完成検査制度に関わる意見交換・情報交換の機会を設ける。自動車14メーカーの品質管理責任者集め、各社の不正防止で引き締め図る…国交省
工場出荷前の車両の完成検査で、自動車メーカーの相次ぐ不適切事案が発覚する中、国土交通省は8月31日(金)に関連する自動車メーカーの品質担当責任者を集めて、対策会議「適切な完成検査を確保するための対策会議」を開催した。(取材執筆:中島みなみ/中島南事務所)
出席を求められたのは、問題のあった企業を含むトラック、バイクメーカーを含む14社の担当取締役や執行役員ら。国交省が自動車業界全体に対して、こうした対策会議を迫るのは極めて異例だ。
スバルや日産のように、完成検査で再発防止策を盛り込んだ対策を取りながら、再び問題を引き起こし、それらの会社に引きずられるようにして各社に問題が拡大している。自動車局は前述2社を含む不適切事案のである5社について、いまだ結論を出していない。この間に負の連鎖を完璧に断ち切りたい思いがにじむ。
秋本真利政務官は冒頭、語気を一段強めて次のように語った。
「改めてもう一度申し上げるが、このような事態は信じがたい深刻な事態であると思っている。政務の私がここに来て、厳しい挨拶をして会議を開催したということを肝に銘じて、重くとらえてもらいたい」
また、問題のないメーカーに関してもくぎを刺した。
「各社においては本日の会議の内容も踏まえ、適切な完成検査を確保するための対応を今一度確認、検討していただくようお願いする。今回の事案については、他社の事案とけして思わず、最大限の危機感をもって対応していただきたい」
「適切な完成検査を確保するための対策会議」が実施された1時間の大半は、14社すべてに完成検査制度に対する考え方と、不適切事案を防ぐための企業姿勢や対策を聞くことに費やされた。
制度の信頼が揺らぐ中、制度そのものの評価は「品質管理上、制度は不可欠」「有用な制度である」という意見が大勢を占め、検査を確実に実施するための「検査の自動化」や「検査結果やデータの電子化による書き換え防止」などの対策が必要であるという意見が出された。
一方で、これまでの完成検査はガソリン車を中心として考えられているため、電動化や自動運転に対応した検査の再構築が必要になる。新たな検査にメーカー側の意見が反映されることを望む声も多かった。
この対策会議は、国交省と自動車メーカーが制度上の共通認識を持つことが目的で、この日の1回で完結する。9月3日には自動車政策審議会の中で「自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会」が開催される。新たなモビリティ時代の品質管理制度については、この小委員会などで議論が進むことになっている。( NEXT MOBILITYより転載 )
中島みなみ
(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。