自動車産業調査会社の英JATO(JATO Dynamics Limited/ジェイトー・ダイナミクス・リミテッド)は12月17日、欧州の自動車市場についての最新レポートを公開。同日翻を1月6日、同日本法人のJATO Japan Limited(ジェイトー・ジャパン・リミテッド)が発表した 。(坂上 賢治)
それによると昨年11月の販売台数は、対前年比13%減少。SUVが占めるマーケットシェアは40%以上を維持したものの成長は停滞している。また販売首位は、独フォルクスワーゲンがゴルフを25,000台弱売り上げている。
コロナ禍は、過去20年間に欧州来襲のどの経済危機よりも大きな影を落とす
欧州では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が依然続いている。これにより2020年11月の欧州の新車販売台数は、前年比2桁減となった。
当月の具体的な新車販売台数は1,045,129台で、これは前年2019年同月比13%減。同数値は2014年11月の販売台数989,500台に次ぐ最小記録だ。
この結果、11月までの年初来累計台数は対前年比26%減少。この数値により、今も懸念すべき傾向が未だ続いていることを示している。欧州では1月から11月の間に1,071万台の新車が販売された。しかしこれは今世紀に入ってから最も少ない台数となっている。
同数値について英JATOでグローバルアナリストを務めるフェリペ・ムニョス(Felipe Munoz)氏は、「世界的な感染拡大と、それがもたらしたモビリティ産業への影響は、欧州自動車産業界にとって大きな痛手となっており、実際、過去20年間にヨーロッパを襲ったどの経済危機よりも大きな影を落としている」と述べている。
欧州市場に於いてSUVの成長基調はいよいよ終わりを迎えるのか?
これまで過去6年間の間、SUVセグメントは一貫して欧州自動車産業の成長を牽引してきた。特に景気後退後にあたる2011年から2013年に掛けての3年間、市場がゆっくりと回復し始め、以降、新車を求めるマーケットの購買力と需要動向は、ハッチバックやワゴン、MPVからSUVへと移っていった。
その流れは堅調で、新型コロナウイルスの影響が深まっていく前の2019年初旬に至る迄の期間で、SUVセグメントは欧州全域で合計603万台を売り上げた。
ムニョス氏は、「当時、SUVが市場全体の38.3%を占めたことは、業界にとって新記録だった。しかし、2019年になって状況が劇的に変化した。
自動車会社は、もはや急速な成長基調を示しておらず、業界全体が2021年に向け、ポジティブに転じる兆しが何なのかを、ひたすら模索し続けている」という。
実際、今年は大半の期間で、SUVのマーケットシェアは40%から41%の間で安定していた。しかし、その販売台数は前年比で見た場合11月で13%減、年初来累計台数では21%減少した。
それにも関わらず、1月から11月までの年初来累計台数で見た場合、SUVのマーケットシェアは、2019年の38%から今年は40.4%に拡大している。
ムニョス氏は、「新車の販売市場は今年、SUVのラインナップがより幅広くなったことから大きな恩恵を受けた。しかし、今日に於いて欧州ではコロナウイルスの影響が色濃く残っているため、今後、新型車が投入されると同時にマーケットが大きく拡大したり、かつてのような早いペースで成長することは、もはやないだろう」と話す。
モデル別販売ランキングでフォルクスワーゲンゴルフが首位を維持
反対に、BセグメントとCセグメントは全体の平均を下回ったが、当月は新型モデルや競争力のある電動化モデルが投入されたことでマーケットシェアが拡大している。
具体的なモデル別販売ランキングでは、フォルクスワーゲンのゴルフが欧州で最も人気のある車としての地位を維持し続けている。当月の販売台数は24,800台で、年初来累計台数は255,000台をわずかに下回った。上位10位に入ったSUVは、プジョー 2008とルノー キャプチャーの2モデルのみだった。
その他の10位圏外では、フォード プーマ(Puma)、ボルボ XC40、アウディA3、ルノー ゾエ(Zoe)、フォルクスワーゲンID.3、キア ニロ(Kia Niro)、メルセデスGLA、シュコダ カミーク(Skoda Kamiq)、ジープ コンパス、メルセデスGLB、ニッサン ジューク、アウディQ3スポーツバック、キアXシード(Kia Xceed)、スズキ イグニス、BMW2シリーズが、いずれも好調な成績を残している。