先の2020年、トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:佐藤恒治)が米国・CESで構想を発表し、ウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)と静岡県裾野市の東富士工場の跡地で開発を進めてきた「Toyota Woven City(Woven City/ウーブン・シティ)」が、9月25日にオフィシャルローンチを迎えた。
また、オフィシャルローンチに際し、トヨタ自動車会長の豊田章男氏(Woven CityのMaster Weaver)を筆頭に関係のステークホルダーが集結。同日にローンチイベント「Woven City Official Launch Weaving the Future: Day 01」を開催した。
ウーブン・シティはトヨタ自動車が主導するミ未来のモビリティ社会を見据えた実験都市。当地には14の居住棟を含む建物施設(第一期エリア)を設けていき、構想としては最大2000人が住むひとつの街を作り・模擬運営するプロジェクト。新たなモビリティやサービスなどをテストする環境として利用される。
企業・個人が様々なプロダクトやサービスの実証を開始すると共に、住民が居住を開始し、モビリティカンパニーへの変革に向けた人が生活するテストコースとして、歩みを進めていくという。
ちなみに同様の都市構想としては個々に実証の形や規模こそ異なるが、スペイン/バルセロナの電子システムの統合(2000年〜)を皮切りに、オランダ/アムステルダムの環境都市(2009年〜)、米国サンディエゴの再生エネ都市(20012年〜)、フィンランド/ヘルシンキのMaaS都市(20016年〜)、中国/浙江省杭州市の交通課題解消(20016年〜)、米国コロンパスの交通システム統合(20017年〜)などがある。
ウーブン・シティでは、都市構築の規模が限られる一方で、実際に人々が暮らす環境で新しい技術の導入や検証を行う都市開発プロジェクトで、最先端の技術が集結すると謳われており、同拠点を活用して新しいプロダクトやサービスを開発・実証する企業・個人は、Inventors(インベンター/発明家)と呼ばれる。
ウーブン・バイ・トヨタでSenior Vice Presidentを務める豊田 大輔氏によると、トヨタののものづくりの知見やWbyTのソフトウェア技術、そして各Inventorが持つ様々な強みや専門性といった、自分たちが持っていないものを掛け合わせることで、今は存在しない価値をつくり出していく。それが、トヨタが目指す〝カケザン〟による発明だと説明している。
今回のオフィシャルローンチイベントでは、このカケザンに加わるInventorに、シンガーソングライターのナオト・インティライミ氏が新たに加わったことを明らかにしている。
同氏は、初のアーティストのInventorとして、Woven Cityにて音に関する実証を行う予定で、同日時点で、計20のInventorsの参画が決まっている。
なお、ナオト・インティライミ氏がWoven City Anthemとサウンドシンボルをプロデュースすることも決定し、同氏が作曲したWoven Cityのテーマ曲であるWoven City Anthem「Woven City」が初披露された。
また既に参画が決まっているInventorsに加え、より幅広い皆様にWoven Cityでの実証に参加し貰えるよう「カケザン」を加速するスタートアップや起業家、大学・研究機関など企業・個人を対象に、9月8日よりアクセラレータープログラム「Toyota Woven City Challenge – Hack the Mobility -(アイデアの応募を2025年10月14日まで受け付け)」の募集を開始した。
居住棟には2025年9月より、Weaversとしてトヨタ関係者とその家族数世帯が住み始め、Phase 1では最終的に300名程度が住む予定。なお、一般の方のビジターとしての受け入れは、2026年度以降を予定しているとした。
オフィシャルローンチにあたり豊田 章男会長は、「Master Weaverの豊田でございます。
2018年のCESでモビリティカンパニーへの変革を宣言し、2020年のCESでWoven Cityの構想を公表してから着実に準備を進め、仲間づくりをしてきました。
Woven Cityでモビリティの未来に向けた実証を行い、そこで生まれるプロダクトやサービスがWoven Cityにとどまらず、日本、そして世界の人々の幸せに寄与することを目指してまいります。
そんなWoven Cityで起こしていくのは『カケザン』です!掛け算は一社だけだと成り立ちません。最低でも2社必要です。みんなで笑顔の2をかけていきましょう。たくさんの笑顔の未来をつむげる気がしてきませんか?」と呼び掛け、賛同企業や個人の参加を結びの挨拶とした。
<以下、参考情報>
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▷Woven Cityの「テストコース」としての機能例
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アイテム:三本の道
場所:街全体
特徴・機能:地上の道は「歩行者専用の道」、「歩行者とパーソナルモビリティが共存する道」、「モビリティ専用の道」の3種類に分類される
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アイテム:地下の道
場所:地下
特徴・機能:地上の道に加えて4本目の道であり、天候や気温等に左右されず実証がしやすい環境を整備
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アイテム:信号
場所:街全体
特徴・機能:モビリティと連動して、信号の切り替えタイミングを制御するシステムを導入。三位一体で交通安全を目指す
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アイテム:多機能ポール
場所:街全体
特徴・機能:街路灯と信号柱としての機能に加えて、実証で使用するセンサーやカメラなどを取り付けることができる
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▷Inventorによる実証テーマ
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Inventor:ダイキン工業株式会社
Woven City実証テーマ:「花粉レス空間」や「パーソナライズされた機能的空間」に関する実証実験
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Inventor:ダイドードリンコ株式会社
Woven City実証テーマ:自動販売機を通じた新たな価値創造
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Inventor:日清食品株式会社
Woven City実証テーマ:新たな「食文化」創造に向けた食環境の構築とその環境が及ぼす影響の検証
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Inventor:UCCジャパン株式会社
Woven City実証テーマ:コーヒーが人々の創造性や生産性に与える影響を実証
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Inventor:株式会社増進会ホールディングス
Woven City実証テーマ:データ活用による先進的な教育スタイル及び新しい学びの場の実現
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Inventor:インターステラテクノロジズ株式会社
Woven City実証テーマ:ロケットの製造体制強化*
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Inventor:共立製薬株式会社
Woven City実証テーマ:ペットと人の「より良い共生社会のあり方」を探る
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Inventor:ナオト・インティライミ
Woven City実証テーマ:音に関する実証
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Inventor:トヨタ
Woven City実証テーマ:e-Palette/様々なモビリティサービスに活用できるバッテリーEV。飲食の提供などサービス提供のプラットフォーム機能を実証
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Inventor:トヨタ
Woven City実証テーマ:Personal Mobility Vehicle(PMV)/自由に安心して楽しめる電動小型三輪モビリティによるシェアサービスを実証
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Inventor:トヨタ
Woven City実証テーマ:Summon Share/自律走行ロボット(Guide Mobi)によるシェアカーの自動搬送サービスを実証
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Inventor: WbyT
Woven City実証テーマ:Smart Logistics/モノの移動を簡単にする配送プラットフォームを活用し、将来はクリーニングやストレージサービスなど生活を支えるサービスを実証
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* Woven City内での実証ではなく、トヨタ・WbyTのモノづくりに関するノウハウ・人的リソースをインターステラテクノロジズ株式会社に提供し開発支援
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Inventorとしての参画が決まっているトヨタグループ企業
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株式会社豊田自動織機、株式会社ジェイテクト、トヨタ車体株式会社、豊田通商株式会社、株式会社アイシン、株式会社デンソー、トヨタ紡織株式会社、トヨタ自動車東日本株式会社、豊田合成株式会社、トヨタ自動車九州株式会社、トヨタ、WbyT(計12社)