ホンダ、重希土類完全フリー磁石をハイブリッド車用モーターに世界初採用


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大同特殊鋼株式会社(本社:名古屋市東区、社長:石黒 武 以下、大同特殊鋼)と、本田技研工業株式会社(本社:東京都港区、社長:八郷 隆弘 以下、ホンダ)は、ハイブリッド車用駆動モーターに適用可能な高耐熱性と高磁力を兼ね備えた、重希土類(※1)完全フリー(不使用)熱間加工ネオジム磁石を世界で初めて(※2)実用化し、ホンダは今秋発表予定の新型「FREED(フリード)」に採用する。

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重希土類完全フリー磁石

(※1)希土類(レアアース)の区分の一つ。軽希土類、中希土類、重希土類の3つに分類
(※2)大同特殊鋼並びにホンダ調べ

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【背景】
ハイブリッド車など電動車の駆動モーターには、世界最強の磁力を持つネオジム磁石が使用されており、今後、急激な需要拡大が見込まれている。

そうしたハイブリッド車用駆動モーターに使われるネオジム磁石は高温環境下で使用されるため、高い耐熱性が要求される。

その耐熱性を確保するために、従来は重希土類元素(ジスプロシウム、テルビウム)が添加されてきた。

しかし、重希土類元素は世界的に有力鉱床が偏在し、希少金属(レアメタル)にも分類されるため、安定調達・材料コストの観点でリスクを抱えている。

重希土類元素の使用量を低減することが、ハイブリッド車駆動モーター用にネオジム磁石を使用する上で、大きな課題の一つであった。

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i-DCD 駆動モーター用ローター

【開発内容】
大同特殊鋼の完全子会社である株式会社ダイドー電子(本社:岐阜県中津川市、社長:稲垣 佳夫 以下、ダイドー電子)では、このネオジム磁石を、一般的な製造工法である焼結工法とは異なる熱間加工法により量産している。

熱間加工法は、ナノレベルの結晶粒を高度に配向させることができる技術で、一般的な焼結磁石の10分の1程度の微細な結晶粒組織を得ることで、より耐熱性が高い磁石を製造可能とする。

今回、大同特殊鋼が熱間加工法の技術をさらに進化させると共に、ホンダが駆動モーター開発の経験を活かし、磁石形状を見直すなど、鋭意共同で開発を進めてきた。

そして今回、重希土類元素を全く使用せずに、ハイブリッド車用駆動モーターに適用可能な高耐熱性、高磁力を実現したネオジム磁石を世界で初めて実用化した。

さらに、ホンダは、この磁石に対応した新しいモーターを設計した。具体的には、磁石形状に加えてローター形状も見直し、磁石にかかる磁束の流れを最適化することで、重希土類完全フリー熱間加工ネオジム磁石をハイブリッド車用駆動モーターに採用可能とし、トルク、出力、耐熱性において従来の磁石を用いたモーターと同等の性能を達成している。

【効果】
上記技術の採用により、ネオジム磁石の適用拡大に際し、課題であった重希土類元素の制約から脱却したことで、その資源リスクを回避、調達ルートの多様化も図ることが可能になった。

【今後の展開】
<ホンダ>
今秋発表予定の新型フリードに搭載するハイブリッドシステム「SPORT HYBRID(スポーツハイブリッド) i-DCD(※3)」に、重希土類完全フリー熱間加工ネオジム磁石を採用するとともに、順次、新型車に適用を拡大していく。

(※3)i-DCDは、Intelligent Dual Clutch Drive(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)の略

<大同特殊鋼>
従来、焼結ネオジム磁石の独占状態であったハイブリッド車駆動モーター用磁石市場に、熱間加工ネオジム磁石として新規参入する。

参入にあたっては、ダイドー電子本社工場(岐阜県中津川市)が、経済産業省の補助金(※4)を受け建設した新製造ラインにて、来月から量産、出荷を開始。

(※4)平成24年度 円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業費補助金

また、重希土類完全フリーを維持しながら、さらなる高特性化に向けた磁石の開発も引き続き推進していく構え。

なお、磁石の原料となる磁粉は、Magnequench International, Inc.(カナダ・オンタリオ州トロント 以下、マグネクエンチ社)から調達しており、マグネクエンチ社と磁石のさらなる高特性化に向けた原料磁粉の開発を行っていく。