グループPSA(本社:フランス・パリ、CEO:カルロス・タバレス)傘下のプジョー・シトロエン・ジャポン株式会社(本社:東京都渋谷区)は7月12日、東京都内ホテルに於いて国内報道陣を招き、全ブランドライン下の『BlueHDi』ディーゼルテクノロジー、並びに同ユニット搭載の最新モデル発表会を兼ねた「PSA Group BlueHDi Conference in Tokyo」を開催した。
同カンファレンスの壇上で、プジョー・シトロエン・ジャポン代表取締役社長のクリストフ・プレヴォ氏は、「PSAグループが永年温め・培ってきた技術革新の歴史に、新たな1ページが加わります。
我々グループは、これまでなくパワフルなパワーユニットでありながらも、地球環境に限りなく優しい2タイプの革新的なディーゼルエンジン搭載車を『BlueHDi』というグレード名で導入する運びになりました。
当グループPSAは、プジョーブランドが1922年にディーゼルエンジン搭載車の長距離走行に成功して以来、1958年の量産車『PEUGEOT 403 D』発売以降も、欧州の排出ガス規制に適合する、高効率かつクリーンなディーゼルエンジンの休む事無く開発し続け、今日のヨーロッパに於けるディーゼルエンジン開発のリーディングカンパニーであり続けてきました。
先の2015年には、ディーゼルエンジン車生産で累計100万台を達成しており、今回の新ユニット『BlueHDi』ディーゼルエンジンの投入は、その集大成ともいうべきものとなります。
この我々の次世代ディーゼルエンジン車の新たなラインナップ『BlueHDi』は、欧州地域に於ける成功と同じく、ここ日本に於いても、お客様の知的で合理的な選択肢として、必ずや評価を獲得できるものと信じております」と述べた。
これに続いて登壇したグループPSA・パワートレイン&シャーシーエンジニアリング研究開発部長のクリスチャン・シャペル氏は、「我々PSAグループが、脈々とディーゼルエンジンを作り続けてきた経験と技術の蓄積。
そこから生まれたクリーンエンジンテクノロジー集積の結果が、今回、我々が発表した『BlueHDi』ディーゼルエンジンです。
その基本構成は、ピストンリングやライナー等のフリクション低減を図った高圧縮シリンダーに、コモンレール式高圧噴射システムを組み合わせた4気筒ターボディーゼルエンジンです。
これにアイシン・エィ・ダブリュとの共同開発によるEAT6トランスミッションを組み合わせました。
このトランスミッションは、ギヤレシオをガソリンエンジン搭載車よりも、さらにハイギヤード化することで、同一速度域でのエンジン回転を下げ、新開発のクラッチによるロックアップ領域を拡大、トルクコンバーターのスリップロスを低減させています。
また搭載されている『BlueHDi』ディーゼルエンジンは、ストップ&スタートシステムの再始動に、一般的なエンジンスターターではなくオルタネータを使用するなど、パワーユニットのフリクションロスの低減に徹底的に拘っており、低燃費と高性能という各々が相反する最終目標を達成しています。
また有害物質の低減に、最大の効果を発揮する排出ガス削減策では、他社では実現できなかった独自性を追求しています。
この際、課題に挙がったのは、NOx(窒素酸化物)とCO2(二酸化炭素)の二律背反の関係を断ち切る事にありました。
その排出ガス低減の仕組みは、まず第1段階に於いて、酸化触媒を介してHC(炭化水素)と、CO(一酸化炭素)を除去。ここでこれらの物質を、無害な水と二酸化炭素に変換します。
続く第2段階で、AdBlueを噴射するSCR(選択還元触媒)を潜らせることで、NOx(窒素酸化物)を最大90%除去し、無害な水と窒素に変換します。
そして最後の第3段階で、DPF(微粒子フィルター・Diesel Particulate Filter)を経て、PM(粒子状物質)の99.9%を除去。
最終的には、ユーロ6規制で理想とされた『清潔な室内の空気に匹敵する』排出ガスを現実のものとしています。
ちなみに、当グループが第2段階に使用している尿素水噴射によるSCRは、欧州メーカーのメルセデスベンツを筆頭に、国籍を問わず他の自動車メーカー社でも採用されているものはありますが、我々は完成車メーカーとしての独自の取り組みとして、このSCRをあえて、DPFの上流に配置しています。
このような組み合わせとした理由は、これによりエンジン始動直後の低温時に於いても、素早くNOxの除去が可能になる事。そしてDPFのセルフクリーニング性自体も、飛躍的に高める事ができる事にあります」と語った。
この後に登壇したグループPSAのインド・パシフィック地域事業部長のエマニュエル・ドゥレ氏は、「1958年初のディーゼル量産から、近年のディーゼルエンジン累計100万台に至るまで、常にクリーンエンジンテクノロジーの最先端を走ってきたPSAグループは、 いつの時代も常に効果的な燃焼方式を重視し、2000年には大きな飛躍的進歩となるDPFを世界に先駆けて発表しました。
そして今回のSCRとDPFによる『BlueHDi』ディーゼルエンジンテクノロジーは、今市場に於いて最も効果的に排出ガスをクリーン化するための最善の解決策であり、今日ますますその効果を証明しつつあります。
私たちはお客様に持続可能でクリーンな移動手段をこれからも提供し続けることを自ら命題と考えています。
また我々はインド・パシフィック地域内に於いて、日本市場を大変重視しており、製品だけでなくサービスも含め高いクオリティが求められる同市場に於いて、お客様が求めるクオリティレベルに応えていくことで、我々PSAグループのブランド価値が高められると考えており、今後もこの目的に真摯に取り組んで参ります」とコメントした。
そして最後に、プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社マーケティング部長のジャン・ミッシェル・オモン氏が、「『BlueHDi』ディーゼルエンジンテクノロジーは、今日求められている環境性能の達成だけでなく、燃費に於いても最新の燃料噴射システムの搭載、エンジン重量の大幅な軽減、内部摩擦抵抗の軽減等が図られた事により、1.6L BlueHDiディーゼルエンジン搭載のプジョー308 BlueHDiに於いて21.0km/Lの優れた燃料消費率を実現しています。
出力面に於いても、2.0L BlueHDiディーゼルエンジンのスペックは最高出力180ps、最大トルクで400Nmを、それぞれ3.750rpmと2.000rpmで発揮。
1.2L BlueHDiディーゼルエンジンにおいても3.0Lガソリンエンジン車に匹敵する300Nmのトルクを発生します。この低回転域の出力特性は、今までにない豊かなドライビングプレジャーをお約束致します。
今回発表するBlueHDiディーゼルエンジンは、同性能のガソリンエンジン車と比較した場合、燃料消費率は約25%、CO2の排出量で15%の低減を実現しています。
さらに独自のクリーンテクノロジーによって、NOx(窒素酸化物)は90%、PM(粒子状物質)は99.9%除去されます。
これは今日に於いて世界で最も厳格な欧州排出ガス基準ユーロ6にいち早く適合するクリーン性能となります。
このエンジンはプジョー、シトロエン、DS Automobilesの3ブランドで6車種12機種に搭載されます。
ハイパフォーマンスな2.0 BlueHDiターボエンジンと、経済性と加速性能を兼ね備えた1.6L BlueHDiターボエンジンの導入は、私たちのブランドを愛して下さるお客様の期待に必ずやお応えできると信じております。
また、ドライビングプレジャーと環境への配慮に加えて、エコカー減税の適用により、お求め易いさも加わり、新しいお客様に注目して頂けるものと確信しています。
なおAdBlue(尿素水溶液)タンク(容量17L)は、トランクルーム下、スペアタイヤ直近にある大型タンクに貯蔵されており、トランクルームのスペースを犠牲にしない構造としています。
また残りの走行可能距離が2,400km以下となった場合、警告ランプと残りの走行可能距離の表示によって、補給の必要性をお知らせする仕組みです。
この補給に関しては、1年または10,000kmを目安に、販売店での点検・補給を推奨しています。但し、新車購入後3年間はこの補給に関して、お客様に於けるコスト負担は発生しません。
なおBlueHDiディーゼルエンジン搭載車は、優れた燃費とクリーン性能によって、エコカー減税が適用され、減税率は重量税・自動車取得税共に100%、自動車税も75%と、車両購入時の費用が大幅に低減されます。
さらに燃料である軽油の価格は大幅に廉価です。低燃費で燃料価格も低減できるBlueHDiディーゼルエンジンは、日々のランニングコスト負担で大きなコストメリットをもたらすでしょう」と畳み掛けた。
今回、プジョー・シトロエン・ジャポンが発売したクリーンディーゼルエンジン搭載車はプジョーブランドでは、1.6L(120ps/300Nm)搭載の「プジョー308 Allure BlueHDi」、「プジョー308 GT BlueHDi」、「プジョー508 GT BlueHDi」、「プジョー308 Allure BlueHDi」。
さらに「プジョー308 GT BlueHDi」と、セダンとステーションワゴンの「プジョー508 GT BlueHDi」には2.0Lエンジン(160ps/400Nm)が搭載される。
シトロエンでは、C4にクリーンディーゼル「BlueHDi」の設定車「C4 FEEL BlueHDi(279万円・6ATのみ)」を皮切りに、2016年12月にはミニバンのグランドC4ピカソに「グランドC4 ピカソ BlueHDi」及び「C4ピカソ BlueHDi」が2016年内に追加される予定。
なおガソリンモデルも引き続き販売される。また同ブランドラインに於いては、最終的には車種ラインナップが14機種まで拡大される見込み。
加えてにDSブランドは、DS4及びDS4クロスバックと続き、さらに来年2017年1月にはDS5にも設定される予定。
気になる価格だが、「308 Allure BlueHDi」が299万円、「308 SW Allure BlueHDi」が323万8000円、「308GT BlueHDi」が354万円、「308SW GT BlueHDi」が378万8000円、「508 GT BlueHDi」が434万円、「508 SW GT BlueHDi」が464万円となっており、これに各車に適合する減税措置が加わる見込み。
なお車種発表計画の席上では、その先の燃料電池車リリースに至る、現時点に於けるPSAブランドラインナップの青写真についても触れていた。
それによると現段階では、来年の2017年に次世代ガソリンエンジンと、8速オートマチックトランスミッションの投入。
そして翌々年の2019年には、ガソリンエンジンを組み合わせたPHEVを、さらにBセグメントプラットフォームによるEVも投入する計画であると云う。
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