ルノー・日産・三菱自動車連合、フランスでバン車両の生産を拡大


フランス国内生産で新規投資を行い、アライアンスの生産能力を拡大してフランスの重要性を強調した

ルノー・日産自動車・三菱自動車アライアンスの会長兼CEOであるカルロス ゴーン氏は、フランスのモブージュとサンドゥヴィルにある生産工場にて新型バンの生産を行うと発表した。

このうちモブージュ工場ではルノーの小型バン生産拠点に、サンドゥヴィル工場ではルノーのバン「トラフィック」の生産拠点となる見込み。

ゴーン氏によると、中期計画「アライアンス2022」の終了時までに、同アライアンスは年間シナジーを倍増させ、100億ユーロの創出を目指していく。

またこれを達成するために、ルノー、日産、三菱自動車は、共通プラットフォームや生産拠点の共同活用を加速していくとしている。

同日はフランスのエマニュエル・マクロン大統領と、アライアンスの会長兼CEOであるカルロス ゴーン氏がモブージュ工場を訪れて従業員と懇談した後、同工場の先進トレーニングセンターを視察した。

この際にゴーン氏は「ルノーグループの有するグローバルなバンの専門知識は、アライアンスのシナジー創出を加速させ、あらゆるお客さまに利益をもたらします。

モブージュ工場とサンドゥヴィル工場は、その高い競争力にアライアンスの共通プラットフォームを活用することで、最も魅力的な価値を提供しています。

今年、ルノーグル―プは100%電気自動車と小型商用車という成長の二本柱を支えるべく、フランスに対して総額14億ユーロの投資を発表しました。」と話した。

モブージュ工場は今後、ルノー次世代カングーと日産の新NV250を生産するアライアンスの小型バン生産拠点へ

ちなみにルノー・モブージュ工場は、約50年に亘ってフランスの自動車生産を牽引してきた。現在2千2百名以上の従業員を雇用。

小型商用車と電気自動車の専門知識を持つ同工場は、現在、ルノー「カングー」、「カングーZ.E.」、メルセデス・ベンツ「シタン」を生産しており、生産車両の60%を33カ国に輸出している。

フランスのルノー工場の中で最も高い生産効率を誇る同工場は、製造業近代化政策「インダストリー4.0」においてベンチマークとされている。2017年には、欧州のEV販売を牽引した「カングーZ.E.」が貢献し、世界で13万台以上の「カングー」を販売した。

2017年にモブージュ工場では従業員の教育に2万7千時間以上を費やした。これは従業員1名あたり約20時間を当てたことになる。また若者の就業に力を入れている現地の学校と共同で、強力な職場訓練プログラムの開発を行っている。

同工場は、先の通り電動化モデルを含む次世代のルノー「カングー」シリーズの生産ハブとなる拠点でることから、ルノーグループは今後5年間で、この「カングー」の生産に4億5千万ユーロを投資していく。加えて2019年には、200名を新規雇用し、バンの生産拡大をサポートする。

対してサンドゥヴィル工場では、ルノー「トラフィック」のプラットフォームをベースにした三菱自動車の新型バン生産へ

併せて現行型「カングー」のプラットフォームをベースにした日産の新型小型バン「NV250」も、モブージュ工場で2019年半ばより生産を開始する予定。

この工場視察を前に、パリでダイムラーと共に行った共同記者会見で、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスとダイムラーは両社のパートナーシップを再確認している。これを前提にルノーは現在、モブージュ工場でメルセデス・ベンツのバン「シタン」の生産も行っている。

一方、三菱自動車は、ルノーの有するバンの専門知識を活用し、サンドゥヴィル工場で生産されているルノー「トラフィック」のプラットフォームを採用した車両をオーストラリアやニュージーランド向けに調達すると発表している。

記事中に取り上げたルノー・サンドゥヴィル工場は、フランスのセーヌ=マリティーム県の製造業を牽引する存在で、約2千名の従業員を雇用。

同工場はルノーの小型商用車「トラフィック」に加え、フィアットや日産向けの小型車両を生産しており、生産車両の70%を輸出している。また2017年には10万4千台以上の「トラフィック」が世界で販売されている。

最後にこれらの策は、今後のルノー・日産・三菱自動車連合のフランスに於ける立ち位置を強めるものとなりそうだ。これはルノーの株主でもある仏政府を牽制し、アライアンスの結束が緩む流れを押し止め、連合の優位性や経済メリットを訴求するカルロス ゴーン氏独特の経営戦略の一環なのであろう。