自動運転車のテクノロジーには、依然として不安を感じるものの、運転アシスト機能については受け入れ傾向
J.D. パワー(本社:米国カリフォルニア州コスタメサ、代表取締役社長:フィンバー・オニール/Finbarr O’Neill)が4月21日(日本時間)に発表した2017年米国テック・チョイス・スタディSMによると、Y世代(24歳〜40歳まで)以外のすべての世代グループが、自動運転技術に懐疑的になっており、これが自動車メーカーと技術開発者に新たな課題をもたらしていることが判った。
J.D. パワーのドライバー・インタラクション& HMIリサーチのエグゼクティブ・ディレクターであるクリスティン・コロッジ氏は、「ほとんどの場合、テクノロジーの概念が実現化に近づくにつれ、消費者の好奇心と受容度は高まる。
自動運転車では、信頼がテクノロジーへの関心を左右する傾向が見られるが、現時点では信頼度合いは低下している」と述べている。
クリスティン・コロッジ氏は、「2016年と比べると、自動化技術はまったく信頼できないと回答している消費者は、Z世代(1995~2004年生)で11%、ベビーブーム前世代(1946年より前に誕生)では9%増加している。
ただし、2016年の調査と同様に、今年の調査でも消費者は衝突防止と運転アシスト技術という2つのカテゴリーに大きな関心を示している。
具体的には、スマートヘッドライト、バックミラーモニター、緊急ブレーキとステアリングシステム、車線変更アシスト、サイドミラーカメラ、ウインドシールド・ディスプレイの、価格提示前に消費者が最も関心を寄せている上位10位の機能のうち6つの機能がそれにあたる。
自動運転車には多くの利点がある。それには、衝突緩和だけでなく、現代の車両を運転できない消費者が移動の自由を体験できることも含まれている。
その一方で、興味深いことに、ベビーブーム世代(1946~1964年生)の40%が自動運転車に何の利点も見出していない。自動運転は、多くの消費者にとって新しく複雑な概念であるため、十分に理解するには直接体験する必要がある。
アダプティブ・クルーズ・コントロール、自動ブレーキ、死角検出警報システムなどの機能が主流になるに従い、自動車購入者は自信を持ってハンドルから両手を離し、車両に人的ミスの回避を任せるようになるだろう」と語った。
主な調査結果
●車両制御機能に対する世代間のギャップ
購入意向について、Y世代(1977~1994年生)/Z世代(1995~2004年生)と、ベビーブーム世代(1946~1964年生)の間に最も大きな差があるテクノロジーを見てみると、若い消費者ほど車両の運転機能を制御するテクノロジーを素直に受け入れている。
例として、モバイル端末で操作するインフォテイメントシステム、車載人工知能(AI)をベースとしたアシスト、運転と駐車の自動制御技術が挙げられる。
●価格は度外視
世代間で購入意向に最も差がある技術は5つあるが、そのすべてでY世代(1977~1994年生)/Z世代(1995~2004年生)は価格提示前でも「必ず」または「たぶん」興味を持つと答えており、ベビーブーム世代よりも高い購入意向を示している。
●車両の利用は柔軟に
一方Z世代(1995~2004年生)は、あらゆる新しいモビリティの形態に最も関心度が高い。
Z世代の50%が、モビリティ・シェアリングまたは共同所有(※2)に「必ず」または「たぶん」興味を持つと答えている。
また、52%が利用ベース(※3)での所有、 56%が無人操縦(※4)、56%がモビリティ・オンデマンド(※5)に「必ず」または「たぶん」興味を持つと答えている。
●緊急ブレーキとステアリングシステム技術に対する消費者の関心
自動車メーカーと政府の間で間もなく取り交わされる合意によって、5年以内に自律運転の基礎となるテクノロジーである緊急ブレーキシステムは車両に標準装備することが義務付けられることになった。
このシステムの最新型(ステアリング含む)に$700を支払ってもよいと回答している消費者は31%と、デジタルキー($250)、ダッシュボード車載カメラ($300)、モバイル・システム・コントロール($400)などの比較的安価なテクノロジーに支払ってもよいと答えている消費者の割合よりも高い。
●利便性には無関心
消費者は、便利だがニッチな技術にはそれほど熱心ではない。衝突防止および運転アシスト関連が、価格提示前に関心度が最も高いテクノロジーのほとんどを占めている。
その一方で、エンターテイメントと接続性、および快適さと利便性関連の機能は、価格提示前の関心度が最も低い。
●利便性に対する例外
Z世代(1995~2004年生)の消費者は、従来の鍵やリモコンキーを、スマートフォンやスマートウォッチに置きかえるデジタルキー技術にかなり高い関心を示している。
Z世代(1995~2004年生)では合計で40%がデジタルキー技術を次の車両には必ず搭載したいと答えており、58%がデジタルキー技術に$250を支払ってもよいと答えている。
これは、すべての消費者の28%と比べて、Z世代の方が高い割合を示している。
今年で3年目を迎える当調査は、未来の技術や新技術について、車種や消費者の属性別に消費者の認知、関心および価格弾力性を調べるものである。
この調査で分析される主な技術カテゴリーは、エンターテイメントと接続性、快適さと利便性、運転アシスト、衝突防止、ナビゲーション、燃費である。
新しいモビリティ、サイバーセキュリティの脅威などの新たな概念への興味や、自動運転技術への信頼についても調べている。
同調査は、2017 年1月から2月にかけてインターネット調査を実施し、過去5年間に新車を購入またはリース契約した8,500 人以上から回答を得た。
2017 年米国テック・チョイス・スタディSM の詳細については、下記リンクから閲覧できる。(英語版)
http://www.jdpower.com/resource/us-tech-choice-study
以下備考
(※1) J.D. パワーでは、世代グループを、ベビーブーム前世代(1946年より前に誕生)、ベビーブーム世代(1946~1964年生)、X世代(1965~1976年生)、Y世代(1977~1994年生)、Z世代(1995~2004年生)に分類している。
(※2) モビリティ・シェアリング/共同所有:車両の所有にかかる費用と車両の利用を複数の人で共有し、最適化する仕組み。
(※3) 利用ベースでの所有:ユーザーの利用目的や利用料金に合わせて、まとめて所有している複数の車両タイプの中から柔軟に使い分けて使用できる仕組み。
(※4) 無人操縦:あらかじめ決められた目的地に、ドライバーなしの自動操縦によって運転されること。
(※5) モビリティ・オンデマンド:モバイルアプリ(Uber、Lyft など)を使ったライド・シェア・サービス。
<J.D. パワーについて>
J.D. パワー(本社:米国カリフォルニア州コスタメサ)は、顧客満足に関するインサイト並びにパフォーマンス改善のためのソリューションを提供している国際的なマーケティング情報サービス企業である。
毎年、世界中で数百万人にのぼる消費者やビジネス・ユーザーを対象に、品質や顧客満足に関する調査を実施している。北米、南米、ヨーロッパとアジアに計17の拠点を有する。
アジア・パシフィックではシンガポール、北京、上海、バンコク、マレーシアに拠点をもち、日本、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムで調査を行っている。同社ウェブサイト: http://japan.jdpower.com