日産自動車、自前のバッテリー事業を売却し電気自動車(EV)開発の自由度を高める


日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:西川廣人)は8月8日、日産自動車が保有しているバッテリー事業と、バッテリー生産工場を、中国資本の民営投資会社GSRキャピタル(以下GSR)に譲渡する株式譲渡契約をGSRと締結した。

譲渡先のGSRは、北京・香港及びシリコンバレーに拠点を持つ大手の民営投資会社である。

GSRは、現時点の事業の柱として電気自動車、新エネルギー、現代農業、医療および無線技術などの高成長分野への投資に焦点を置いている。

この譲渡契約の対象となるバッテリー事業には、日産の連結子会社であるオートモーティブエナジーサプライ株式会社(以下AESC)、北米日産会社が保有するスマーナ(米国)のバッテリー生産事業。

さらに英国日産自動車製造会社が保有するサンダーランド(英国)のバッテリー生産事業に加え、日産のバッテリー事業に関連する追浜・厚木・座間の開発・生産技術部門の一部も含まれる。

つまり日産自動車は、これによって自前のバッテリー事業の殆ど全てを手放し結果、電気自動車(EV)開発に専念するとしている。

一方で、車両開発・製造に於ける自由度を高め、例えば車両構成上の必要とするバッテリーユニットの調達について、これまで以上に自由な選択肢を持つことへと繋げていく可能性もある。

この譲渡契約について、日産自動車の社長の西川廣人氏は、「本日の発表は、日産とAESC双方にとってウィンウィンとなるものです。

AESCは、GSRの幅広いネットワークや積極的な投資を活用し、新たな顧客の獲得により、その競争力の向上が可能となります。

また、これは日産にとってはEVの競争力の更なる強化にもつながります。

AESCは引き続き当社の重要なパートナーでありつづけ、日産は市場をリードするEVの開発及び生産に専念することができます」と述べている。

一方、GSRの会長のソニーウー氏は、「AESCの取得は、新エネルギー自動車産業に関わる当社にとって重要な一歩となります。

私たちは、R&Dへのさらなる投資を行い、米国、英国および日本で既存生産能力を拡大していきます。

また、中国および欧州に新たな工場を建設し、世界中にお客さまへより良い製品を提供していきます。

AESCが持つ優れた労働力、高い技術力、実績ある高い製品品質に加えて、これらの計画を実施することで、私たちは成長に向けた体制を整えていきます」と語っている。

なおGSRへ経営権移転後も、座間、サンダーランド、スマーナのバッテリー生産工場を含む各施設に勤務する現在の全従業員は引き続き雇用されるとしている。また新会社の本社および開発拠点は引き続き日本となる予定だと云う。

一方で、先のソニーウー氏の談話にある通り、中長期的にはGSRが、AESCの生産設備の一部を湖北省に移す可能性も充分あり得る。

と言うのは、湖北省政府はクリーンエネルギー分野に5470億元(約9兆円・記事上稿時換算)の投資を最近決めているからで、今後、中国は成長するEVマーケットのリーディングカントリーを目指している。

今後の目に見えている予定とその推移としては、日産が第一段階として2007年に設立した高性能リチウムイオンバッテリーの開発・生産を担うAESCの株式のうち、日本電気株式会社(以下NEC)およびNECエナジーデバイス株式会社が保有する49%を取得することでAESCの全株式を取得する。

他方、NECは同日に於いて、同社が保有するAESC株を日産に譲渡すると共に、バッテリー及び電極の開発・製造を行う同社の子会社NECエナジーデバイス株式会社を、GSRに譲渡する交渉を行っている旨を発表している。(※・下記参照)

オートモーティブエナジーサプライ株式会社(AESC):http://www.eco-aesc-lb.com/aboutus/company/ 

 

(※)持分法適用関連会社株式の譲渡に伴う譲渡益の計上に関するお知らせ

日本電気株式会社(英文:NEC Corporation、本社:東京都港区、執行役員社長 兼 CEO:新野 隆)は、当社および当社子会社のNECエナジーデバイス株式会社(以下「NECエナジーデバイス」)が保有するオートモーティブエナジーサプライ株式会社(以下「AESC」)の全ての株式を日産自動車株式会社(以下「日産」)に譲渡する株式譲渡契約を日産およびNECエナジーデバイスとの間で締結いたしました。

なお、日産は、同社が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、民営投資会社GSRキャピタル(以下「GSR」)に譲渡する株式譲渡契約を締結しており、当社およびNECエナジーデバイスが譲渡するAESC株式を同社が保有するAESC株式とともにGSRに譲渡する予定です。

本件株式譲渡は、下記1.に記載の条件が満たされることを条件としておりますが、本株式譲渡を実施した場合、譲渡益が発生しますので、下記のとおりお知らせいたします。

株式譲渡の経緯
当社は、日産との共同出資により自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、製造、販売を行う合弁会社AESCを2007年4月に設立しました。

また、当社は、リチウムイオン電池とその電極の開発、製造、販売、保守を行うNECエナジーデバイスを2010年4月に設立しました。AESCのリチウムイオン電池は、NECエナジーデバイスが製造する電極を採用しており、電気自動車の日産リーフなどに搭載されています。

当社は社会ソリューション事業に注力しており、スマートエネルギー分野では、電力系統網の安定化や企業のエネルギー利用の効率化などを支える蓄電システムの構築・運用・保守を行うサービス事業へのシフトを進めています。かかる方針を踏まえ総合的に検討した結果、このたびの契約締結に至りました。

なお、当社は、現在、当社が保有するNECエナジーデバイスの全ての株式をGSRに譲渡する交渉を行っています。

日産に対する当社およびNECエナジーデバイスが保有するAESC株式の譲渡は、当社およびGSRによるNECエナジーデバイス株式の株式譲渡契約が締結されその取引実行条件が満たされること、および日産とGSRとの間の株式譲渡契約の実行条件が満たされることが条件となります。

株式譲渡の概要
(1)譲渡対象株式
AESC株式 45,962株
当社保有分 39,396株(保有割合:42%)
NECエナジーデバイス保有分 6,566株(保有割合:7%)
(2)株式譲渡日:2017年12月末日(予定)

今後の見通し
本株式譲渡を実施した場合、2018年3月期の連結決算において約100億円を営業外の利益として計上する見込みです。なお、2018年3月期の連結業績予想については、変更が必要な場合は確定次第速やかに開示いたします。:http://jpn.nec.com/press/201708/20170808_01.html