9月10日(日)、2017全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズ第5戦「AUTOPOLIS SUPER 2&4 RACE」の決勝レースが、震災の影響を乗り越え、実に2年振りに大分県日田市のオートポリスで開催された。
前大会もてぎから3週間。全7戦で戦われる2017年シーズンのスーパーフォーミュラは後半戦に入った。
今大会は、前大会もてぎに続き、通常スペックのタイヤに加えてソフトタイヤが導入され、2スペックのタイヤを決勝で両方使用することが義務づけられている。
タイヤに厳しいレイアウトとして知られるオートポリスだけに、この条件はレース戦略面で興味深い一戦となり、実際、終盤までめまぐるしく順位が入れ替わる戦略戦となった。
その結果は、ホンダエンジン搭載のピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)が、先のツインリンクもてぎで開催された第4戦に続き、連勝を果たす。これで通算・今季2勝目を挙げてシリーズポイントランキング2番手に浮上した。
2位は、後方10番手スタートから追い上げたフェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS)が3戦連続の表彰台。これに15番手スタートのチームメイト大嶋和也(SUNOCO TEAM LEMANS)が3位で続き、5年ぶりの表彰台に上っている。
まず前日・9日(土)の予選では、やや雲がかかり、風は気持ちよいものの気温30度、路面温度44度とまだまだ残暑を感じるコンディション。
今大会の予選は、Q1はミディアムタイヤでのアタックが義務づけられ、Q2、Q3でソフトタイヤを使用可能という規則で実施されている。
Q1のセッション開始は午後1時45分。参戦19台が一斉にコースへと向かうと、各車各々一旦アタックタイムを出してピットへ。そしてタイヤを履き替え、残り6分辺りから本格的なタイムアタックに入る。
当初の立ち上がりでは小林可夢偉(KCMG)がトップに立ち、国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)が唯一1分27秒台に入れる速さでそれを塗り替える。
この駆け引きを見せる2台の間に、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)が割って入る。しかしセッションも終盤を迎えた時期、さらに他の車両もタイムアップを図ろうとする残り45秒に、クラッシュ車両が発生しセッションは赤旗中断する。
この間、ホンダ陣営では、野尻智紀(ドコモ チーム ダンディライアン レーシング)が、赤旗中断直前に2番手のタイムを出す。
3分間の中断後、各車一発アタックに入る。ここで速さを見せたのはルーキーのヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。
セクター1、セクター2でベストタイムをマークし3番手へ。しかし国本のトップは変わらず、4番手以降に中嶋一貴、小林、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)らが続いてQ1はチェッカー。
トヨタ勢では大嶋が僅か0.017秒及ばず15番手、ニック・キャシディ(KONDO RACING)も大嶋に遅れること0.086秒という僅差の16番手でQ1敗退となってしまう。
ソフトタイヤが使用できるQ2は午後2時28分に開始された。7分間のセッションの最初は誰も出ず、小林が残り6分というところで最初にコースイン。他の車両が全車アウトラップの翌周にアタックに入ったのに対し、小林のみ3周目のアタックという作戦に出る。
そうしたなか国本が1分26秒台に入れてトップに立つ。一方で小林がコンマ5秒以上も速いレコードタイムでトップに浮上。
野尻智紀がこれに続く2番手。国本は3番手。ロッテラーが5番手、中嶋一貴が6番手、石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)が7番手で上位8台で争われるQ3への進出を決めた。
これに対してルーキーの山下健太(KONDO RACING)は0.08秒届かず9番手。ローゼンクヴィストが10番手、関口、マーデンボローもタイムが伸ばせず、それぞれ11番手、14番でQ2敗退となった。
Q3は午後2時45分から7分間で実施。ここでも小林が先陣を切りコースイン。小林のみが3周目のアタックとなった。
これを追う野尻智紀は会心のアタックで、前を走る選手達を逆転。コースレコードとなる1分26秒196を記録して自身2回目となるポールポジションを獲得した。なお、野尻選手のコースレコード更新は第4戦に続く2戦連続での快挙となっている。
これに追い縋る国本も速さを見せ、Q2の小林のタイムには及ばないもののこれまでのコースレコードを塗り替えるタイムで2番手につけて最前列グリッドを確保した。
小林はQ2のタイムを上回ることが出来ず、国本に次ぐ3番手。ロッテラーが4番手、ピエール・ガスリーが5番手、中嶋一貴が6番手、山本尚貴選手(チーム無限)が7番手、石浦が8番手から翌日の決勝レースに臨むこととなった。
明けて10日(日)の決勝は、午前中はやや雲が掛かる気候だったが、スタート直前に太陽が顔を出し、やや暖かさを感じる気温25度・路面温度33度のコンディション下で、午後1時5分に54周で争われる決勝レースのスタートが切られた。
スターティングフラッグが振られると、ポールポジションの野尻智紀が好加速でトップを堅守。
これに2、3、4番手グリッドに並んだ国本、小林、ロッテラーが続くかに見えた。しかしロッテラーはここで痛恨のスタートミスを犯す。
大きく順位を落としたロッテラーは、1コーナー進入時に他の車両と接触。サスペンションにダメージを負い、1周でレースを終えることとなってしまった。
これに乗じて5番手グリッドからピエール・ガスリーが、野尻に続く2番手につけて第1コーナーに飛び込む。当初、野尻とガスリーが後続を引き離し、ホンダ勢ノ1-2体制でレースをリード。
その後方では、ミディアムタイヤの中嶋一貴、石浦に対し、ソフトタイヤを装着した関口とマーデンボローらが序盤から猛追し、ポジションを上げて行った。
後続組みの多くがソフトタイヤでのスタートで、ポジションアップを狙う中、10番手グリッドながらミディアムタイヤでのスタートを選択したローゼンクヴィストは、4周終了という非常に早い時点でピットへ向かい、給油とソフトタイヤへ交換。
翌周には、15番手と後方スタートを切ったチームメイトの大嶋も同様の作戦を採った。
ソフトタイヤで3位まで順位を上げた関口は10周終了でピットへ向かうと、ソフトタイヤへと交換。ソフト、ミディアム両方の装着義務があるため、2回のピットストップ作戦を採ることとなった。
同じくソフトタイヤを選択していたガスリーは23周を走りきったところで先にピットイン、ミディアムタイヤへの交換と給油を行う。
一方で、ミディアムタイヤでのスタートでソフトタイヤ勢にかわされながらも我慢のレースを戦っていた国本、中嶋一貴らは、レースの折り返しを越えてもピットインしないまま周回。34周目終了で、ようやく中嶋一貴、39周目終了で国本がピットイン。
全車がピットを終えた時点で、序盤のピット作戦のあとハイペースで追い上げていたローゼンクヴィストが2位、大嶋が3位、やはり早めのピット作戦を採っていた石浦と小林が4、5位、国本と中嶋一貴はその後でコースへ復帰する。
一方、野尻は首位を守ったままレースの約7割を消化。38周を走り終えてピットインし、ソフトタイヤへの交換と給油を行う。
ところが、レースに復帰した次の周のホームストレートで、競り合っていたライバルの前に1台のマシンがピットアウトしてきた影響で急激に車間が失われ、そのライバルに接触。これにより野尻はノーズを壊してしまった上にコースアウト。大きく順位を下げてしまう。
トップ集団のやや後方から追い上げる小林は、摩耗したソフトタイヤで苦しみながらも絶妙なラインで順位を守ろうとしたが、新しいタイヤの優位性を活かして激しく攻める国本と中嶋一貴を抑えきれず7位へ後退する。
対して国本と中嶋一貴は石浦に迫り、3台での4位争いが繰り広げられた。
しかし、小林とのバトルでタイヤを摩耗させた国本と中嶋一貴は、石浦を攻略するまでには至らず。結果、全車ピットインの義務を消化した時点でガスリーが集団から一歩抜けだしトップに立つ。
その後、ガスリーは後続のライバルとの2~3秒のギャップを保ちながら周回を続け、そのまま54周を走りき切ってトップでチェッカーフラッグを受ける。
2位、3位を走行していたローゼンクヴィストと大嶋は、最後まで燃料が持つか、ソフトタイヤでペースを保つことが出来るか注目の終盤戦となったが、最後の逆転にまでには至らず、ローゼンクヴィストが2位、大嶋が3位でチェッカー。
これによりローゼンクヴィストは、ルーキーイヤーながら3戦連続の表彰台獲得。この結果ランキング3位に浮上した。
今季、フル参戦としては5年ぶりのトップフォーミュラ復帰を果たした大嶋は、5年ぶり、2012年の第4戦富士以来となる表彰台に上ることとなった。
続く石浦が4位で逃げ切ってランキング首位の座を堅守。国本が5位、中嶋一貴が6位、小林が7位、マーデンボローが8位でチェッカーを受け、ポイント獲得を果たした。
TEAM MUGEN 15号車 ピエール・ガスリー選手
グレートなレースだった。2連勝できて最高の気分だ。スーパーフォーミュラに参戦したばかりの自分が、もう2回も勝てたのはチームのおかげだと感謝している。
自分も含めて、チームがどんどん成長していることを実感しているし、それにつれて、自身もさらにモチベーションが高まっている気がする。
今日の決勝レースに向けては、当初ミディアムタイヤを装着していたが、スタート直前にソフトタイヤに切り替えた。
それはレースが始まるとトラフィックが予想されたので、周囲と同じことをやっていては前に行けないだろうと考えたから。
今日のレースはスタートがすべてだったと思う。スタートで2番手まで上がり、その後コンスタントなペースで走れたのが勝因だ。
SUNOCO TEAM LEMANS 7号車 ドライバー フェリックス・ローゼンクヴィスト
格別なレースだった。まず優勝したピエール(ガスリー)と、表彰台に上った(大嶋)和也さんを祝福したい。
チーム2台揃っての表彰台獲得ということで嬉しいし、チームの頑張りに応えられた結果だと思う。
ドライバーとしては、特にレースウィーク序盤は厳しい状況だった。決勝レースは非常に早いうちにピットインする作戦を採り、ソフトタイヤで長く走ることになったので、その後はひたすらタイヤと燃料をマネージメントするレースとなった。
極力タイムを落とすことなく、タイヤを滑らさずにセーブすることを心掛けた。ソフトタイヤを装着したクルマは非常に好調で、最終的にポジションを上げることが出来た。
終盤、ピエールにも追いついたが、タイヤの心配もあり、最後まで着実に走り切ることを優先した。3戦連続の表彰台に上れたことは喜んでいる。チャンピオンシップのことを考えても重要なポイントだし、良い結果だ。
SUNOCO TEAM LEMANS 8号車 ドライバー 大嶋和也
今年からフォーミュラに復帰して、色々な問題を抱えていたり、自分自身も思い通りに走れなくて、非常に苦しいシーズンを過ごしてきた。
今回の予選も、ソフトでのバランスがとても良かったので、何とかQ1さえ通過できればと思っていたのだが、100分の1秒足りなくて通過できないという、非常に悔しい結果となってしまった。
金曜日からソフトタイヤを僕が使って決勝に向けて準備をしており、データ的には決勝でもソフトタイヤが長く使えるだろうということは分かっていた。
ちょっと勇気は必要だったが、15位でゴールしても仕方ないのでので勝負させてくれとチームに相談した。
結果的にこの作戦を採って良かったと思う。中々結果が出ない中、外国から新しくエンジニアを呼んでくれたり、色々やってくれたチームのためにも、やっと結果が出せて良かった。
レース結果
位_No._ドライバー__マシン_____周回数_タイム/差
1_15_Pガスリー_TEAM MUGEN____54_1:24’28.619
2_7_ローゼンクヴィスト_TEAM LEMANS_54_1.558
3_8_大嶋和也_SUNOCO TEAM LEMANS_54_7.638
4_2_石浦宏明_P.MU/CERUMO・INGING_54_8.555
5_1_国本雄資_P.MU/CERUMO・INGING_54_9.009
6_37_中嶋一貴_VANTELIN KOWA TOM’S_54_9.457
7_18_小林可夢偉_KCMG_________54_14.463
8_20_ヤン・マーデンボロー_TEAM IMPUL_54_14.98
9_10_塚越広大_REAL SF14_______54_31.150
10_19_関口雄飛_ITOCHU ENEX TEAM IMPUL_54_44.699