ソニーとドコモ、5Gによる日本・グアム島間の遠隔運転実証へ


ニューコンセプトカート SC-1による共同実証実験に合意

ソニー株式会社と株式会社NTTドコモは3月27日、第5世代移動通信方式の利活用範囲を調査・検討していく。

具体的にはドコモがグアム島に開設した「ドコモ5GオープンラボGUAM」と、ドコモの100%子会社であるドコモパシフィック社が2019年夏以降に提供開始予定の屋外試験環境を活用。

ソニーが開発した「New Concept Cart(ニューコンセプトカート)SC-1」の遠隔操作実現に向けた共同実証実験を行うことで合意に達した。

この実験は、5Gの低遅延、大容量、高速の特長を活かし、およそ2500キロメートル離れた東京・グアム島間でソニー開発のカート車両を遠隔操作し、伝送速度の確認や操作品質評価などを検証する。

なお5Gを活用したソニーとの共同実証実験は、日本国内でも4Kディスプレイ対応デジタルサイネージシステムへ高精細映像をリアルタイムに伝送する共同実験を行っており、これに続き今回は2件目の実証となる。

ちなみに実証に利用するニューコンセプトカートSC-1は、AI×ロボティクス研究の一環として新たな移動体験の提供を目的に開発されたことが2017年10月24日に発表されたもの。

このSC-1は乗員の操作による運転に加え、先の通りでクラウドを介して遠隔からの操作でも走行が可能であり、人の視覚能力を超えるイメージセンサーを車両前後左右に搭載していることから、360度全ての方向にフォーカスが合された映像で周囲の環境を把握できる。

このため搭載したイメージセンサーの超高感度な特性と、内部に設置された高解像度ディスプレイにより、乗員が夜間でもヘッドライトなしに視認できるのが大きな特徴となっている。

また、イメージセンサーで周囲を捉えていることから窓が不要となり、代わりにその領域に高精細ディスプレイを配置することで、様々な映像を車両の周囲にいる人に対して映し出す。

さらにイメージセンサーで得られた映像をAIで解析することでインタラクティブに発信する情報を変化させることも可能だと云う。従って今回、グアム島の一般公道で試走させる場合、考え方として車両周囲にいる人の性別・年齢などの属性を把握。対象者に対した最適な映像広告を提供することも理論的には可能だ。

ちなみにこのSC-1はソニーが独自開発した融合現実感(Mixed Reality)技術も搭載。乗員がモニターで見る周囲の環境を捉えた映像に、様々なCGを重畳することで、従来の自動車やカートでは景色を見るだけであった車窓がエンタテインメント空間に変貌し、移動自体をより楽しめるようにしている。

なおSC-1にはイメージセンサーと共に、超音波センサーと二次元ライダー(LIDAR:レーザー画像検出と測距)を搭載。

ネットワーク接続されたクラウド側には走行情報が蓄積され、ディープラーニングで解析することで、最適な運行アシストに繋げると共に、車両に搭載した複数のセンサーからの情報をエッジ・コンピューティングで判断し、安全な走行をサポートする。

写真:学校法人沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)

なお開発にあたってソニーは、2017年9月より学校法人沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)のキャンパスに於いて、SC-1の実証実験を開始。

この実証実験はOIST Integrated Open Systems Unit(北野ユニット)との共同研究であり、各種走行試験に加え、太陽光など自然エネルギーの利用も含めた電力利用や、走行時の消費電力の低減及び最適化の考察などを行った。

北野ユニットとは、OIST教授の北野宏明氏が推進する再生可能エネルギーによる自律分散マイクログリッド・システムやモビリティ・システムなどの統合を基盤としたサステイナブル・アーキテクチャのプロジェクトである。

New Concept Cart SC-1の主な仕様は以下の通り
全長:3140mm × 全幅 :1310mm × 全高:1880mm
乗車定員:3名
走行速度:0~19km/h
搭載機器:
車内:49インチ 4K液晶モニター 1台
車外:55インチ 4K液晶モニター 4台
イメージセンサー 35mmフルサイズ Exmor R® CMOSセンサー 5台