クルマがインターネットにつながることは、車内で便利な機能を利用できるようにするだけでなく、安全で効率的な運転も可能にする。
そこでロバート・ボッシュGmbH(本社:シュトゥットガルト・ゲーリンゲン、代表取締役社長:Dr.rer.nat.Volkmar Denner <フォルクマル・デナー>、以下、ボッシュ)は、ラスベガスで開催されるCES 2016でネットワーク化機能とドライバー アシスタンス システムを展示。運転中のドライバーの注意を逸らすことを極力避けるための様々な技術を紹介していく。
ボッシュのハプティックタッチスクリーンが、CESアワードを受賞
ボッシュは今回、最新の開発成果であるタッチスクリーンでCESアワードを受賞した。
このタッチスクリーンは、ハプティック(触覚的な)フィードバッ クにより、現実のボタンを触るような感覚が得られる革新技術である。
また、CESのボッシュ・ブースでは、自動運転と車両のスマートなネットワーク化の未来 像をその場で実際に体験することもできる。
ドライバーのパーソナルアシスタントとなるクルマ
北ホールにあるボッシュのブースでは、同社の考える未来のクルマを垣間見ることができる。ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー氏 (Volkmar Denner)は、「ドライバーが注意散漫になるのを最小限に抑えるためには、ドライバーが必要とする情報を正しいタイミングで提供する必要があります。
そのことをわかりやすく示すため、デモ車両ではダッシュボードとセンターコンソールが1つのデジタルディスプレイになっており、この巨大 ディスプレイには車両の周囲の状況に応じた情報が表示されます。
例えば歩行者が右から近づいてくると、照明の効果によってドライバーに警告を発します。またドライバーの好みやスケジュールに配慮することも可能です。例えばある予定をキャンセルした場合、この未来のクルマはスケジュール帳にある次の予定の場所までのルートを自動的に示すことができます。
さらにオートパイロットを作動させれば、ドライバーはより多くの時間を自分のために使えるだけでなく、よ りリラックスして運転を満喫できるようになります」と説明する。
実際に体験できるイノベーションも展示
また未来の「コネクテッドカー」には、さらに多くの可能性があるという。
例えばスマートホームに接続すれば、住宅の空調システムやセキュリティーシステムなどを いつでもクルマから操作できるようになる。
仮に家を不在にしている時に宅配業者が荷物を届けに来た場合は、車両のディスプレイを指でタップするだけで、宅配業者に家の中に荷物を置いてもらい、受け取りの確認をすることができるようになる。
さらに、「コネクテッド インフォテインメント」は走行中以外にも、ドライバーをナビゲートすることができる。
ドライバーはオンラインサービスやスマートフォンアプリにアクセス したり、またあたかも隣に座る同乗者に話しかけるように、ジェスチャーと音声による操作も可能になります。こうして、クルマはドライバーにとって本当の意 味でのパーソナルアシスタントとなってくれる。
本物のボタンのような感触を味わえるタッチスクリーン
CESに先立ち、ボッシュの新しいタッチスクリーンが車載オーディオ/ビデオ部門の「CES 2016イノベーションアワード」を受賞した。
このタッチスクリーンは、その表面に変化をもたせ、ディスプレイ上のキーを感触で識別できる「ハプ ティックフィードバック」により、ナビゲーション、ラジオ、スマートフォン機能などの各種インフォテインメント アプリケーションをより操作しやすくする。
これによりドライバーは運転中も道路から視線を逸らさず、画面上の情報を目で見なくても操作できるよう設計されている。
このタッチスクリーンは、ボタンや機能の違いがわかるよう、ざらざらした表面、滑らかな表面、パターンのある表面などの感触をスクリーン上で感じ取 れるようになっており、操作にはボタンをしっかりと押す必要がある。
特にこのタッチスクリーンについて特筆すべき点は、一見しただけでは普通のディスプレ イとまったく変わらないものの、本物のボタンを押しているような感覚が得られることにある。
逆走車に対する不安を解消するクラウドサービス
同社によるとネットワーク化により、ドライバー インフォメーション システムはこれまで以上に最新の情報を提供できるようになるという。
これは特に逆走車が発生した場合に大きな意味を持つ。電波を通じてラジオで警告が放 送されるまで一般に数分掛かるが、逆走車に起因する自動車事故の3分の1はわずか500 m後に発生する。
そこでボッシュは、危険が生じてからわずか10秒後にドライバーに警告できる新しいクラウドベースの逆走警告システムの開発を進めきた。同機能はソフトウェアモジュールとして、ボッシュの「myDriveAssist」などのスマートフォンアプリや既存のインフォテインメント システムに低コストで組み込めるようになる。
このクラウドベースの機能は、逆走を検知するために、高速道路を走る車両の現在の動きと正しい進行 方向を比較して、そこに相違がある場合には逆走するドライバーに瞬時に警告を発し、正しい向きで走行している付近のドライバーには危険を知らせる。この新機能は2016年以降に、クラウドサービスとして利用可能になる予定だ。
ハイウェイパイロットが2020年から交通安全の向上に寄与
高度な自動運転は、道路交通の安全性の向上に大きく寄与する。これに関するボッシュの開発成果は、2020年に高速道路で実現する見込みだ。
ボッシュの事故研究予測では、自動化の推進により、事故発生数を著しく(ドイツだけでも最大3分の1)低減することができると想定しているという。
今回のCES 2016で、ボッシュはサンズエクスポ会場にもう1台のデモ車両を用意し、自動運転に必要な各種システムとセンサーをご紹介する。なおボッシュのこの技術はすでに公道試験に進んでおり、ドイツ国内と米国だけでなく、日本でも高速道路で自動運転の試験を開始している。
将来的には、渋滞や工事現場、事故の場所に関する情報がインターネット経由でリアルタイムに伝わり、危険となりえる場所を事前に把握したり、コーナーの周囲を見通せるようになる見込み。
こうした情報は「コネクテッドホライズン」として提供され、前方の状況を事前に把握することで、安全性と効率性もさら に向上する。
ドライバーに代わって駐車スペースを探すクルマ
どんなドライブでも、最後は必ず駐車をしなくてしならない。この駐車をより簡単にこなせるよう、ボッシュは新機能「バレットパーキング」の開発を進めている。
同機能は、駐車場の空きスペースを探す作業をドライバーに代わって行うだけでなく、車両が自動で駐車させることも可能だ。
ドライバーは駐車場の入口で車両から降り、スマートフォンアプリから車両に駐車スペースを探すよう指示すれば良い。そして、再び車両に乗る時は同じ操作で、降車 したその場所に車両を呼び戻すことができる。
この全自動駐車のベースとなるのは、駐車場のスマートなインフラ、車載センサーシステムと両者のネットワー ク化で、道路に埋め込まれたセンサーから空き駐車スペースに関する最新情報が提供され、車両はどこへ進むべきかを把握することができる。
ボッシュは、全自動駐車機能を開発するだけでなく、そのために必要なすべてのコンポーネントの開発も鋭意進めているという。