5Gの「次世代通信」と云う冠が外れる日が遂に到来
3GPP(移動通信システムの規格策定を行う標準化団体・Third Generation Partnership Project)が、2018年6月14日(木曜)に実施した3GPP Plenary(世界の移動通信システム仕様策定会合・Third Generation Partnership Project, Plenary)に於いて、遂に5G NR(5Gの要求規定・5G New Radio)の標準仕様が決まった。
この仕様策定で、2017年12月に完了していたノンスタンドアローン35G NR標準仕様(LTEとの連携を含む規定)に、スタンドアローン45G NR標準仕様(LTEとの連携せず単独で動作する機能)を加えた、5Gの主要機能の全仕様が初めて規定されることになった。
この「5G」とは、「4G(LTE)」の後継となる第5世代移動通信のことを指す。その実力は、10Gbps級とされる超高速通信速度にタイムラグが極端に抑えられる数ms級の低遅延。さらにIoT時代の本命とされる数多くの機器への同時接続が実現することから、社会構造を大きく変える通信技術として期待されている。
具体的には、「AIの広域利用」や「自動運転の加速化」「ロボティクス社会の実現」など昨今持てはやされている自動車業界のみならず、多種多様な産業をゼロから再定義する程のインパクトを秘めている。
これを受けて、China Mobile、アンリツ株式会社、Asia Pacific Telecom、AT&T、British Telecom、CAICT、CATT、China Telecom、China Unicom、Chunghwa Telecom、Deutsche Telekom、DISH Network、Ericsson、富士通株式会社、Huawei、Intel Corporation、InterDigital、Keysight Technologies、KDDI株式会社、KT Corp、京セラ株式会社、Lenovo、LG Electronics、LG Uplus、MediaTek、Microelectronics Technology Inc.、三菱電機株式会社、日本電気株式会社、Nokia、株式会社NTTドコモ、OPPO、Orange、パナソニック株式会社、Qualcomm Technologies, Inc.、Rohde-Schwarz、Samsung Electronics、シャープ株式会社、SK Telecom、ソフトバンク株式会社、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社、Spirent Communications、StarPoint、住友電気工業株式会社、TIM、Unisoc、Verizon、VIAVI、Vivo、Vodafone、Xiaomi、ZTEの51社は、5Gの商用展開に向けて様々な業界との連携を加速させ、新たなビジネスを創出していくという宣言を国内外に向けて発表した。
上記の通り、LTE連携並びに単独動作を含む初版策定が完了したことを踏まえ、今後、5Gの要求条件を満たす無線方式「5G NR」の開発がより一層加速されることになる。
実際、クアルコムやインテルは、5G対応のスマホ向け商用モデムを既に発表していることから、海外では、早々に5Gの大規模トライアルや商用展開も政府管轄や地域で、いち早く2019年中に開始されることになるだろう。そのうち5Gに対応するスマートフォンも年内に披露される。
もっと平たく有り体に云えば、この策定完了により、もはや「5G」は「次世代の通信方式」ではなく、現在進行形の通信方式になるということだ。
そんな5Gの要件には以下の3つの討議スコープが存在していた。それは、高速大容量のを実現するeMBB(enhanced Mobile Broadband)、超高信頼低遅延を可能とするURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、そして大量な端末による通信を実現するmMTC(massive Machine Type Communications)である。
上記を踏まえ早々に、「Release 16」として大量な端末による通信を実現するmMTC策定が予定されていることから、3GPPはその策定完了に向け引き続き協議が重ねられる。
ちなみに今日まで5Gの弱点だと云われていたのは、俗に「ミリ波」とも呼ばれる高い周波数の電波を利用するゆえの特性にあった。つまり電波の直進性自体は高いものの、遠くへの発信や、回り込みに弱いとされていたこと。これはそもそも電波は、その特性上、周波数が低いほど障害物の背後に回り込み、遠くに届く性質があるからだ。
しかしこの5G NRの策定で次世代の基地局は、特に都市部では既存の4Gより密に配置され、通信を高速化するための広い帯域幅(100MHz幅で1キャリア)を充分に確保できるようになる。
また技術的にも、既存の4Gの基地局数であったとしても大半をカバーできるまで技術レベルが進化している上に、既に1Gbps以上のスループット(一定時間に処理できる情報量)が実現出来ていることから、自動車業界に於いても、コネクテッド関連にまつわるサービスが加速度的に浸透していくものと見られている。(坂上 賢治)