固体充電式電池(ASSB)の開発で著名なソリッドパワー社(本社:コロラド州ルイビル、CEO:ダグ・キャンベル)は米国東部・夏時間の2019年4月11日、米フォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company、本社:米ミシガン州ディアボーン、CEO:ジム・ハケット)との技術提携を発表した。
このソリッドパワー社は、2012年にコロラド大学ボールダーのスピンアウト事業としてコロラド州ルイビルのコロラドテクノロジーセンターで設立された技術ベンチャー企業だ。
同社が研究開発を進める固形電池は、現行のリチウムイオン電池に比べ、エネルギー面、安全面で基礎性能を大きく上回る可能性があり、同電池の量産化技術では米業界のトップを走っている。
2017年12月に同社は、BMW グループと広範囲に及ぶ提携を結んで電気自動車用の固体電池開発で合意しており、今フォードとの提携は、昨年2018年後半に発表された投資ラウンド(2,000万ドル)に起因するフォード車搭載用の固形電池開発に関わるもの。
ちなみにこの投資ラウンドには、フォード以外にもVolta Energy Technologies、Hyundai CRADLE、Samsung Venture Investment Corp.、三桜工業株式会社、Solvay Ventures、A123システムズなども関わっている。
同社が開発を進める固体充電式電池の優位点は、既存のリチウム電池のような可燃性液体電解質を使用していないことで揮発性・可燃性・腐食性に強い耐性があるため、車両搭載時の安全性が高まることにある。
これにより電池パックの低コスト設計が可能となり、安全装置と安全機能に関わるコストの大幅削減が可能となる。また電池パックの冷却も原則不要だ。
なお現在のリチウムイオン電池に比べ、1.5倍高エネルギー(設計の簡潔さにより、モジュールレベルおよびパックレベルで増加する可能性がある)という属性も備えている。
今提携に際してフォード・モーターのリサーチアンドアドバンストエンジニアリングバイスプレジデント兼最高技術責任者、ケン・ワシントン氏は「全固体電池のテクノロジーは、より安全で高性能な電気自動車開発に役立つ可能性を秘めています。
ソリッドパワー社に関与することで、当社はこれからのスマートワールドに向けたスマート電気自動車の設計および統一を一変させる可能性を持つ重要な新技術の共同作業を進めることができます」と話している。
一方でソリッドパワー社の共同創設者でCEOのダグ・キャンベル氏は「フォードのような企業は自動車産業を変革する動きの一部となっており、協力していけることを光栄に思います。
ASSBは未来に向けて、より大きなエネルギーを提供する可能性を秘めています。つまり充電1回あたりの稼働時間が長くなり、電気自動車の場合は完全充電すれば、これまでよりも長距離走行が可能になるからです。
最先端の陰極を金属リチウム陽極と組み合わせることで、ASSBは現行のリチウムイオン電池に比べセルレベルで50%の増大が達成できます。
もちろん、より高度化した陰極でさらにエネルギーを改善することも可能ですし、これもまたソリッドパワー社の開発分野です。
この改善エネルギーが持つ潜在的可能性のために、ASSBは運輸関係にとどまらず、航空宇宙産業、医療機器、防衛など、多様な市場から高い注目を受けています」と語っている。
ソリッドパワー社は目下、メガワット級の全固体電池量産を目指して2019年半ばの完成を視野に入れている。今提携を踏まえ、2019年第2四半期の完全稼働を目指す同社は、安定した生産性が得られるとされる全自動ロールツーロール方式設備の完成を推し進めている。