについて行くことができたとの報告がジェンソンからあり、データがそれを証明しています。
我々は進化しつつありますし、改善するために今後も全力を尽くします。Hondaもその決意を100%共有しています。
最後に、ここメキシコシティですばらしいイベントを開催して下さった主催者の方々に敬意を表します。
ここは、過去に褒め称えられた伝統的なコースを完ぺきに再現したサーキットであり、安全面および“見せる”ことを考慮した上でアップデートされています。
今日、同サーキットはその名にふさわしい、すばらしいグランプリを開催しました。オートドロモ・エルマノス・ロドリゲスは、F1のカレンダーに追加された、まさにすばらしいサーキットです。
今日、グランドスタンドをはじめ、観客席を埋め尽くした熱狂的な地元のファンの方々に対しては、こう申し上げます。
『今日のレースでは、我々は観客の皆さんにスリルを味合わせることも興奮を与えることができず、申し訳なく思っていますが、来年はライバルチームに混ざってレースを展開することを誓います』」
新井康久|株式会社本田技術研究所 専務執行役員 F1プロジェクト総責任者
「23年ぶりのメキシコGPはとても厳しい週末でした。本日、アロンソ選手のマシンをグリッドにつけてくれたチーム全員に感謝します。
アロンソ選手のマシンは、MGU-Hの回転センサーに不安がありましたが、ドライバーとチームで合意して判断した上で決勝レースに臨むことにしました。
いつものように、スタートダッシュを決めたアロンソ選手はポジションを上げましたが、 直後にセンサーのフェイルに入ってしまったため、マシンをリタイアさせました。
今週末はバトン選手のマシンにトラブルが出てしまいましたが、わずかな走行時間を最大限に活用してくれました。
その不足していた走行時間分を、アロンソ選手が堅実な走行でうめてくれたために、マシンのセットアップにつながり感謝しています。
2週間後のブラジルに向けて、センサー系のフェイルについて再度徹底的に分析を行い、万全に準備をして臨みたいと思います」