世界トップレベルの高熱効率を誇る過給エンジン
4月6日、トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田章男、以下、トヨタ)は、1.2Lクラスで「力強い加速感を実現すること」、「高い熱効率と備えること」、このふたつの課題実現を求めて永らく開発してきた新型直噴ターボエンジン「8NR-FTS」を遂に発表した。
この8NR-FTSエンジンの開発にあたっては、トヨタが取り組んできたハイブリッド専用エンジンの開発。ならびに従来型エンジンの開発で獲得した様々な応用技術を基礎に、新たな過給技術を追加。この総合技術で、世界トップレベルの高熱効率を実現する過給エンジンを開発した。
なおこのエンジンは、このたびマイナーチェンジを果たした新型オーリスに初搭載する。
ターボチャージャーもトヨタが独自で開発・製造
新型の直噴ターボエンジン「8NR-FTS」は、排気ガス温度を最適するため、水冷シリンダーヘッドと一体型のエキゾーストマニホールドを新設計。これにトヨタが独自で開発・製造したシングル・スクロール・ターボチャージャーを組み合わせたかたち。
これらユニット類の組み合わせよって、エキゾーストマニホールドを通る排気温度を理想的な値に最適化でき、乗用車エンジンに求められる柔軟なターボチャージャー特性、ならびに優れた過給効率も両立させることができたという。
3速・時速30km/hからの加速性能はクラスを超える性能
またこのターボチャージャーには、コンパクトな水冷式インタークーラーを採用することで、エンジンの熱負荷に左右されない吸気冷却効果も実現している。
具体的には、ドライバーの瞬間的なスロットル操作に対して、俊敏に応えることのできるエンジンとなっており、同エンジンを搭載した実走行においてエンジンの高い静粛性を保ちながらも、3速30km/hからの車両加速で、クラスを大きく超えた絶対性能を獲得している。加えて幅広い回転領域においても、安定した最大トルクの発生を可能とした。
直噴+可変バルブでシリンダー内の高速燃焼を実現
一方シリンダー内部にも、新たに手が加えられており、シリンダー内部で発生する強いタンブル流(縦回転の渦)と、直噴技術D-4T(Direct-injection 4 stroke gasoline engine with Turbo)とが理想的な混合気を形成しすることで高速燃焼を実現。
さらにシリンダー負荷に応じ、吸気側のバルブ開閉タイミングを制御する連続可変バルブタイミング機構VVT-iW(Variable Valve Timing-intelligent Wide)により、アトキンソンサイクル(圧縮比よりも膨張比を大きくして熱効率を改善して燃費を向上させる燃焼サイクル)が形成される。
このことからシリンダー内部の燃焼改善と、ターボによる加給時ならびにエンジンそのもののフリクションロスも低減化できたことで、乗用車エンジンとしてエネルギー損失改善を、極限まで追求することができたという。
今後トヨタは、2015年末までに14機種の高熱効率・低燃費エンジンをラインナップしていく予定
結果、量産過給ガソリンエンジンとしては、世界トップレベルの最大熱効率36%(トヨタ算定値)を達成した。
トヨタは、化石燃料の消費抑制のため、販売車両の多数を占める従来型エンジン車の燃費向上に取り組んでおり、高熱効率の低燃費エンジンに動力性能も両立した過給エンジンなどを、今後も追加していくことで、様々な自動車ユーザーのニーズに適した選択肢を、エコカーを通してより幅広く提供するとともに、すべてのクルマの環境性能を一層高めていく構えだ。
8NR-FTS主要緒元
総排気量(cc):1,196
内径×行程 (mm):71.5×74.5
圧縮比:10.0
最高出力(kW[PS]/rpm):85[116]/5,200-5,600
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):185[18.9]/1,500-4,000