「2016年本田賞」東京大学・大学院教授の磯貝明博士と、京都大学教授の矢野浩之博士が受賞


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東大・大学院農学生命科学研究科教授の磯貝明博士、京大・生存圏研究所教授の矢野浩之博士。セルロース・ナノファイバー(CNF)の可能性拡大に貢献

公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)は、2016年の本田賞(※1)を、セルロース・ナノファイバー(CNF)の高効率な製造法の考案および製品への応用や将来における可能性の拡大に対する貢献を果たした東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授 磯貝明博士と、京都大学 生存圏研究所生存圏開発創成研究系 教授 矢野浩之博士への授与を決めた。

本年で37回目となる本田賞の授与式は2016年11月17日に、東京都の帝国ホテルで開催され、メダル・賞状とともに副賞として合計1,000万円が磯貝博士と矢野博士に贈呈される。

CNFは、植物細胞壁の基本骨格物質であるセルロースミクロフィブリル束の総称で、鋼鉄の1/5の軽さで、その5倍以上の強度と、ガラスの1/50の線熱膨張係数を有するナノ繊維。

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樹木など、植物資源の50%以上を占める自然界に豊富に存在する環境負荷の少ない植物由来の持続型資源であり、低炭素社会の早期実現に向けて、石油系プラスチックの代替、構造材の補強用繊維や改質剤としての利用が注目されている。

磯貝博士は、CNF生産に於いて化学的アプローチ「TEMPO(※2)触媒酸化法」を開発し、それまでエネルギーを大量に使用する機械的解繊処理によっていたCNF生産の効率とCNF構造の均質性を大幅に改善した。

この発明は、その後のCNF生産および産業への応用に関する集中的な研究の道を開く礎となっている。

また、矢野博士はCNFで強化された複合材の生産において、パルプ繊維のナノ化と樹脂への均一分散を同時に達成する「パルプ直接混練法(京都プロセス)」を開発。

CNFを作ってから樹脂などの複合材と混ぜていたこれまでのプロセスを、1プロセスで射出成型にそのまま使える形にしたことにより、大幅な時間とコストの削減を実現した。

また、産官学連携の活動においては、その牽引役となりCNFの応用範囲拡大に多大な貢献をした。

従来CNFは、ナノファイバーレベルまでの解繊コスト、ナノファイバー故の取り扱いの難しさなどから、工業的利用はほとんどされなかったが、磯貝博士、矢野博士が発明・発見された方法を用いて機能部材としての活用や構造部材としての利用が拡大している。

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(※1)化学技術分野に於いて、日本初の国際賞として1980年に創設された本田賞は、人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジー(※3)を実現させ、結果として「人間性あふれる文明の創造」に寄与した功績に対し、毎年1件の表彰を行っている。

これを踏まえ、今回のCNFの活用進展は、従来の化石資源依存型産業によるものづくりを、再生可能な原料で汎用から高性能に至る様々な部素材を造り上げることを可能とする。

それがひいては自動車、家電品などの工業製品や、建材、包装材などに使われ、循環型社会基盤の構築につなげる第一歩となる可能性が広がっている。

これが本田財団が目指す「人間性あふれる文明の創造」に寄与するものであると考えたと云う。

財団では、磯貝博士と矢野博士が行ったCNFの生産方法の改革や活用領域拡大への貢献は本田賞にふさわしい成果であると認め、今回の授賞に至った。

(※2)TEMPO:有機化合物 「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル ラジカル(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl,radical)」の略称

(※3)エコテクノロジー(Ecotechnology):文明全体をも含む自然界をイメージしたEcology(生態学)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語。人と技術の共存を意味し、人類社会に求められる新たな技術概念として1979年に本田財団が提唱

公益財団法人 本田財団
〒104-0028 東京都中央区八重洲2-6-20 ホンダ八重洲ビル
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ming-and-dr-isogai-of-honda-prize-2016-university-of-tokyo-graduate-school-professor-hiroyuki-yano-dr-kyoto-university-professor-award20161009-3磯貝 明博士
東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
磯貝 明博士
生年月日
1954年10月19日

略歴
1980年 東京大学 農学部 卒業
1982年 東京大学 大学院農学系研究科修士課程修了
1985年 東京大学 大学院農学系研究科博士課程修了(農学博士)
1985〜1986年 米国Institute of Paper Chemistry(大学院大学)化学科博士研究員
1986〜1994年 東京大学 農学部助手
1989〜1990年 米国農務省林産物研究所客員研究員
1994〜1996年 東京大学 農学部 助教授
1996〜2003年 東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教授
2003年〜 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授

学・協会活動
セルロース学会会長(2013年〜)
紙パルプ技術協会理事、木材科学委員会委員長(2003年〜)
機能紙研究会副会長(2015年〜)
木材科学アカデミーフェロー(2006年〜)
ナノファイバー学会理事(2009年〜)
その他: アメリカ化学会、米国紙パルプ技術協会、高分子学会、日本木材学会、繊維学会、キチンキトサン学会、米国紙パルプ技術協会、会員

研究業績・主な出版物
総説および著書:167編(例:セルロースの材料科学、単著、東京大学出版会<2001年>、セルロースの科学、編集、朝倉書店<2003年>)
出願特許:132件

受賞歴
2015年 Marcus Wallenberg賞
2015年 米国化学会Anselme Payen賞
2016年 日本農学会賞および読売農学賞
2016年 TAPPI(Technical Association of Pulp and Paper Industry, USA)Fellow
その他 13件

ming-and-dr-isogai-of-honda-prize-2016-university-of-tokyo-graduate-school-professor-hiroyuki-yano-dr-kyoto-university-professor-award20161009-2矢野 浩之博士
京都大学 生存圏研究所生存圏開発創成研究系 教授
矢野 浩之博士
生年月日
1959年2月6日

略歴
1982年 京都大学 農学部林産工学科 卒業
1984年 京都大学 大学院農学研究科修士課程 林産工学専攻 修了
1986年 京都大学 大学院博士課程 退学
京都府立大学 農学部 助手
1989年 京都大学 農学博士号 取得
1992年 京都府立大学 講師
1997〜1998年 オーストラリア連邦科学産業研究機構林産物研究所 客員研究者
1998年 京都大学 木質科学研究所 助教授
2002年 秋田県立大学 木材高度加工研究所 客員助教授
2004年〜 京都大学 生存圏研究所生存圏開発創成研究系 教授

学・協会活動
ナノセルロースフォーラム会長(2014年〜2016年)
木材科学アカデミーフェロー(2008年〜)
日本木材学会理事(2014年〜)
その他: 高分子学会、日本材料学会、セルロース学会、日本成形加工学会、日本ゴム協会、他

研究業績・主な出版物
総説および著書:101件(例:A. N. Nakagaito, H. Yano: The effect of morphological changes from pulp fiber towards nano-scale fibrillated cellulose on the mechanical properties of high-strength plant fiber based composites, Applied Physics A, 78, 547-552(2004).、H. Yano, J. Sugiyama, A. N. Nakagaito, M. Nogi, T. Matsuura, M. Hikita, K. Handa: Optically Transparent Composites Reinforced with Networks of Bacterial Nanofibers, Advanced Materials, 17(2), 153-155(2005)、A. N. Nakagaito, M. Nogi, H. Yano: Displays from transparent films of natural nanofibers MRS Bulletin, 35(3)(2010) 214-218)
出願特許:82件

受賞歴
1989年 日本木材学会奨励賞
2005年 セルロース学会 林治助賞
2009年 日本木材学会賞