フェラーリ(Ferrari S.p.A、本社:伊・モデナ県マラネッロ、CEO:セルジオ・マルキオンネ)は10月29日、フィナーリ・モンディアーリでサーキット走行限定の実験車輌 XXシリーズの最新モデル、新型FXX-K Evoを世界初公開した。
次世代プロダクションモデルの研究・開発プログラムとして進められてきたXX車輌は、妥協のないパフォーマンスの代名詞となっており、かつてのFXX及び599XXのEvo仕様と同様に、Ferrari FXX-K Evoにも、フェラーリが温めてきた独自のコンセプトが注がれている。
ちなみに、これまでのXX車輌の例に漏れず、サーキット専用技術が導入されているFXX-K Evoは、ロード・ユースモデルとして登録はできず、専用プログラム以外のレースホモロゲ―ションの取得もできない。
これまでのXXシリーズ車輌の任務を引き継ぐこの新モデルは、ごく限られたスーパーカー・エンスージアストに向けて開発された限定モデルとなる。
しかし1年にわたり、綿密なCFD(流体解析)シミュレーションとウィンドトンネル実験を重ねた結果、FXX-K Evoのエアロダイナミクス性能は、GT3およびGTEレース車輌に極めて近いダウンフォース値を獲得。これによってエキサイティングなドライビングプレジャーをもたらす。
FXX-K Evoのダウンフォース係数は従来比で23% 向上した。これは、ベースとなるロードゴーイングカー比で75% 増に匹敵する。速度200Km/hで発生するダウンフォースは640kg、最高速度域では830kgを超える。
これだけのダウンフォースレベルを獲得できたのはリアに装備したツインプロファイル(2枚翼)の固定ウイングにある。このツインプロファイル・リアウイングは、ボディ両端のサイドフィンとセンターフィンで支持されている。
このセンターフィンは、2つの役割を担う。ひとつは、ヨー角が小さい時のスタビリティを確保するバーチカルフィン。もうひとつは、3枚のデルタ・ボーテックスジェネレーターのステーとしての役割である。
このボーテックスジェネレーターは、ラジエターからボンネットに抜ける排熱気流よって発生する乱流を整え、ウイングへ理想的な気流を流す。
同時にここでダウンウォッシュ(吹き降ろし)を生成して、ツインプロファイル・ウイングで発生するダウンフォース量を増加させる。このようなリアのシステム・デバイスによって、ダウンフォース量は10% 増加した。
リアバンパーのデザインも、新しい気流構造に合わせて改良され、リア・ホイールアーチ後方のバイパス・エアベントも拡大。
これらによってホイールからの後流を確実に引き抜くことで、乱流を効果的に処理。これにより、リアディフューザーへの気流を保護し、ロスを削減することで5% のダウンフォース増を達成した。
リア・ダウンフォースの大幅な増加に合わせて、フロントエリアもバンパーおよびアンダーボディのデザインを再構築して車輌全体のダウンフォースを最適化した。
延べ5,000kmに及ぶ開発テスト、そして15,000kmの信頼性テストを経て、FXX-K Evoは2018/2019シーズンのXXプログラムでの主力となっていく。
同シーズンは3月から10月までの間に、サーキット走行が9回予定されており、さらにXX車輌は、毎年レースシーズン終了後に開催されるフェラーリの伝統となった権威あるイベント、フィナーリ・モンディアーリに参加する予定となっている。
主要諸元
HY-KERS システム
総合最高出力:1050 cv
総合最大トルク:900 Nm 以上
ICE* – 最高出力:860 cv @9,200 rpm
最高許容エンジン回転数:9,400 rpm
ICE – 最大トルク:750 Nm @6,500 rpm
電気モーター出力:140 Kw (190 cv)
ICE
タイプ:V12, 65°
ボア & ストローク:94 x 75.2 mm
総排気量:6,262 cm3
圧縮比:13.5:1
比出力:137 cv/l
サイズ & 重量
全高:1,116 mm
ホイールべース:2,665 mm
前後重量配分 41:59(フロント:リア)
ギアボックス:
F1 デュアルクラッチ・トランスミッション 7速
サスペンション:
フロント ダブルウィッシュボーン
リア マルチリンク
タイヤ (ピレリP Zero スリック+センサー)
フロント:285/650 – R19 x10½
リア:345/725 – R20x13
カーボンセラミック・ブレーキ (ブレンボ)
フロント:398 x 223 x 36 mm
リア:380 x 253 x 34 mm
電子制御システム
ESC スタビリティ・コントロール
高性能ABS/EBD 高性能アンチロック・ブレーキ/
電子ブレーキ・ディストリビューション
EF1-Trac F1 トラクションコントロール統合および
ハイブリッドシステム装備
E-Diff 3 第3世代電子デファレンシャル
SCM-E Frs ツインソレノイド(Al-Niチューブ)装備の磁性
流体ダンパー・システム
エアロダイナミクス アクティブ
*ラム圧効果含む(電気 & ICE)