LEXUS、新型LSの国内発表で自動運転に肉薄する運転支援技術を公表


トヨタ陣営傘下のLEXUS、先進の予防安全技術の醸成を背景に、いよいよ「交通事故死傷者ゼロを目指す」と宣言

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男、以下トヨタ)傘下のLEXUSブランドは6月26日、同ブランドが東京都内に於いて、来る2017年秋にリリースする新型LSの日本国内・発表披露会を実施。同車に搭載される最新の予防安全技術の概要を公表した。

LEXUS・新型LSと、同車開発のチーフエンジニアの旭利夫(あさひ としお)氏、並びにLEXUSインターナショナルプレジデント澤良宏(さわ よしひろ)氏

今回で5代目を迎える新型LSだが、初代は当時の常識を破る静粛性を打ち出し、世界の高級車マーケットに「静かさ」という新たな価値基準を打ち立てた今となっては時代の記念碑的車両だった。

今回の5代目は、その初代LSのDNAを引継ぎ、新開発の「GA-Lプラットフォーム」をベースとしており、世界に於いて競合がひしめくアッパークラスセダンマーケットで、一定の居住性を確保しつつ、昨今の流行であるクーペシルエットを、新たなLS上で仕立て上げた。

新型LSの主な予防安全技術

また上記に加えて、今モデルでは世界トップクラスの安全性の確保を目指して、最新鋭の予防安全技術の盛り込みに腐心した。

具体的には、これまでの予防安全パッケージとして実績を持つ「Lexus Safety System +」から、より高度な衝突回避支援と高度運転支援を盛り込んだ「Lexus Safety System + A」を日本・北米・欧州で導入。

さらに国内市場では、高速道路上での自動車線変更を可能とする「レーントレーシングアシスト」など、一部の機能の実現に関しては、おなじLSでも海外市場に先行し、日本国内のみで先端機能の披露を実現するなど、トヨタのお膝元であるここ日本市場で、LEXUSブランドの先進性をアピールしていく構えだ。

そんな新型LSの主な予防安全技術は以下の通り

予防安全パッケージLexus Safety System + A
従来の「Lexus Safety System +」でパッケージ化されたプリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、レーダークルーズコントロールに加え、自動ブレーキだけでは衝突を避けることが難しい場合、衝突事故防止に寄与する「アクティブ操舵回避支援(世界初)」、交差点での出会い頭事故の予防に寄与する「フロントクロストラフィックアラート」を追加した。

さらに車線維持・車線変更支援を可能にした高度運転支援技術「Lexus CoDrive」を採用した。

Lexus Safety System + A システム構成

新たに採用された先進の予防安全技術
また歩行者の存在する方向を表示する「歩行者注意喚起」、ブレーキ制御に加え自動で操舵を制御する「アクティブ操舵回避支援」も搭載している。

上記のうち「歩行者注意喚起」は、前方の歩行者と衝突する可能性があると判断した場合、大型カラーヘッドアップディスプレイに歩行者の存在する方向をアニメーションで表示し、直感的な認知を促すもの。

また「アクティブ操舵回避支援」は、自車線内に歩行者が存在したり、ガードレールのような連続した構造物と衝突する可能性が高い際にその機能が発揮されるもの。

具体的には、上記走行環境下でブレーキ制御だけでは衝突回避が困難、かつ操舵制御を行うことで回避ができるとシステムが判断した場合に限り、警報とブレーキ制御に加え、自動で操舵制御を行うことで、衝突回避あるいは衝突被害の軽減を支援する。

プリクラッシュセーフティ(歩行者注意喚起・アクティブ操舵回避支援)

ちなみに現時点での「アクティブ操舵回避支援」は、あくまでも自車線内のコントロール範疇に限られるため、左右に他車や障害物が存在しているなど現実的に操舵が不可能な場合は、ブレーキによる危機回避に徹する仕組みとなっている。

より高度な運転支援機能、技術の発展は今後進展するインフラ環境に合わせキャッチアップされていく

なお現段階で遠い将来は、高精度なGPS機能や、精緻な地図データ、現在は左右方向のレーザー等で捉えている対象物が、上下方向の落差や深さについても把握できるようになれば、より高度な操舵回避支援も可能になると云う。

さらに自動運転につながる高度運転支援技術としては、「Lexus CoDrive」レーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシストの基本機能に、レーンチェンジアシストを加えた3機能を連携させ、高速道路や自動車専用道においてドライバーの運転意図と調和した操舵支援や、レーンチェンジの運転支援を実現した。

加えてカーブが多い道や、渋滞時でもシームレスな運転支援により、ドライバーの運転負荷を大幅に低減することが可能とし、大型ヘッドアップディスプレイやマルチインフォメーションディスプレイなどと連携し、ドライバーに支援状況を分かりやすく通知する機能も付与されている。

レーントレーシングアシストでは、レーダークルーズコントロールの作動時に車線維持に必要な運転操作の支援を行うのだが、さらにナビゲーションの情報を基に、カーブへの進入速度が速い場合、注意喚起を促しながら自動で減速を行う。

ドライバーの意志と、車両の動きをシームレスに繋げていく、そんな技術を磨く

ちなみにこれらの機能実施時には、車両が「お節介的」に一方な走行制御を行うのではなく、自動制御の前後にドライバーへあらかじめ制御する内容を伝えるなど、車両の動きと、ドライバーの意志・心構えを促すような車両とドライバーの心理的な一体感が大切なのだと云う。

そうした意味では、トヨタの規定する「自動制御」とは、車両に対して走行制御を一方的に「任せる」のではなく、移動時(運転時)ドライバーの意志と、こまやかに連動するマシンインターフェイス造りが「運転支援機能」搭載の肝であるする。

ドライバー異常時停車支援システム
上下2段式アダプティブハイビームシステム

またフロントクロストラフィックアラートは、交差点での出会い頭事故を予防するため、前方の交差車両検知に対応。前側方レーダーにより、世界で初めて交差する車両が接近してくる方向を大型ヘッドアップディスプレイで注意喚起。

交差する車両が接近しているにもかかわらず、自車が前進しようとした場合には、ブザーとマルチインフォメーションディスプレイなどと連携し、ドライバーに警告を行う。

一部、視覚的な対象物認識には、ディープラーニング技術を活用

その他の予防安全技術では、既に商品化しているインテリジェントクリアランスソナー、リヤクロストラフィックオートブレーキに加えて、世界初となる対後方歩行者サポートブレーキを採用した。

パーキングサポートブレーキ(静止物、後方接近車両、後方歩行者)

これはリヤカメラで小さな幼児などの歩行者を検知し、衝突の危険がある場合には、警報およびブレーキ制御で衝突被害の軽減に寄与する。

この状態で車両がどうやって幼児を認識するに至ったのか、その経緯については、ディープラーニングによって幼児を含む膨大な歩行者の映像・画像を学習させることで、対象物の認識を確保したと云う。従って、4足歩行の動物や箱などの物体認識では作動しない仕組みだ。

サイドクリアランスビューは、車両前側を後ろから見たような映像を12.3インチワイドディスプレイに表示。狭い道でのすれ違いや路肩への幅寄せ時に、車両側方の隙間をより直感的に確認できる。

コーナリングビューは、サイドクリアランスビュー表示中に、旋回時の運転操作に合わせて自動で車両の斜め後方から見たような映像を表示。狭い道で右左折時の安全確認や、車道に出る時の縁石乗り上げ防止をサポートする。

今後は未来の自動運転車の姿に、ひとつの回答を打ち出していく

いずれにしてもトヨタ陣営は、この新型LSで自動運転の基礎部分を攻略し、今後10年という時間のスパンのなかで、真の自動運転車を現実のもとする手応えを掴んだようだ。

それは、世界シェアで1・2を争う巨大メーカーゆえに影響力が大きい。なぜならトヨタが真の確信を持ったなら、世界各国を走る膨大なトヨタ車が、相次いで自動運転機能を搭載していくことにつながるからだ。

これまで、その動きはとても慎重であったし、現在も、新型LSの搭載機能を「運転支援機能」と謳っているところにその思惑と途惑い、そして慎重さが如実に表れている。

今後、トヨタが自身で考える「自動運転車の姿」をどう定義付けるのか。その行方は、まさに「明日の自動車の姿がどのようになるか」、そのひとつの回答になっていくのだろう。(坂上 賢治)