トヨタ自動車傘下のTRI、バルセロナ自治大学へ10万ドルを助成


バルセロナ自治大学が、オープンソース環境下で開発する自動運転シミュレーターの支援に動く

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男)傘下で米国に於いて人工知能等の研究開発を行う「Toyota Research Institute(TRI)」は日本時間の6月21日、バルセロナ自治大学に10万ドルを助成すると発表した。

これは同校がオープンソースベースで開発を進めている自動運転シミュレーター「Car Learning to Act(CARLA)」の開発促進に資するべくバルセロナ自治大学の研究センターであるComputer Vision Center(CVC)に助成するもの。

このCARLAは、自動運転システムの開発と検証に向けたシミュレーター・ソフトウェアで、現実世界では検証が困難な状況下でも自動運転車の安定性を担保するべくCVCが開発し、オープンソースとしてGitHub上で公開されている。

CARLA シミュレーション画面イメージ
CARLA シミュレーション画面イメージ

オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードの自由な使用、配布等を広く第三者に認めることを原則としてソフトウエアのこと。

CARLA シミュレーション画面イメージ
CARLA シミュレーション画面イメージ
CARLA シミュレーション画面イメージ
CARLA シミュレーション画面イメージ

またGitHubは、ソフトウェア開発のプラットフォーム種のひとつ。GitHub上に自分の作品(プログラムコードやデザインデータ等)を保存・公開することで、数百万人もの開発者と一緒に、プログラムコードのレビューだけでなく、プロジェクト管理を進めていくことが可能だ。

これを前提にCARLAは、現実に起こりうる様々な走行環境を広く志を同じくする開発者に提供しており、ユーザーは各プロジェクトのニーズに応じて環境を拡張・修正しながら運転シミュレーションを行うことが可能な環境にある。

今回、トヨタ自動車の子会社であるTRIが、CVCへの資金提供や技術的支援を通じて、CARLA開発チームの拡大や、シミュレーターの性能向上に寄与していく構え。

TRIの運転シミュレーション担当ディレクターであるヴァンゲリス・コッケヴィス氏(Vangelis Kokkevis)は「技術的進歩や成長は、産学の連携や地域社会からのサポートにより実現するもの。

オープンかつ共通のシミュレーション・プラットフォーム開発を推進することにより、TRIと産学のパートナーは、より簡単にコードや情報、データなどを共有できるようになるでしょう」と話している。

一方、CVCのプロジェクト責任者であるアントニオ・ロペス(Antonio López)教授は「CARLAは、現実世界の制約を越えてAIドライバーの教育・診断をサポートすることにより、誰もが自動運転研究に携われるようになることを目指して開発された。

そんなCARLAの開発においては、エンジニア、デザイナー、科学者が一丸となって取り組んでいる。

我々はCARLAが円熟を迎えるまで研究開発を継続する必要があり、トヨタからの資金提供は大変貴重なものである」と声明を発表している。

ちなみにTRIは予てより、自動運転やロボティクス分野に於けるプラットフォームのオープンソース化を推進してきた。

例えば、ロボティクス関連のオープンソース・ソフトウェアや開発ツールを提供する米国の非営利団体Open Source Robotics Foundationに対しては、2016年から2年連続で助成金を提供している。

またロボット力学の分析や制御システムの作成に向け、マサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所が開発したオープンソース・ツールボックス「Drake」の開発支援にも取り組んでいる。