JAF(一般社団法人日本自動車連盟・本部所在地:東京都港区、会長:矢代隆義、以下、JAF)は、後部座席(以下、後席)でのシートベルト着用有無による衝突実験を行い、その結果を5月16日よりホームページに公開した。
後席でのシートベルト着用は2008年に義務化されたものの、一般道路における後席のシートベルト着用率は36%と未だに低い状況にある(着用率は、2016年の警察庁とJAF合同調査による )。
そこで、座席にダミー人形(以下、ダミー)を乗せた車をバリア(障壁)に衝突させ、ダミーの挙動と頭部傷害基準値(HIC※1)を計測。後席でシートベルトを着用する重要性を検証した。
シートベルトを着用していない後席ダミーがシートごと運転席ダミーを押しつぶした。
実験結果は、シートベルトを着用していない後席ダミーが前方に投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付け、さらにシートごと運転席ダミーを押しつぶした。
その際のシートベルトを着用していない後席ダミーのHICは2192まで上昇し、シートごと押しつぶされた運転席ダミーのHICも1171と高くなった。
※このHICは、衝突や転倒による衝撃が脳に及ぼす影響度を示す目安。HICが1000を超えると、頭部に重大な損傷が発生する可能性がある。さらにHICが2000を超えると、死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う可能性が高くなる。
一方、シートベルトを着用していたダミーは、シートベルトで上体をしっかりと拘束されていたため、投げ出されることはなかった。
後席でシートベルトを着用しないと、本人が死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う可能性が高いだけでなく同乗者にも衝突して致命傷を負わせる危険性があるため、一般道路でも後席で必ずシートベルトを着用することが重要である。
JAFでは、「運転者は、前席だけでなく後席に乗者する方にも必ずシートベルトの着用を促すようにしてください」と呼び掛けている。
近年、車の安全性能は向上しているが、乗員がきちんと安全対策をしていなければその機能を100%発揮することはできない。JAFでは、乗車した際の安全対策の一つとして、後席でもシートベルト着用するよう強く呼びかけていくとしている。
【実験詳細について】
内容:車の前面全体をバリア(障壁)に衝突させる方法(フルラップ前面衝突試験)で、後席でシートベルトを着用する重要性を検証した。
方法:車の前席及び後席にダミーを各2体乗せ、後席運転席側のダミーのみシートベルト非着用とし、速度は55km/hで衝突した時のダミーの挙動と頭部傷害基準値を計測した。
結果: シートベルトを着用していない後席ダミーは前方に投げ出されました。さらに運転席のヘッドレストに頭を強く打ちつけ、シートベルトをしている運転席ダミーを押しつぶした。運転席ダミーは後方から押しつぶされてしまったことで、膨らんだエアバックとの間に挟みこまれた。
この時の後席ダミーの頭部傷害基準値は2192と、死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う可能性が高いことが判った。また押しつぶされた運転席ダミーは1171と、死につながらなくとも頭部に重大な損傷が発生する可能性が高く、シートベルト着用の重要性が明らかとなった。
一方、シートベルトを着用している後席ダミーはしっかりと固定され、前方に投げ出されることはなかった。
実験の詳細や動画は以下の通り
ユーザーテスト 資料編:http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/collision/detail1.htm
動画編:http://movie.jaf.or.jp/details/188.html