トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男)の北米事業体であるToyota Motor North America, Inc.(以下、TMNA)は現地時間の7月30日、米国の独立研究機関のCenter for Automotive Research主催のイベントで、航続距離や居住性を向上させた燃料電池(以下、FC)大型商用トラックの改良型を公開した。
TMNAは、これにより昨年夏からカリフォルニア州で行ってきた実証実験に、今秋より改良型を追加導入する。
この実証実験は、トヨタの物流施設から排出されるCO2をゼロにすることを目標とした『トヨタ環境チャレンジ2050』の取り組みの一環。1台目の実験車は実際に港湾エリアの貨物輸送を行い、これまでに約16,000kmを走行した。
今回の改良型は、これまでの実証実験で得た学びを生かして開発を進めてきた。具体的には、居住性と操縦性を向上させる取り組みとして、運転席のスペースに簡易ベッドを備えたスリーパーキャブを採用したほか、FCユニットの配置を工夫し、ホイールベースを延長することなく先代より広い車内空間を確保した。
加えて水素タンクの本数を4本から6本に増やし、通常運航における満充填時の推定航続距離を約320kmから約480kmに伸長している。
このプロジェクトのチーフ・エンジニアであるアンドリュー・ランド氏(Andrew Lund)は、「私たちは、テストコースやロサンゼルス市の公道でFC大型商用トラックの性能を評価することにより、トラックの組立工程や車両性能の改善点をリストアップしてきました。改良型の開発においては、実験車としての性能を向上させるだけでなく、実用化も視野に入れる必要があったのです」と話す。
現在ロングビーチ港やロサンゼルス港では環境負荷の高い16,000台以上の貨物輸送トラックが走行しており、その数は2030年までに約32,000台に増加すると推定されている。
また米国全体では、43,000台以上の貨物輸送トラックが大気汚染物質を排出しながら港湾エリアを行き来しており、周辺のコミュニティにとって深刻な課題となっている。そのような課題の解決を目指し、トヨタはカリフォルニア州でFC大型商用トラックの実証実験に加え、バイオマスから水素・電気・水を生み出す発電施設「Tri-Gen(トライジェン)」の建設を予定している。
TMNAの電動車・先進技術部門のシニアマネージャーであるクレイグ・スコット氏(Craig Scott)は「FC技術の大型商用車への応用可能性を検証するという目標は達成することができました。今後は、FC大型商用トラックの実用可能性について検証します。私たちは、水素利用の拡大を通じて、ロサンゼルス港のみならず、米国や世界における大気汚染対策に取り組んでいきたいと考えています」と語っている。