トヨタ自動車のFC貨物実証、加州の4100万ドルの補助金候補へ


FC技術を活用し「貨物輸送のゼロ・エミッション化」を目指した米ロサンゼルス市港湾局(POLA)の新プロジェクトに参画

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男)傘下の北米事業体「Toyota Motor North America, Inc.(以下、TMNA)」は米国時間の9月14日、エネルギー企業のシェル(Shell)、米トラックメーカーのケンワース(Kenworth)と共に燃料電池(以下、FC)技術の活用による貨物輸送のゼロ・エミッション化を目指した米加州ロサンゼルス市港湾局(POLA : the Port of Los Angeles)のプロジェクトに参画する。

TMNAは、FC技術の応用を通じて同州の港湾における環境対策に貢献すべく、昨年夏よりFC大型商用トラックの実証実験を始め、本年7月には、実用性を高めた改良型トラックを公開するなど、取り組みを進めてきた。

今プロジェクト実施の中心地となるロサンゼルス港では、かねてより加州エネルギー委員会の協力の元、大気汚染物質を排出しないサプライチェーンや物流の構築に向けて、様々なゼロ・エミッション技術の検証が行われてきた。ロサンゼルス市港湾局による今プロジェクトは、これまでの取り組みを補完・推進していくものだ。

そこでロサンゼルス市港湾局は、まず港湾エリアを中心に新たな貨物輸送車を導入し、大気汚染物質の影響が大きい地区での排出物質の削減を図る。

そして将来的には、港湾エリア外へも取り組みを広げ、大気汚染物質を排出しない物流オペレーションを広範囲で構築することを目指す。

加州は、これらの取り組みを通じて、年間で温室効果ガスの排出量を465トン、窒素酸化物やPM10など有害物資の排出量を0.72トン削減することができると考えていると云う。

実証実験で使用するFC大型商用トラックは、「MIRAI」のFCスタック(発電機)2基と12kWhの駆動用バッテリーを搭載することで、約500kWの出力と、約1,800N・mのトルク性能を確保し、貨物を含めて総重量約36トンを牽引する走行環境を実現とした。通常運行における推定航続距離は、車両発表当初は満充填時で約320キロメートルとしていたが今夏、加えて水素タンクの本数を4本から6本に増やし、通常運航における満充填時の推定航続距離を約320kmから約480kmに伸長している。

なお同プロジェクトは先の通りで、カリフォルニア州大気資源局(CARB : California Air Resources Board)の補助金プログラムである「ZANZEFF : Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project(貨物輸送施設における大気汚染物質削減プログラム)」のなかで、4,100万米ドルの補助金交付の候補として選出されたもの。補助金が正式に承認された場合、プロジェクト費用(約8,300万米ドル)の約50%が助成されることになる。

ロサンゼルス市港湾局によるプロジェクトの主な内容は、トヨタがケンワースのプラットフォームをベースに、今秋より導入予定である改良型FC大型商用トラックの性能をさらに強化したトラックを10台開発する。

これらのトラックは、ロサンゼルス港からロサンゼルス市外のヒューニーメ港のほか、同州内陸部のリバーサイド郡やマーセド郡などへの貨物輸送を行う予定。米国でトヨタの物流事業を担うToyota Logistics Servicesがこれら10台のFCトラックうち4台を、その他の貨物運送会社3社が残りの6台を使用する(United Parcel Service社が3台、Total Transportation Services社が2台、Southern Counties Express社が1台を使用)。

対してシェルは、ロサンゼルス市のウィルミントン地区と同州内陸部に位置するオンタリオ市に、大型水素ステーション2基を新設。FC大型商用トラックは、ロサンゼルス周辺のトヨタの施設内に設置された既存の3基を含め、合計5基の水素ステーションにおいて水素を充填する。

この港湾敷地内や倉庫におけるゼロ・エミッション技術の利活用拡大についてロサンゼルス市港湾局は、ロサンゼルス市の北部に位置するヒューニーメ港に電動トラクター2台を新たに導入。またトヨタは、トヨタの港湾倉庫で使用するフォークリフトのゼロ・エミッション化を進めていく。

トヨタとケンワースはFC大型商用トラック10台を導入、シェルは水素ステーション2基を新設

同プロジェクト実施へ向けてロサンゼルス市長のエリック・ガルセッティ(Eric Garcetti)氏は、「ロサンゼルス港は、環境保全と経済成長は両立するということを世界に示しています。今回の補助金は、貨物輸送のゼロ・エミッション化を推し進めるものです。

CARBによる米港湾への投資に感謝するとともに、私たちは引き続き、より持続可能な未来に向けた取り組みをリードしてまいります」と語っている。

またロサンゼルス市港湾局のジーン・セロカ局長(Gene Seroka)は、「CARBからの補助金は、次世代のクリーンな港湾施設、貨物輸送トラックおよびインフラを開発・事業化していく上で、非常に重要なものです。

私たちは、トヨタ、ケンワース、シェルのような業界をリードする企業との共同技術開発やインフラ整備を通じて新たな取り組みを進めてきました。今回の補助金は、そういった官民連携の取り組みに対して交付されるものです」と話している。

これに対してTMNAのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるボブ・カーター氏(Bob Carter)は、「水素を燃料とするFC技術は大気汚染物質を排出しないことに加え、汎用性、走行性能、航続距離などの面でも優れており、トヨタはFCが将来のパワートレーンの主流になる可能性を秘めていると確信しています。FC大型商用トラックはその確信を裏付けるものです。

私たちは、ロサンゼルス市港湾局やケンワース、シェル、その他のオペレーションを担う事業者とともに、大気汚染物質を排出しない貨物輸送トラックの効果を検証し、加州における貨物輸送の水素インフラ整備に携われることを誇りに思います。

今回導入するFC大型商用トラックは、様々な用途に使えて汎用性の高いFC技術を活用したゼロ・エミッション化を始め、トヨタが電動化を推進するなかで、新たなFCVのラインナップとして加わることになります」とコメントした。

同プロジェクトに参画するケンワースのゼネラル・マネージャーであるマイク・ドージャー氏(Mike Dozier)は、「今回のプロジェクトは、ロサンゼルス市港湾局、ケンワースおよびトヨタが、将来のクリーンなトラックづくりにおいて重要な役割を担うゼロ・エミッション技術を共同で開発・運用するための絶好の機会です」と述べている。

さらにシェルの新燃料担当のバイス・プレジデントであるマシュー・ティッパー氏(Matthew Tipper)は、「今回の補助金提案は、水素が貨物輸送分野のゼロ・エミッション化に向けた有望なソリューションであることを証明するものです。

今回の州政府による支援に感謝すると共に、ロサンゼルス市港湾局、ケンワースおよびトヨタと、カリフォルニア州におけるクリーンな代替燃料の開発に取り組む機会を得たことを光栄に思います。今回のプロジェクトにより、私たちは、水素の供給先に大型貨物の輸送機関を加えることができます」と結んでいる。