位置情報サービスのHERE、屋内地図提供の米企業マイセロを買収


かつてのノキアからドロップアウトした位置情報サービスのHERE Technologies (本社:オランダ・アムステルダム、CEO:エザード・オーバーベック)は1月24日(米国時間・サンタクララ)、カリフォルニア州に本社を置く株式非公開のソフトウェア企業であるMicello(マイセロ)社の買収契約に署名したと発表した。

このMicelloとは、屋内地図を作成・編集・公開するプラットフォーム環境を提供する企業で、彼らが提供するサービスは屋内版GoogleMapとして2010年頃からIT業界から注目を集めていた。

そのコンセプトは、例えばGoogleMapなどのデジタル地図を用いて目的地に行き着いて以降、さらにショッピングモールなどの建物のなかで、行きたい店を探す際に利用するもの。

創業は2007年8月で、約2年の開発期間を経て2010年の1月にスマートフォンのiPhone向けサービスを開始。同じ年の5月にはAndroidにも対応。夏以降からは米国外でのサービスも開始している。

同社のビジネスモデルは、先の通り商業施設や店舗等からプロモーション費用として対価を得ていくスタイル。従って屋内地図には、店舗の詳細情報も登録可能となっている。

今日、Micelloの製品群には、世界中の地図データベース、開発者向けのプラットフォーム/SDK、統合済みソリューションのマーケットプレイスがある。また過去数年間でMicelloは世界で25,000以上の建物の屋内地図を生成した。

本社はカリフォルニア州サンタクララ。さらにインド (アフマダーバード) と日本 (日本マイセロ株式会社、東京都千代田区) に拠点を構えている。

これを踏まえた今回のHEREによる買収計画は、屋内と屋外の両方で世界最高水準の地図と高度な位置情報サービスを提供するというHEREの戦略に基づくもの。

屋内地図と、HERE独自のトラッキング技術の組み合わせにより、例えば一般消費者向けサービスだけでなく、ビジネス利用に於いても工場内の部品のトラッキング、作業スペースの利用の最適化、複雑な乗り継ぎの案内、目的地に近づいてからのナビゲーションなど、新たなビジネスソリューションが実現するとHEREでは語っている。

先の通り2007年に、ファウンダーのAnkit Agarwal氏が設立したMicelloの理念は、屋内のすべてを地図化することにある。同社のプラットフォームを使用することで、建物の所有者と管理者が屋内地図を作成/編集し、セキュアに公開することができる。

またMicelloのマーケットプレイスでは、大手テクノロジー企業がMicelloの屋内地図を多様な顧客向けアプリケーションにシームレスに統合することができる。

Micelloのマーケットプレイスではすでに、IoT、分析、公共安全、施設管理ソフトウェア、エンタープライズ向けアプリケーションなど、複数の市場カテゴリーで75以上の主要業界用ソリューションを取り揃えている。

今日、Micelloの取引先には、北米の多くのフォーチュン500企業のほか、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアおよび日本の企業や法人が含まれる。

企業の社屋、ショッピングモール、空港、博物館/美術館、会議センター、病院、駅、スタジアムなどの建物の屋内地図は、急速に成長中の分野であり、デジタル地図プロバイダーにとっては、競合他社との差別化を図るうえで大きな要素である。

初期のデジタルマップは、位置情報に基づく多くのアプリケーションを誕生させた。そして今、屋内地図の普及が、屋内環境に対応した新しい世代の位置情報認識アプリケーションを実現させようとしている。

これらのサービスの拡充についてHEREのIoT部門シニア・バイスプレジデントであるLeon van de Pas氏 (レオン・ヴァンデパ) は、「Micelloの買収は、当社パートナーのエコシステムを拡大し、屋内地図の普及を促進するための重要な戦略的投資です。グローバルなMicelloのチームをHEREに迎えられることをうれしく思います」と述べている。

対してMicelloの最高経営責任者 (CEO) であるAnkit Agarwal氏は、「これは、Micelloとそのチームにとって非常に有望なチャンスです。屋内地図に対するHEREの投資は、当社のお客様やマーケットプレイスパートナーにも大きなメリットをもたらすでしょう。

HEREの一員として、マーケットプレイスのパートナーを増やし、屋内のすべてを地図化するという私たちの使命を果たしたいと思います」と話している。

ちなみに両社は、契約条件を非公開とすることで合意しており、買収手続きは、慣習的な買収完了条件を満たした後、2018年第1四半期に完了する見込みとしている。これらの契約締結の手続きの完全終了を以て、MicelloはHEREのIoT事業部門の一部となる見込みだ。