トヨタ自動車、豊田市・元町工場でハイブリッド発電システムの実証運転を開始


固体酸化物形燃料電池とマイクロガスタービンを組み合わせた加圧型複合発電システムで、総合効率(65%)と高発電効率を達成

トヨタ自動車株式会社(本社 : 愛知県豊田市、代表取締役社長 : 豊田章男、以下トヨタ)は、固体酸化物形燃料電池(以下、燃料電池)と、マイクロガスタービンを組み合わせた加圧型複合発電システム(以下、ハイブリッド発電システム)を、愛知県豊田市の元町工場敷地内に設置して実証運転を開始した。

この固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)は、電解質としてイオン電導性セラミックスを用いており、作動温度は700~1,000℃。対してマイクロガスタービン(MGT : Micro Gas Turbine)は発電出力が小さい小型ガスタービンを使用している。

今実証は、同システムを工場の自家発電設備として使用し、エネルギー効率、運転性、耐久性の総合力を検証・評価する目的を内包している。

上記、組み合わせによるハイブリッド発電システムは、具体的には天然ガスを改質して取り出した水素と一酸化炭素を使い、燃料電池とマイクロガスタービンのそれぞれで発電する二段階の発電機構を採用。

そこから生まれる定格出力は250kWとなっている。加えて、発電で生じる排熱を、エネルギーとして活用するコージェネレーション(熱電併給)も採用・組み合わせた。

これらを介した二段階の発電によって、発電した電力量から所内電力(発電に必要な補器の動力)を差し引いた電力量に相当する高い発電効率(55%)を達成。

さらにコージェネレーションの採用により、総合効率(65%)を高める等、同システム構成は、トヨタ自動車として低炭素社会実現に向けた有効な技術と位置付けている。

なお、発電された電力と排熱は、元町工場内で使用される。

以下の図は「ハイブリッド発電システム」の概要

(図中、数字指定の個々段階に於ける流れを説明したもの)1.天然ガス(CH4)を燃料電池内で改質し、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を取り出す。⇒  2.マイクロガスタービンから送り込まれた加圧空気の酸素(O2)と水素・一酸化炭素の化学反応により、燃料電池で発電する。 ⇒ 3.燃料電池での発電に使用しなかった排燃料(水素など)と高温・高圧排気を、マイクロガスタービンへ送る。 ⇒ 4.マイクロガスタービンで排燃料を燃焼させ、タービンを回して発電する。 ⇒ 5.燃焼によって生じる排ガスから排熱を回収する。

ちなみに今回導入したハイブリッド発電システムは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のマイクロガスタービンで排燃料を燃焼させ、タービンを回して発電する「円筒形SOFC-マイクロガスタービンハイブリッドシステムの市場投入に向けた技術実証」の一環として実施するもの。

最終排出手前の排熱回収ボイラでも、燃焼によって生じる排ガスから排熱を回収するという効率さを実現した。

システムはトヨタおよび、トヨタ子会社である株式会社トヨタタービンアンドシステムと三菱日立パワーシステムズ株式会社が共同開発した。

トヨタは、今回のハイブリッド発電システムの導入と実証結果などを踏まえ、工場内での効率的水素活用技術の開発と導入を進め、2015年に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の一つである、「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向け、工場CO2排出量低減の取り組みを着実に進めていく。

今採用の燃料電池と既存開発システムとの違いは以下の通り

  • 固体酸化物形燃料電池
    – 作動温度:高温(700℃~1,000℃)
    – 用途:小規模(家庭用)から大規模(工場電源)まで幅広い
    – 特徴:
    ・高い発電効率
    ・触媒に白金が不要

 

  • 固体高分子形燃料電池
    – 作動温度:低温(70℃~90℃)
    – 用途:小規模(家庭用、自動車電源)に適する
    – 特徴:
    ・作動温度が低温
    ・起動と停止が容易

NEDOホームページ:http://www.nedo.go.jp/