ウィラーとモービルアイ、自動運転技術の広域展開で協業


旅行業を中核にMaaS事業を展開するWILLER(本社:大阪府大阪市、代表取締役:村瀨茂高)と、インテル子会社で世界でいち早く先進運転支援システム(ADAS)をシステム化したモービルアイ(本社:イスラエル エルサレム、CEO:Amnon Shashua)は7月8日、日本・台湾・ASEAN地域を対象にロボタクシーソリューションに係る事業を提供していくべく戦略的パートナーシップを結んだと発表した。(坂上 賢治)

まず両社のプロジェクトは、日本でモービルアイの自動運転技術を用いた実証実験からスタートさせ、次いでロボタクシー(完全自動運転で無人運行するタクシー)や、自動運転シャトル(完全自動運転によるオンデマンド型シェアサービス)による本格的な事業化へと繋いでいきたい意向だ。

そのためには、それぞれの強みを活かし、モービルアイが〝自動運転技術と自動運転車両の提供〟を。WILLERが〝それぞれの地域やユーザーに合わせたサービスデザイン〟と〝各地域に於ける規制要件の整理〟、そして〝モビリティの管理・運行会社向けのソリューション開発〟を担っていく。

その第一歩としては来年2021年に、日本の公道上で自動運転走行を可能にするロボットタクシーの実証実験をスタート。2年後の2023年には、完全自動運転でのロボットタクシー事業と自動運転シャトルのサービス事業を立ち上げ、さらにその活動を台湾やASEANへと広げていく予定としている。

こうした取り組みについてインテル コーポレーション上席副社長で、モービルアイ社長 兼 CEO(最高経営責任者)のアムノン・シャシュア氏は「モービルアイが拡大中のグローバルモビリティネットワーク及びエコシステムパートナー構築を拡大させていくために、WILLERとの協業合意は非常に重要な意味を持っています。

日本・台湾・ASEAN市場でWILLERと共に自動運転技術を活用した新しいモビリティを提供していけることを我々モービルアイ陣営は非常に楽しみにしています。実際、双方が互いに協業していくことで、MaaS展開を精力的かつ、より大きく前進させていけると考えています。

そもそもモービルアイが完全なモビリティ・プロバイダーになる意思を表明して以来、当社は世界中の自治体、交通事業者、モビリティテクノロジー提供企業と協業を開始し、主要な市場の一部では自動運転技術を提供する取り組みを今も続けています。

例えば、韓国テグ市とはロボタクシー事業を開始することで合意しました。イスラエルではフォルクスワーゲン社・チャンピンモーターズ社と合意し、3社で合弁企業を設立し、自律走行車を用いたライドヘイリングを実施する予定です。これと同じくWILLERとの協業合意を切っ掛けに、これまで構築してきているMaaSの取り組みを大きく拡大・強化させていけるものと考えています」と述べた。

対してWILLER代表取締役の村瀨茂高氏は「モービルアイとの今回のコラボレーションが、WILLERの目指す〝行きたい時に、行きたい場所へ行ける移動〟を実現可能にする協業であり、非常に価値が高い協業であると考えています。

数年先、便利で環境に優しい新たな移動ソリューションが創造され、それによってシティバリューを上げる“場所”と“移動”に変革が起き、これまで以上に人と人、人とまちが繋がる豊かなコミュニティが創造されていくことでしょう。

そうしたなかで我々WILLERは、日本・台湾・ASEANに於いて、それぞれの交通事業者が提供するであろうサービスを、共通化したひとつのサービスとして利用できるようにしていくことを目指しています。

そんな試みのスタートとして既に日本では2019年にMaaS Appをリリースし、2020年からはQRシステムによる鉄道や路線バス等の決済を可能にしています。また交通プラットフォームとして、日本では既に約150社の交通事業者と連携しており、台湾では都市間バス最大手の国光汽車客運と、ベトナムではタクシー最大手のマイリンとジョイントベンチャーを設立しました。

さらにシンガポールでは、カーシェア最大手のCar Clubに出資しています。そうした過去からの活動を前提として今回のモービルアイとの協業締結により、これらの交通プラットフォームへも自動運転技術による新たなモビリティサービスを拡充させることで、それが各国のお客様へ新たに利便性の提供と共に、移動に伴う大きな変革をもたらすことができると考えています」と語った。

結果、今回の両社のコラボレーションは、高速バスや鉄道、カーシェアリングなどの既存のビジネスポートフォリオに新しい交通サービスをもたらすという。そしてそれは、これまでの交通サービスで社会課題になっている環境改善や交通渋滞の削減。ひいては交通事故の撲滅に繫がっていくとし、高齢化社会へと向かう日本ではドライバー不足などの改善にも貢献していけるだろうと結んでいた。