米・テスラ社(本社:米国カリフォルニア州パロアルト、会長兼CEO:イーロン・マスク)のイーロン・マスク氏は、連邦政府機関の米証券取引委員会(SEC)から提訴されていた事案について米国時間の9月29日、2000万ドル(およそ23億円)の制裁金支払いと、マスク氏がテスラ社取締役会の会長職を辞任するというふたつの条件でSECと和解した。( 坂上 賢治 )
これは米国時間の8月7日、自社株式を非公開にする可能性についてテスラ従業員に向けた電子メールで示唆した上で、同じ日に自身のツイッターアカウント上で「ひと株あたり420ドルでテスラ社の株式を非公開化できないかと考えている。資金は確保した」とのツイートを発信したことに起因するもの。
その後、同発言からわずか2週間余りしか経っていない8月24日(米国時間)になって「今後も自社を公開企業として維持していく」と自らの企業ブログ上で改めて宣言した。
これに対してSECは9月27日、「これら資金にまつわる発言を、マスク氏はサウジアラビア政府系ファンドとの交渉に基づくものだと主張していたが、我々の調査によると実際には資金源との交渉の事実は認められなかった。
それにも関わらず株式市場に誤った情報を与えて混乱をもたらし結果、株主に損害を与えた。この一連のマスク氏の言動は詐欺行為を禁止する連邦証券取引法違反の疑いがある。したがってマスク氏が、上場企業であるテスラ社の経営陣から排除されることを望む」との内容を訴状に記した。
これを受けたテスラ社は当初、詐欺容疑に関わる同訴状は不当な提訴だとしてマスク氏を擁護する声明を出していたのだが、その後、同騒動によって自らの広告等であるマスク氏を失うことに反応。マスク氏がテスラ社の会長を29日を起点に45日以内に辞任すること。今後3年間は再び会長職に就任しないこと。併せて2000万ドルの制裁金を支払うという条件でSECと和解した。
同じくマスク氏も、SECの訴状に対して認否を明らかにしないことを条件に2000万ドルの制裁金を支払う。なお会長職は辞任するもののマスク氏のCEO職は継続される。
これを踏まえテスラ社は、自社との関わりが薄く独立した立ち位置の取締役2名を新たに任命し、取締役会が新たに設ける独立委員会が今後、マスク氏の言動などを監視・監督する役割を担うとした。また新たな会長人事も速やかに行われる。但しマスク氏を監視・監督し、さらに資金不足の同事業へ潤沢な資金を調達・確保し、ガバナンス(企業統治)改革を確実に実現できる人材を発掘するには些か時間が掛かりそうだ。