ルノー・日産・三菱自動車工業の3社連合、5年間で10億ドルの先行投資へ


3社連合の投資ファンドは、自動車業界で最大の企業ベンチャーキャピタルとなることを目指す

ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社によるアライアンスは、1月9日、オープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立し、今後5年間で最大10億ドルを投資すると発表した。

同ファンドは初年度、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティ、人工知能などの新たなモビリティに焦点を当てている新興企業や、技術起業家が参加するオープンイノベーションのパートナーシップを対象に最大2億ドルを投資する予定としている。

さらにその後も毎年投資を行うことにより、Alliance Venturesは昨年発表した戦略的中期計画「アライアンス2022」の期間中、自動車業界で最大の企業ベンチャーキャピタルとなることを目指す。

この新設されたAlliance Venturesを率いるのは、20年以上にわたる投資銀行での業務経験と、6年以上にわたるアライアンスでの経験を持ち、直近ではブラジル日産の社長を務めたフランソワ ドーサ氏が担う。

Alliance Venturesのチームはその専門知識と、ルノー、日産自動車、三菱自動車から集結したエキスパートから成るクロスファンクショナルチームにより見出された事業機会を活用していく。

同ファンドは、シリコンバレー、パリ、横浜、北京にあるアライアンスメンバーの技術研究センターや、強固なイノベーションエコシステムを有するエリアの近くに拠点を設ける予定だ。

出資比率はルノー、日産自動車はそれぞれ40%ずつ、三菱自動車は20%を新ファンドに共同出資し、投資判断や業績管理を行う専門の投資委員会を設置する。

クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティ、人工知能などのオープンイノベーションへの優先投資を行う

アライアンスの会長兼CEOであるカルロス ゴーン氏は、「このオープンイノベーションに対する取り組みにより、我々はアライアンスのグローバルなスケールメリットを生かしながら、新興企業や技術起業家に投資し、協業することが可能となります。

このファンドはまさにアライアンスの核である協働の精神と起業家のマインドセットを反映したものです。」とコメントしている。

この3社によるアライアンスは、10のブランドを有し、2017年には1,000万台以上を販売し、主要な自動車市場すべてで事業を展開していると謳っており、Alliance Venturesの特長は、このアライアンスのグローバルな規模とスコープの広さを、潜在的パートナーに対して提供することにあるのだと云う。

またAlliance Venturesは新興企業に投資することにより、財務リターンを確保しながら、新技術や新ビジネスをアライアンスに取り入れることが可能とする。

加えて新規事業の立ち上げにおけるあらゆる段階で戦略的な投資を行い、新たな自動車関連起業家の輩出や新規のパートナーシップを創出していく構え。

最初の投資先は、コバルトフリーの全固体電池素材を開発する米国企業のアイオニック・マテリアルズ(Ionic Materials)社

そんなAlliance Ventures の最初の投資先は、コバルトフリーの全固体電池素材を開発する米国企業のIonic Materials社になる。

Ionic Materials社はマサチューセッツ州を拠点に自動車および多様な用途に使われる高密度エネルギーバッテリーの性能およびコスト競争力向上を可能とする固体高分子電解質を開発している。

Ionic Materials社の株式取得は、研究開発協力を目的とした同社とアライアンスの共同開発契約の締結時に行われる。

このような投資を行うことで、Alliance Venturesはアライアンスのメンバーが将来使用する可能性がある新技術の特定と開発の後押しをしていく。

新興企業への呼び水としての役割も担う新法人は初年度2億ドルを次世代モビリティに対して資本投下していく

なお3社連合によるこの取り組みはルノー、日産自動車、三菱自動車の協業を強化し、2022年末までに年間100億ユーロ以上のシナジー創出を目指す戦略的中期計画「アライアンス2022」の目標達成を支えると述べている。

ちなみに同ベンチャーキャピタルへの最初の2億ドルの投資は、年間85億ユーロを超えるアライアンスの研究開発費とは別枠で実施される予定。

この投資活動はアライアンスの戦略を補完するもので、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティなどの分野での収益増、コスト削減、コスト回避を目指す。

アライアンスは、「アライアンス2022」の期間中、EV用の共通プラットフォームおよび共用部品を活用し、100%EVを12車種投入する計画のほか、40車種への自動運転技術搭載と、無人運転車両による配車サービス事業への参画も目指しているとする。また、ベンチャーキャピタルの専門家を採用し、同事業のプラットフォーム開発を行っていく。

中期計画「アライアンス2022」に於いて、ルノー、日産自動車、三菱自動車は、3社合わせた年間販売台数は1,400万台以上に、また、売上高は2,400億ドルに達すると見込んでおり、今後、新技術や新たな視点が求められる事業社業界に新興企業を呼び込むこともひとつの目的としているものと見られる。

アライアンス2022:https://www.alliance-2022.com/ (英語サイト)