独・ボッシュ日本法人、年次記者会見を開く

日本国内での第三者連結売上高は約4,280億円・3年連続最高売上高を更新

独・ロバート・ボッシュGmbH(本社:シュトゥットガルト・ゲーリンゲン、代表取締役社長:ステファン・ハルトゥング)傘下のボッシュ株式会社(本社:横浜市都筑区、代表取締役社長:クリスチャン・メッカー)は6月19日、横浜市都筑区の本社に報道陣を募り年次記者会見を開いた。

現在、約6,300名の従業員を抱えるボッシュ株式会社の2024年度の日本国内に於ける第三者連結売上高は、約4,280億円(26億ユーロ超)。2024年は、世界経済の低迷や国内では主要事業である自動車市場の生産台数減少が影響し、引き続き厳しい年となったが、前年比1%増と微増ながらも堅調な業績を維持した。

ボッシュ株式会社代表取締役社長のクリスチャン・メッカー氏は、「2024年の国内自動車生産台数が前年比8.5%減の823万台であったなか、ボッシュは安定的な成長を遂げました。

併せてボッシュは日本国内で3年連続で最高売上高記録を更新しました。1911年に日本で事業を開始して以来今年で114年目を迎える当社は、今後も『Invented for life』というコーポレートスローガンのもと、自動車産業のみならず、産業機器や、空調など、あらゆる事業分野で、人々の生活を豊かにする取り組みに一層力を入れていきます」と述べた。

世界のボッシュ・グループ:2025年の展望と戦略の方向性

より詳細なボッシュ・グループの2024年の売上高は、前年比1.4%減の903億ユーロで、為替調整後は0.5%減となった。

支払金利前税引前利益は31億ユーロ(2023年:48億ユーロ)で、支払金利前税引前利益率は3.5%。昨年は、市場環境が成長の大きな足かせとなったが、競争力強化のために意欲的な「戦略2030」を継続しているという。

ロバート・ボッシュGmbH取締役会会長のシュテファン・ハルトゥング氏は、「2024年度は、コスト、構造、製品ポートフォリオの観点から重要な改善を成し遂げました。通常のインフレ率を2~3%とした場合、2030年まで平均年間成長率6~8%を達成することを目指しています。

2025年第1四半期の売上高は、前年同期比で4%増となっています。ボッシュ・グループは、現在の環境下では極めて挑戦的であると認識しつつも、引き続き2026年も目標利益率を7%としています。

市場や技術が変化する中でも成功を維持するために、ボッシュは今後もコストおよび構造改革に集中的に取り組み、収益性の高い事業分野に注力します。

また、スタートアップ企業との協働も自社の成長に向けた大きな刺激になると考えています。ボッシュ・グループは、欧州最大級のベンチャーキャピタル投資会社のひとつであるボッシュの子会社Bosch Venturesが、ベンチャーキャピタル向けに約2億5,000万ユーロのファンドを新設すると発表しました。

ボッシュは、モビリティ事業セクターにおいて、eモビリティ、水素、ソフトウェア・ディファインド・ビークルの開発が成長の大きな刺激になると予測しています。消費財事業セクターでは、新たな顧客ニーズが重要な成長機会をもたらすと予測しています。

電動工具では、コードレス工具のラインナップ拡充に力を注ぐほか、今年BSH Hausgeräteは、初のMatter対応家電製品となる冷凍冷蔵庫を発売する予定です。

産業機器テクノロジー事業セクターでは、受注量の安定化が見込まれることから、ソフトウェアや「Hydraulic Hub」などのデジタルサービスで、2030年初めまでに約10億ユーロの売上高を目標に掲げています。

更にバッテリーや半導体、消費財の生産といった成長分野におけるファクトリーオートメーションは、今後さらに注目されると見込んでいます。

エネルギー・ビルディングテクノロジー事業セクターにおいては、ジョンソンコントロールズと日立のHVAC(暖房・換気・空調)事業の買収が予定されており、これによる大きな成長が見込まれます。

世界情勢が不安定な状況においても、ボッシュにとってクライメートアクションは依然として重要な課題です。ボッシュは、2030年までに、製品使用時における排出など、ボッシュの直接的な影響範囲外での二酸化炭素排出量のさらなる削減を目指す新たなスコープ3目標を設定しました。

また成長目標に関わらず、それまでにはCO2削減目標を2018年比で15%から30%に倍増したいと考えています。「世界経済が他に現在対処すべき課題を抱えているからと言って、気候変動がなくなるわけではありません。持続可能性はボッシュにとって変わらず優先事項です」と説明した。

日本主導で開発を進める最新テクノロジー

そんな同社は2024年、新本社兼研究開発施設を横浜市都筑区に開設。複数拠点に点在していた従業員を新拠点に集約し、研究開発設備を拡充したことで、顧客ニーズに対応するための開発体制を強化した。

新本社では、運転支援や自動運転技術に関する開発も推進しており、複数の実証実験を進めているという。そのひとつが、画像認識ソフトウェアおよびAIを活用した「パレット ガレージ アシスト システム(機械式駐車場向け運転支援システム)」だという。

これは日本の都市部によくある狭い道路や駐車場で、多くのドライバーが高度な運転技術を必要とされるなか、特にスペースが限られた機械式駐車場での駐車環境に適した「パレット ガレージ アシスト システム」を指す。

このシステムにより、ドライバーの指示に従い自動駐車機能が開始される。近距離カメラで撮影された画像は外部リソースに転送され、そこでAIが機械式駐車場のパレットの位置と向きを検出。計算された出力データは、車両のECU、さらに車両駆動システムに転送され、ステアリングや、アクセル、ブレーキを完全に自動駆動するというもの。

現在、自社新本社にある機械式駐車場を利用し、開発を継続している。更にAI学習に用いられる画像データを増やすため、自社駐車場に加え、国内の様々な機械式駐車場でのデータ収集や、3Dモデルを活用したデータ拡張にも取り組んでいるとした。

同様の自動化領域では昨年秋から、SAEレベル2の運転支援および自動運転の試験走行を東京・横浜周辺で開始している。

これは、ボッシュが急ピッチで開発を進めるグローバル規模で展開可能なエンドツーエンドAIベースのADASスタックを、現実の都市環境下で実証し、量産に向け最適化することを目的としているもの。

日本は特に、左側通行での運転や坂道での車速の調整など、都市部で見られるような複雑な都市構造と交通事情が特徴的で、ボッシュにとってシステム開発の主要拠点であると位置付けている。

現段階では、日本の交通標識や大小様々なトラックを認識する他、路上駐車を避けた走行や、複雑な都市交差点での判断などに対応。大都市の典型的な走行シーンでの自動運転の実現を目指している。

ボッシュでは引き続きこの実証実験で、日本のニーズに適応しながらシステムの適用範囲をより広げ、グローバル市場向けのAIベースのADASスタックの量産化に繋げていく計画だとしている。

加えて昨今モビリティ市場で加速しているソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)の実現に向けた開発も進めている。

そのなかでも近年、ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなど車両制御のための様々なアクチュエーターを統合制御する包括的なビークルモーションマネジメントの開発に注力しているという。

これらはハードウェアに依存しないソフトウェア機能によって、車両のダイナミクス、ハンドリング、効率性などが最適化されるもの。

現在、日本で開発中のコンセプト車両では、ビークルモーションマネジメントによるマルチアクチュエーター統合制御により、ドライバーの好みや、走行シーンに応じてパーソナライズ化された運転を可能にするための開発を続けている。

こうしたソリューションは、2025年初めに実施した冬期試乗会で複数の日本の顧客から高評価を得ているという。現在、試乗会を重ねつつ、フィードバックを得ながら、さらなる開発に力を入れているとしている。

AIは10年後最も影響力のあるテクノロジー

更に同社はAIの重要性を把握するべく、AIに関する調査をグローバル(ドイツ、フランス、イギリス、米国、ブラジル、中国、インド)および日本で実施した。

その結果、AIが「10年後、最も影響力のあるテクノロジー」としてグローバル(67%)でも日本(51%)でも1位となった。また「AIスキルの重要性」を認識し(グローバル:56%、日本:45%)、「AIで自分の仕事がリスクにさらされると思う」割合(グローバル:49%、日本:52%)は、グローバルでも日本でもそれぞれ約半数にのぼった。

一方で「職場でAIの研修を受けたことがある」割合はグローバルで28%、日本ではわずか10%という結果で、日本ではAI研修の受講経験者がグローバルと比較して圧倒的に少ないことが判った。

そこでボッシュでは、AIスキルを身につけることが個人としても会社としても大きく成長するチャンスだと捉え、AIに関連する施策を積極的に取り入れている。

その一例として、独自の教育プログラムのAIアカデミーを通じて世界で6万5,000人以上の従業員にAIのトレーニングを提供している。またグローバルで2023年末より展開している生成AIツール「AskBosch」を、日本を含むグローバルで2023年に導入した。

2025年は国内における同ツールの平均月間アクセス数を5万回以上にする目標を設定。更に社内外の事例を学び、AIに関する知識を共有する社内イベント「Bosch Japan AI Day」を2024年秋に実施し、2025年も引き続き開催予定という。

本社周辺地域一帯のさらなる活性化に寄与

2024年11月、ボッシュは横浜市都筑区と「地域活性化に関する包括連携協定」を締結し、ボッシュの本社、ボッシュ ホール、両施設間に位置する全天候型広場の一帯を「Bosch Forum Tsuzuki(和名:ボッシュ・フォーラム・つづき)」と命名。

以来、地域活性化に繫がる様々な施策を行っている。2024年9月にオープンしたcafé 1886 at Boschは、オープン以来POSの取引件数が累計5万件を上回り、広く利用されているという(2025年5月末時点)。

2024年12月には従業員と地域団体が協業し、クリスマスオーナメント制作ワークショップや多言語の絵本読み聞かせなど、クリスマス関連のイベントを本社1階で実施し、多くの来場者でにぎわった。2025年3月にはボッシュ ホール(都筑区民文化センター)がオープンし、Bosch Forum Tsuzukiの 敷地全体が週末や祝日も含めて一般開放されている。

ボッシュでは今後も、日本発の開発をリードすることでモビリティ市場の発展に寄与すると共に、モビリティ以外のビジネスポートフォリオを拡大し事業基盤の強化を図る。また、地域活性化にさらに貢献することで、「Invented for life」を体現する企業として、さらなる成長を目指していくと結んでいる。

組織名:ボッシュ株式会社
ホームページ:https://corporate.bosch.co.jp/
代表者:クリスチャン・メッカー
資本金:17,000,000,000 万円
上場:非上場
所在地:〒224-8601
神奈川県横浜市都筑区中川中央1丁目9番32号