NEXCO中日本、脳機能を活用する交通安全評価手法を開発


瞬時の判断に関わる「脳機能NIRS活用」を背景とした交通安全施策を推進

NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社・本社:名古屋市中区錦2-18-19代表取締役社長CEO:宮池 克人、以下、NEXCO中日本)は6月22日、運転者の瞬時の判断に関わる脳活動計測技術の開発に成功したと発表した。

これはNEXCO中日本が、東京大学の須田義大教授・中野公彦准教授、及び株式会社脳の学校と共同で、運転者の脳活動の計測に関する研究を2012年より進めてきたもの。

この成果として脳機能近赤外線分析測定(脳機能NIRS:functional near-infrared spectroscopy)装置を車載し、運転者の瞬時の判断に関わる脳活動を計測する技術開発に成功した。

NEXCO中日本は、今後、この計測技術を応用して、高速道路のより効果的な交通事故防止対策の構築に役立てていくとしている。

上記の研究概要は以下の通り

ドライビングシミュレーションの課題

課題
これまで交通安全施策の評価は、運転後に自分の行動を顧みて記入するアンケートなどの結果を用いていたが、この方法では記憶の誤りや思い込みが避けられないなど課題があった。

また、検討中の対策案の評価を実道でおこなうには危険が伴う場合もあるため、従前からドライビング・シミュレータ(DS)を使用してきたが、DSでは実道との環境に相違(注)があるため正確な結果が得られないことがあった。

「認知」、「判断」、「操作」の流れ

成果
上記を踏まえ同研究では、これらの課題を解決するため、実走行環境とDS環境下の対象物の輝度の比率を合わせることなどにより、よりリアルなDSに改良した。

一方、脳機能NIRSを車載し、運転者の脳活動を計測する技術を開発し、アンケートという記憶に頼らない、脳活動を定量的に把握して評価する手法を開発した。

これらの要素を踏まえ、運転者の頭部に脳機能NIRS 装置をセットした実道実験とDS 実験の両実験を行い、「運転」の3要素のうち「認知」、「判断」にかかわる脳活動を計測すると共に、車両から「操作」に関わる情報(速度,加速度,ステアリング角度等)を収集した。

その結果、運転者の「認知」、「判断」、「操作」の過程の中で、実道実験とDS 実験が類似する反応を示すことを確認し、DSと脳機能NIRSを使用し瞬時の判断にかかわる脳活動を計測する技術開発に成功した。

今後の活用(主な交通事故対策の事例)

この成功により、DSと脳機能NIRSを使用することで、実道実験と同様の評価が可能となった。なおこの成果は、東京大学に於いても記者発表される。

ちなみに脳機能近赤外線分析測定法である「脳機能NIRS」は、脳機能画像法の一つで、装置が小型軽量で、移動可能で、被験者が体を動かしながら脳機能を計測できる測定方法である。

このため、体を動かす運動に伴う脳循環代謝の解析ができる利点がある。

同研究では、脳血流量だけでなく、脳酸素消費の変化を同時に計測することで、運転者の脳機能を多面的に画像化することに加え、車の進行に合わせた計測地点ごとのリアルタイムな脳活動を検出することにも成功している。