FIA世界耐久選手権(WEC)、第1戦、シルバーストーン(イギリス)での暫定首位
ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.オリバー・ブルーメ)の919ハイブリッドはワークスドライバー、ニール・ジャニ(スイス)/ロマン・デュマ(フランス)/マルク・リーブ(ドイツ)とともに、シルバーストーンにて4月17日に行われたFIA世界耐久選手権(WEC)の開幕戦決勝において2位でフィニッシュした。
本来スリリングな6時間のレースを制したのはアウディだった。ル・マン・プロトタイプ(LMP1)に参戦したすべてのマニュファクチュアラー(アウディ、ポルシェおよびトヨタ)が決勝ではそれぞれトラブルに見舞われた。
最大の悲劇に襲われたのはポルシェで、スタート後2時間ほどで現世界王者であるティモ・ベルンハルト(ドイツ)/ブレンドン・ハートレー(ニュージーランド)/マーク・ウェバー(オーストラリア)組がドライブするカーナンバー1がクラッシュ。
ハートレーが周回遅れのGTカーをオーバーテークする際に激しく接触したが、両車のドライバーは無事。ニール・ジャニはレースファステストラップ(1’40″303)を叩き出し、この革新的なハイブリッドレースカーの高い性能を証明した。
カーナンバー1のレース展開:
スタートドライバーを務めたマーク・ウェバーは、予選で得た3位のポジションから徐々に先行する2台のアウディに追い付く。
7周目でウェバーはカーナンバー8のアウディをオーバーテークし、2位に浮上。さらに16周目にカーナンバー7のアウディをかわし、リードを奪う。
27周を終えて、ダブルスティントが予定されているブレンドン・ハートレーにクルマを託す。ハートレーは55周終了時点でカーナンバー7のアウディに44秒と余裕のリードを保って、給油とタイヤ交換のためにピットに入った。しかし71周目、GTカーを追い越す際に激しい事故が発生し、世界王者達のレースはここで終了となった。
カーナンバー2のレース展開:
スタートドライバーのロマン・デュマはカーナンバー8のアウディを追いつめるも抜くには至らず4位に留まった。
26周を終えて、ニール・ジャニとドライバー交代し、ジャニは55周で給油とタイヤ交換のためにピットに戻る。アウディのトラブルによって、58周目にジャニは2位に上がり、ポルシェの1-2態勢となる。
71周終了後、ジャニは2度目のピットストップで、マルク・リーブに交代した。メカニック達は給油とタイヤ交換に加えて、トラフィックで損傷したフロントノーズを交換。カーナンバー1の事故の後、カーナンバー2がレースをリードした。
アウディのカーナンバー8がトラブルによりコース上でストップしたため、フルコース・イエローが出た。
このイエローフラッグは76周目に解除され、再スタートでリーブはバトルに巻き込まれ、その隙にカーナンバー7のアウディがトップに躍り出る。
102周を終えて、リーブは再びデュマにクルマを託す。トヨタの損傷したタイヤの破片を処理する間、セーフティカーが導入され、106周終了時点でグリーンフラッグが出された後、デュマは2位を維持。
132周が終了し、再度ジャニがドライブし2位をキープする。161周終了時点、暫定1位で919が給油とタイヤ交換のためにピットに戻り、ピットストップタイム短縮のために左側のタイヤのみを交換。
ジャニがカーナンバー7のアウディの本格的な追撃を開始してから1周後、右側フロントタイヤがパンクしたため、彼は再度ピットイン。結果、全194周の187周終了後、彼は最後のピットストップで少量の燃料を給油し、2位でレースを終えた。
レース後のコメント:
ポルシェAGの取締役会長・Dr オリバー・ブルーメ:「レースは最後までスリルの連続で、まさに期待と失意が背中合わせでした。それがレースというものです。
シーズン開幕戦は、世界耐久選手権のレベルが極度に高いことを明確に証明しました。
大きく異なる車両コンセプトの厳しい戦いは、魅力的であり画期的です。レース結果だけでなく予選によっても、次回トップを奪還するという私たちのモチベーションがさらに高まりました」。
LMP1担当副社長・フリッツ・エンツィンガー:「私達にとって、アクションに満ちたウイークエンドも、もう過去のものです。
予選は理想通りではなく、決勝ではさまざまなトラブルに悩まされました。ブレンドン・ハートレーの事故もですが、彼に怪我がなかったのが何よりでした。
終盤、カーナンバー2がパンクしました。いずれにしても、アウディに祝辞を贈ります。私達が2位で、トヨタが3位。チャンピオンシップを考えれば、悪くないシーズンのスタートです。
観客の皆さんには、非常にエキサイティングなレースを楽しみにしていただきたいと思います。スパでは、また攻めていきます」。
チーム監督・アンドレア・ザイドルのコメント:「アウディに祝辞を贈ります。今日は私達が勝てたレースでしたが、数々の出来事で実現しませんでした。
カーナンバー1は大きなリードを保っていましたが、GTカーとの事故でレース敗退を喫しました。カーナンバー2もGTカーとの衝突があった上、パンクのため1回余分にピットストップを余儀なくされました。
ですが、私達のクルマは最速で、ピットクルーも最速を誇っています。ヴァイザッハの開発チームと現地のクルーに感謝しています。私達は自分たちの強さに自信を持っています」。
ポルシェ919ハイブリッド(カーナンバー1)のドライバーのコメント
ブレンドン・ハートレー(26歳、ニュージーランド):「私は、チームに大変申し訳なく感じています。クルマは信じられないほど好調で、マークの最初のスティントは極めて素晴らしいものでした。
私が引き継いだとき、全く問題ありませんでした。十分なリードがありましたし、全くプレッシャーも感じていませんでした。トラフィックにも上手く対処しました。そして、GTカーを外側から抜きにかかりました。
これは、第2コーナーではごく当たり前のことですが、ドライバーは私を見逃してコースを一杯に使いました。すべてが一瞬の出来事で、私達は接触しました。あれは避けることができる事故であり、GulfレーシングGTチームに対しても、私達のカーナンバー1のクルーに対しても申し訳なく思っています。
私達は態勢を立て直し、ウイークエンドのプラスの面を活かしていくつもりです」。
マーク・ウェバー(39歳、オーストラリア): 「私は最初の27周を走行し、それは充実し、興味深いスティントでした。
最初、アウディは本当に強かったのですが、追い付き、追い越し、差をつけることができました。私達のクルマは非常によく仕上がっていました。今日は好成績を逃したかたちになりました」。
ポルシェ919ハイブリッド(カーナンバー2)のドライバーのコメント
ロマン・デュマ(38歳、フランス):「スタート後、私の最初のスティントでGTカーと接触し、フロントのエアロにダメージがありました。
その後は、ノーズを交換するまではアンダーステアがひどい状態でした。2回目のスティントも難しかったです。アウディのブノワ・トレルイエと厳しいバトルになりました。
私の方がわずかに速かったのですが、オーバーテークは困難でした。残念なことに、フォードと軽く接触し、わずかにコースアウトしてしまい、約13秒ロスしました。その後、私達のマシーンは非常に速いペースに戻りました」。
ニール・ジャニ(32歳、スイス):「私は2番目のドライバーで、ダブルスティントでドライビングを担当しました。最初のスティントは最悪でした。
あちこちでトラフィックに捕まり、1周毎に最大6秒をロスしました。ピットストップ後はトラフィックで悩まされることは大幅に減り、フロントウイングにダメージを受けたにもかかわらず、トップのクルマと同じ最高速を出すことができました。
レースの残り1/3で再度ドライビングしましたが、またトラフィックの問題に直面しました。これは多分、今年はストレートでそれほど私達にアドバンテージがないからでしょう。そして、最後のパンクで優勝の可能性はなくなりました」。
マルク・リーブ(35歳、ドイツ):「アウディとの一騎打ちは時間のロスであり、タイヤの負担が大きかったのですが、レース中盤の私のスティントの出来には大いに満足しています。
ラップタイムに大きなばらつきがありました。周回遅れを抜くときに、何秒かロスしたこともあれば、全くタイムに影響しなかったこともあります。
天候のため、決勝の準備は容易ではありませんでした。それでも、決勝ではしっかりした仕事ができました」。
※なおレース後の再車検の結果、919ハイブリッドは繰り上がりで優勝したが、現在も裁定中につき正式な結果は保留中となっている。
レース結果 シルバーストーン6時間レース(イギリス)
- 1. ファスラー/ロッテラー/トレルイエ(スイス/ドイツ/フランス)組、アウディR18、194周
- 2. デュマ/ジャニ/リーブ(フランス/スイス/ドイツ)組、ポルシェ919ハイブリッド、-46.065秒
- 3. コンウェイ/小林/サラザン(イギリス/日本/フランス)組、トヨタTS050ハイブリッド、-1周
- 4. インペラトーリ/クライハマー/テュシャー(イタリア/オーストリア/スイス)組、レベリオンR-One AER、-11周
- 5. ハイドフェルド/ピケJr./プロスト(ドイツ/ブラジル/フランス)組、レベリオンR-One AER、-13周
- 6. アルバカーキ/ゴンザレス/セナ(ポルトガル/メキシコ/ブラジル)組、リジェJS P1-ニッサン、-15周
世界耐久選手権ドライバー順位(全9戦中1戦終了時点):
- 1. ファスラー/ロッテラー/トレルイエ(スイス/ドイツ/フランス)、アウディ、26ポイント
- 2. デュマ/ジャニ/リーブ(フランス/スイス/ドイツ)、ポルシェ、18ポイント
- 3. コンウェイ/小林/サラザン(イギリス/日本/フランス)、トヨタ、15ポイント
- 4. インペラトーリ/クライハマー/テュシャー(スイス/イタリア/オーストリア/)、レベリオン、12ポイント
- 5. ハイドフェルド/ピケJr./プロスト(ドイツ/ブラジル/フランス)、レベリオン、10ポイント
- 6. アルバカーキ/ゴンザレス/セナ(ポルトガル/メキシコ/ブラジル)、RGRスポーツ・バイ・モランド、8ポイント
世界耐久選手権コンストラクター順位:
- 1. トヨタ、27ポイント
- 2. アウディ、26ポイント
- 2. ポルシェ、18ポイント
またGTE-ProおよびGTE-Amカテゴリーに911RSRで参戦したポルシェのカスタマーチームにとっては、一様に厳しい開幕戦となった。
スポーツカーのアイコンである911の第7世代をベースにした470PSを誇る911RSRは両カテゴリーにおいて多くの時間、レースをリードしたが、ゴールまで30分のレース終盤、2台の911RSRがトラブルに見舞われ、ポディウムに上がることは叶わなかった。
WECのGTドライバーチャンピオン、リヒャルト・リーツ(オーストリア)はデンプシープロトンレーシングのスタートドライバーを務めた。
リーツは2位でチームメイトのよびミカエル・クリステンセン(デンマーク)にステアリングを託しましたが、ピット作業で大幅に時間をロスしライバルたちと戦う権利を失った。
GTE-Amクラスでは、レースが終わる直前まで2台の911RSRが表彰台に上がる絶好の位置につけていた。
アブダビ プロトンレーシングは2位、KCMGは3位を走行していたが、チェッカーまでそのポジションをキープすることは叶わず、KCMGとアブダビ プロトンレーシングはそれぞれ4位と5位でレースを終えた。KCMGと同じく911RSRでは初めてのWEC参戦だったガルフレーシングは6位となった。
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