ルネサスエレクトロニクス、米・半導体会社IDTを子会社化


ルネサスエレクトロニクス株式会社(本社:東京都江東区、CEO:呉文精)は今日9月11日、米半導体大手IDT(インテグレートデバイステクノロジー・インク、本社:米国・加州サンノゼ、CEO:グレッグ・ウォーターズ)の株式を1株当たり49米ドル、総株式価値にして現金約7,330億円(67億米ドル、1米ドル110円換算)で買収する内容で最終決着した。

この買収額は、 IDTの2018年8月30日の総株式の終値に対して約 29.50%のプレミアムを付与しての買収あることを意味している。

なおルネサスが現金で用意する買収資金は、自らの手元資金に加えて、主要取引銀行から新たに借入する約6,790億円の現金調達で充当。新株発行などを伴う資金調達は実施しない。

ちなみにIDTは、センサー、コネクティビティ、ワイヤレスパワーを中心とした組み込みプロセッサとアナログ・ミックスドシグナル製品をモビリティ企業を筆頭に世界へ向けて提供している企業体であり、今買収によって電子機器の性能・効率向上に強みを持つルネサスとの強化統合が実現することになった。

この買収は、ルネサス・IDT双方にとって友好的なものであるとし、両社の取締役会で全会一致で可決されたと云う。また今後、買収完了まで駒を進める過程では、IDTの株主総会上の合併承認、及び関係当事国で必要とされる当局の承認取得が前提であるため、事実上の買収完了は2019年度(2019年12月期)上期中の実現を予定している。

仮にこれが実現すれば、両社数値を単純合算したNon-GAAP ベースの売上高総利益率、並びにNon-GAAP ベースの 1 株当たり純利益(EPS)、そしてフリーキャッシュフローのいずれの数値も早期に拡大するとルネサスでは見込んでいる。

ちなみに今買収によりIDTを買収する側となったルネサスは、2016年以来、世界をリードする組み込みソリューションのプロバイダーとして、未来の勝ち残り戦略を実施してきた。

それはアナログ製品のラインアップ強化。マイコン/SoCとアナログ製品を組み合わせて世界の顧客へキットソリューションを提案するなど多岐に亘る。

これらの成長戦略の実施が好を博し、ルネサスは自動運転やEV/HEV など伸長が期待される自動車分野。Industry 4.0や 5G(第 5 世代移動通信システム)などの新産業分野やインフラ分野、今も市場拡大中のIoT分野などの売上成長を、具体的な数字で積み上げてきている。

そうしたなか同社は、攻めの成長戦略をさらに実行する意欲に今も溢れており、これまでも2017年2月にIntersil Corporation(以下、インターシル)の買収を完了。これによってパワーマネジメントICや、高精度アナログ製品を自らのポートフォリオに取り込み、既存製品と組み合わせたソリューション力を伸張。これによる成長の重複を繰り返してきた。

そんな同社は、IDTが持つ広範なアナログ・ミックスドシグナル製品と、自社のマイコン/SoC およびパワーマネジメント IC との組み合わせによって、産業界から求められている情報処理要求に対して、補完性が高く網羅的なソリューションの提供を今後も行っていく意向であり、これらを通して自動車分野を筆頭にソリューション提供力の強化を、さらに1段に高めていく構えだ。

より具体的にルネサスは、データセンターや通信インフラ向けな
ど成長著しいデータエコノミー関連分野へ事業領域の拡大を目指すと共に、産業・自動車分野でのポジション強化をさより強力に推し進めていく。

一方、今買収が財務上でルネサスにもたらすメリットも大きい。買収早々には、Non-GAAP ベースの売上高総利益率で1.6%ポイントを改善。さらにNonGAAPベースの 1 株当たり純利益(EPS)が18%向上するからだ。

もちろん販売機会の拡大を介して、短・長期の売上成長も達成する。これらについては、規模の拡大に伴うコストの効率化が拍車が掛かり、現段階でも合計約275 億円(1 米ドル 110 円換算で250百万米ドル、Non-GAAP ベースの営業利益の年間ランレート)程度の統合効果が見込まれている。

今日に至ったこの買収発表について、ルネサス代表取締役社長兼 CEOの呉文精氏は、「買収を通じて、当社既存製品と補完性が高いIDTの業界をリードするアナログ・ミックスドシグナル製品に加えて、優秀な人材を獲得できることが、ルネサスの組み込みソリューション提案力の強化につながると信じています。

今後は、IDTの製品とルネサスのマイコン / SoC、さらにパワーマネジメントICを組み合わせることで、これまで以上に提供製品の幅を広げると共に、成長著しいデータエコノミー関連分野などにでも事業領域の拡大が可能となるでしょう」と語っている。

対してIDTのCEOのグレッグ・ウォーターズ氏は、「IDTのアナログ・ミックスドシグナル領域のリーダーシップと、ルネサスのマイコンや自動車や産業領域におけるリーダーシップが組み合わさることで、このマーケットに全く新しくかつ強力なグローバル半導体企業が誕生します。

我々2社が統合することで、昨今のデータエコノミー時代に於いてお客様が必要とするより多くの主要技術を保有することにつながり、これを糧にお客様に対してより強力なソリューションを提供致してまいります」と結んでいる。