日産自動車が先の5月28日に発表した2020年3月期連結決算は、先の関連記事掲載の通り、前期3191円の黒字で踏み留まっていた純損益が、一転して11年振りで6712億円の赤字となった。世界販売も7年振りの500万台割れとなる493万台に落ち込んでいる。
これを受けて同社は、国際規模での生産能力削減を筆頭に大幅な構造改革策に舵を切る。それに伴い自社生産能力から約20%余剰削減を達成するべく、インドネシアやスペインでの生産拠点の撤退を決めた。(坂上 賢治)
その情報は日産がこれまで最大5,200人もの生産従事者を雇用してきたスペインへも早々に伝わり、今年末に閉鎖計画が実行される見込みのバルセロナでは、5月4日の生産再開を前に早くも無期限ストライキに突入していた工場労組による集会が行われ、バルセロナ工場前ではタイヤを燃やす、隣接の高速道路を一時占拠するなどして、抗議の意を示すシュプレヒコールを挙げた。
ちなみに当地に於ける車両生産の従事者はおよそ3000人。さらに日産工場からの発注を請け負うモンカーダなどの傘下に連なる日産管理外の生産拠点を含めると、少なくとも、その影響は述べ3万人の労働者に波及する。
なお同国内に於ける日産の生産施設は、内陸部カスティーリャ・イ・レオン州アビラと、同国北部に位置するカンタブリア自治州にも自動車部品の生産拠点を持っているものの、これらの拠点は今回の再編計画には含まれていない。
今回削減対象となったバルセロナ工場に関して日産側では、新型コロナウイルスの感染拡大前から生産稼働率が25%を下回っていたとしている。
対して労働者委員会のウナイ・ソルド事務局長は、撤退するよりも小規模な追加投資を行い、現地で新たな車両を生産する方が理に叶う筈だと訴え、約10億ユーロ(およそ1200億円)に上ると見積もられている解雇補償や補助金の返還を含む工場閉鎖に掛かる巨額の費用は、同氏が提案している〝雇用維持のために工場設備を刷新する手段〟よりも高くつくと述べた。
またスペインのレジェス・マロト産業・商務・観光相は、現地労組や生産スタッフ達の主張を受け入れ、撤退後の雇用維持を確保するべく全力を尽くすと話している。しかし日産の現地マネジメント側は、こうした働き掛け対し工場閉鎖に伴う具体的な解決策に関して、応えることは一切できないとしている。