パナソニック、ディープラーニングの応用で世界最高水準の顔照合技術を開発


パナソニック株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役社長:津賀一宏、以下、「パナソニック」)は、シンガポール国立大学と共同で研究開発を行い、5月10日、世界最高水準の顔照合技術を開発した。

同技術は、ディープラーニングと呼ばれる機械学習手法と、誤りを抑制する類似度計算手法を組み合わせた独自のアルゴリズムであり、人間の目でも顔の判別が困難な左右90度近い横向き、照明の明暗が強い屋外環境、サングラス・マスクなど一部顔が隠れているような状態でも顔照合を行うことができる。

またこの技術は、アメリカ国立標準技術研究所(以下、NIST)が公開している、映像セキュリティ市場で撮影され得るあらゆる条件を網羅したベンチマークデータセット(※3)において、世界最高水準(※1)の顔照合性能(※2)を実現した。

【開発の背景】
従来の顔照合技術には、(1)左右45度以上の顔向きが付いた場合、(2)屋外で照明の明暗が強い場合、(3)サングラス・マスクなど一部顔が隠れている場合に、顔照合に失敗するという課題があった。

この課題の解決へ向け、当社のコネクティッドソリューションズ社イノベーションセンターとパナソニックR&Dセンターシンガポールは、2015年度からシンガポール国立大学と共同で顔照合技術の性能改善に取り組んできた。

具体的には、まずディープラーニングと呼ばれる機械学習手法のネットワーク構造を改良し、真横向きや一部顔が隠れていても個人を判別できる有効な特徴を抽出。

さらに、撮影環境に合わせて顔照合の類似度計算を最適化する技術を組み合わせることで、従来の当社のディープラーニング技術と比較して、顔照合性能を最大5倍(※4)改善させることに成功した。

【今後の予定】
同技術を活用したシステムでは、監視カメラに写った要注意人物(指名手配犯や万引き常習犯)を自動で検知してアラームを鳴らし、警備員の監視業務負荷を軽減すること等が可能になる。

同社では、この技術を商用化、映像セキュリティ・本人確認ソリューションへ展開し、公共施設の監視、入場管理・出入国管理などさまざまなシーンにおいて活用していく。

さらに、2016年3月に歩行者検出のベンチマークであるCaltech Pedestrian Detection Benchmark(※5)で世界最高水準(※6)の評価を獲得した人物検出技術など、当社が有するさまざまな画像認識技術を融合した新たなソリューション創出も加速し、より安心・安全な社会の実現に貢献していく構えだ。

(※1) 2017年5月9日現在、NIST公式の評価レポート:https://www.nist.gov/programs-projects/face-challenges  (The IJB-A Face Verification Challenge Performance Report、The IJB-A Face Identification Challenge Performance Report)における評価点において。なお、本技術について論文として公開している。 https://arxiv.org/abs/1704.00438 

(※2) カメラに写った顔が登録された顔と同一人物であるか否かを判定する技術。

(※3) NIST IJB-A face image dataset< https://www.nist.gov/programs-projects/face-challenges  >

(※4) IJB-A face image datasetにおいて、他人受け入れ率0.01としたときの本人排除率を5分の1へ削減。

(※5) Caltech Pedestrian Detection Benchmark < http://www.vision.caltech.edu/Image_Datasets/CaltechPedestrians/  >

(※6) 2016年3月4日時点、本技術の公開論文:https://arxiv.org/abs/1510.08160 における評価点において。パナソニック社調査による。