最終戦を待たずポルシェ陣営が、919ハイブリッドで2年連続のマニュファクチュアラーチャンピオンシップを獲得
11月6日(日)中国の上海国際サーキットで、FIA世界耐久選手権(WEC)第8戦となる「上海6時間レース」の決勝が行われた。結果は、カー#1のポルシェ919ハイブリッドが優勝。これに続いてTOYOTA GAZOO Racingの2台のTS050 HYBRIDが2位、3位表彰台を獲得した。
これによりマニュファクチュアラータイトルは、最終戦を待たずポルシェ陣営がシリーズチャンピオンに輝いた。
ポルシェ陣営は、カー#1のポルシェ919ハイブリッドのティモ・ベルンハルト(ドイツ)/ブレンドン・ハートレー(ニュージーランド)/マーク・ウェバー(オーストラリア)組の優勝に加え、カー#2のロマン・デュマ(フランス)/ニール・ジャニ(スイス)/マルク・リーブ(ドイツ)組が4位でフィニッシュしたことで、ポルシェが38ポイントを獲得。
これによってポルシェの合計ポイントは301となり、アウディ(222ポイント)及びトヨタ(207ポイント)が11月19日のバーレーンにおける最終戦で、ポルシェのマニュファクチュアラー・獲得ポイントを上回ることが不可能となった。
ポルシェAGの研究開発担当役員であるミヒャエル・シュタイナー氏は、この地に於けるタイトル獲得に際して、「ポルシェにとって2年連続となるマニュファクチュアラーチャンピオンシップのタイトル獲得は、919ハイブリッドの勇敢なコンセプトの正しさを改めて証明しました。
ヴァイザッハで開発されたこのプロトタイプは、718 RS、904、917や956など、常に時代を先行していた歴史に残るポルシェのレースカーの仲間入りを果たしました。
これらすべてのモデルがモータースポーツの歴史を塗り替え、市販車両の開発に大きく貢献してきました。これは、919ハイブリッドも同じです。私はチーム全員を誇りに思います」とコメントしている。
併せてLMP1担当副社長であるフリッツ・エンツィンガー氏は、「この大きな成功が達成できたのは、チームの多大な努力があったからこそです。
メカニック、エンジニア、ドライバー、そして舞台裏の数多くの人々がタイトルに向けて懸命に戦ってきました。今日、昨シーズンに続きそれが報われました。
これは、919ハイブリッドだけでなく、チームがどれほど優秀なのかを証明するものです。心の底から皆に感謝しています」と述べた。
一方、2位に入ったのはトヨタ陣営(TOYOTA GAZOO Racing)の小林可夢偉/ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ組のカー#6号車。さらに3位のチェッカーフラッグを潜ったのは、中嶋一貴/アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ組の#5号車となった。
なお今季最後のWEC挑戦となるアウディ陣営は今回、5・6位に沈んでいる。
アウディ陣営では、ルーカス ディ グラッシ / ロイック デュバル / オリバー ジャービス(ブラジル/フランス/イギリス)組のカー#8号車が、レース開始1時間を経過する時点でトップに6.4秒差の2番手を走っていた。
しかし、最初のピットストップの時、異変に見舞われ、燃料タンクには計算より明らかに少ない量の燃料しか入りらず、メカニックが不具合を修正するまで多くの時間を要しながら、その後5位までポジションを回復した。
一方、マルセル ファスラー / アンドレ ロッテラー / ブノワ トレルイエ(スイス/ドイツ/フランス)組のカー#7号車は、レース序盤に6番手を維持し、3時間が経過する頃には5番手に浮上しようとしていたが、周回遅れのマシンをオーバーテイクする際、オリバー ジャービスのマシンとブノワ トレルイエのマシンが接触。
マシンの右側を接触した7号車は、圧縮空気のパイプが破損し、次のピットストップでエアジャッキが作動しなくなった。
このトラブル修復に同チームは25分を要し、一時は14周差の16位までポジションを下げたが、その後猛追を見せ6位でゴールした。
上海の結果について、アウディモータースポーツ代表のDr. ウォルフガング ウルリッヒ氏は、「今レースで見舞われた不運について非常に残念に思っています。チームメンバーおよびドライバーの仕事ぶりについては満足しています。彼らは6時間後のゴールまで、決して諦めることなく闘い続けました。
その甲斐あって、我々は貴重な18ポイントを獲得し、年間ランキング2位を堅持したので、最終戦で年間2位を獲得する可能性を残しています」とコメントをしている。
またアウディスポーツ LMPプログラムの責任者ステファン ドライヤー氏は、「5月以来、我々は優勝を含む表彰台獲得し続けてきました。そして本日、トロフィー獲得を望んでいましたが、叶いませんでした。
その代わり、非常に素晴らしい不屈の耐久レーススピリットを発揮することが出来ました。例え成功の見通しが高くなくとも、1ポイントでも多く獲得するために闘い続けることはとても価値があることです。
価値ある闘いを続けてくれたチーム全員に感謝しています」と語った。
なお今回の上海では、トヨタ陣営で2位に入った#6号車の速さが際だった。しかし実際には、トヨタ陣営とて、カー#6号車はマイク・コンウェイのドライブ中、2度にわたってパンクに見舞われるなど、決して幸運ではなかった。
しかし4戦連続の表彰台となる2位に入ったことで、カー#6号車のドライバー達は、最終戦を前に逆転ドライバーズタイトルへの望みを繋いている。
具体的には、首位のポルシェのカー#2号車のドライバー達との差は17点に縮まり、その結果、タイトル争いは2週間後に行われる最終戦バーレーンに持ち越される。
同じトヨタのカー#5号車についても、今シーズン初の表彰台を獲得したことで、バーレーン戦を前にアウディに15点差に迫り、マニュファクチャラーズ選手権でトヨタ陣営に2位をもたらす可能性を残している。
さてレース自体は、激しく順位の入れ替わる接戦で、今季初めて最前列からのスタートになったカー#5号車は、セバスチャン・ブエミのドライブで一時トップに立つが、その後ペースが落ちて5位に転落。
当初4位を走ったトヨタのカー#6号車は、スタート後1時間半過ぎた頃にアウディのカー#8号車の予定外のピットストップに助けられて3位に上がり、これによりトヨタのカー#5号車も4位に浮上した。
その後も2台のトヨタはポルシェのカー#2号車と激しい順位争いを展開、レースが2時間半を過ぎた頃に小林が強烈な走りでポルシェのカー#2号車を抜き去って2番手。
さらにトヨタの攻撃は続き、ブエミに替わったのカー#5号車もポルシェのカー#2号車を捕らえ、3番手に上がる俊足を見せた。
ところがここで、コンウェイのドライブ中に左後輪がパンクして4位に後退、代わってのカー#5号車が3番手に上がる。
しかもトヨタのカー#6号車には更に不運が続く、ゴールまで1時間半を切った頃、再びパンクに見舞われて、予定より早いピットストップ。
しかし、このタイミングに小林に交替したトヨタのカー#6号車はポジション奪回の攻撃的な走りを展開、まずカー#5号車を抜き去り、さらにポルシェのカー#2号車を捕らえた。
ゴールまで僅かな時間を残して各車が最後のピットストップを行った際、カー#5号車もポルシェのカー#2号車をかわして3位に浮上。
カー#6号車は2度のパンクから立ち直って2位を快走。しかし、トップを走るポルシェのカー#1号車との間隔は1分ほど開いており、TOYOTA GAZOO Racingの2台のTS050 HYBRIDは2位、3位でチェッカー。2014年の上海以来となる2台揃っての表彰台獲得となった。
佐藤俊男 TOYOTA GAZOO Racing代表
まず、マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得したポルシェ・チームにお祝いを申し上げたいと思います。2年連続のタイトル獲得は素晴らしい偉業と言えます。
今回、何度か不運にも見舞われましたが、今シーズン初めて2台のTS050 HYBRIDが共に表彰台を獲得できたことをとても嬉しく思います。
ここ3戦と同様にLMP1-H車両で参戦する3社が三つ巴の激しい接近戦を繰り広げました。これは、WECシリーズの戦いのレベルの高さを物語る事実であり、本日上海サーキットにお越し頂いたたくさんのファンの皆様にも十分お楽しみいただけたものと思います。
限られた時間の中で次戦バーレーンでの最終戦に向けての準備となりますが、更なる改良を進め、勝利に向けて再び臨みたいと思っています。
中嶋一貴
#5号車のチームスタッフ全員にとっても本当に嬉しい結果です。今年多くの不運に見舞われながらも、チーム全員が努力を続けてくれたおかげで再び表彰台に上ることが出来ました。
これが、幸運への転機になってくれることを望みます。自分自身としては厳しいレースでしたが、チームメイトが素晴らしいドライビングを見せてくれましたし、ポルシェ#2号車の前でフィニッシュ出来たことで、#6号車の助けが出来たのも良かったと思っています。
アンソニー・デビッドソン
ここまで運に恵まれない内容が続いてきただけに、表彰台に戻ることが出来て本当に嬉しいです。
もちろんもっと上のポジションを望んでいましたが、3位は悪くありません。レースはコース上の混雑や路面に散らばったタイヤのカスで大変でした。
本日の展開の中で我々の目標はポルシェ#2号車の前でフィニッシュすることで、それが達成出来て良かったです。
我々にとっては2015年のシルバーストーン以来の表彰台で長い時間がかかりましたが、2台揃って表彰台に乗れたのは素晴らしいことです。
セバスチャン・ブエミ
我々#5号車にとっては本当に厳しいシーズンでしたが、それだけに表彰台に乗れた喜びはひとしおです。
我々は今日の決勝レースで高い競争力を発揮することが出来、ペースで及ばなかったのはポルシェ#1号車だけでした。#5号車を表彰台に戻すために厳しい仕事を続けてくれたチームに感謝します。本当に嬉しいです。
最終戦のバーレーンでも表彰台を目指します。次のレースを迎えるのが楽しみです。
小林可夢偉
今日のレースには満足しています。レースの不運を考えれば2位は良い結果です。予期せぬトラブルで失ったタイムを取り戻すべく全力で走りました。
我々のTS050 HYBRIDは調子が良く、コース上の周回遅れをかわすのもとても上手く行きました。チーム一丸となってシーズンを通して懸命の改良を続けてきただけに、トヨタの2台が揃って表彰台に上るのを見るのは嬉しいものです。
この調子を維持し、良い結果でシーズンを締めくくりたいと思います。
ステファン・サラザン
富士に続いての連勝はかないませんでしたが、良いレースでした。我々のTS050 HYBRIDは週末を通して素晴らしい速さを見せました。
不運にも2度のタイヤのパンクに見舞われてしまいましたが、パンクしていなかったとしてもどうなったかは誰にも分かりませんし、今日の結果に満足しています。まだチャンピオン獲得の可能性は残っています。
17ポイントは決して容易な差ではありませんが、我々のTS050 HYBRIDには速さがあるので、最後まで全力を尽くします。
マイク・コンウェイ
全体的に順調な一日で、また表彰台に乗れたのは最高です。2度にわたってパンクに見舞われたのは残念でしたが、チームの素晴らしい対応のおかげで、今日のレースでは最良の結果が得られたと思います。
最後まで上位争いが出来たのはチーム全員の努力のおかげです。そして、#5号車が表彰台に上がれたことは、彼らだけでなくチームにとっても良い結果でした。