複合素材による船体「トヨタハイブリッドハル」を共同開発
トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)と、ヤンマー株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:山岡健人)は、マリン事業分野において技術開発、生産、部品の相互利用などの幅広い分野で協業を進めることに合意した。
トヨタは現在、アルミ製の船体(ハル)と自動車エンジンを採用した、プレジャーボートを製造・販売しており、卓越した走破性や静粛性を特徴に高い実績を上げている。
ヤンマーは、産業用ディーゼルエンジンを事業の柱とした総合産業機器メーカーとして、そのノウハウを生かした船舶用エンジン、FRP製ハルのフィッシングボートや業務用船舶を製造している。
アルミ製ハルは剛性感に優れているが、一方で、熟練した加工技術を必要とし、生産量に限りがあるなどの課題があったため、トヨタは、2年前からアルミ製ハルと同等以上の剛性を有し、かつ、生産性の高い、FRP・カーボン・アルミの複合素材による次世代ハルの開発を進めてきた。
その過程で、ヤンマーの有する高度なFRP成型技術に着目し、昨年から、次世代ハルの生産技術開発を共同で進めた結果、今回、アルミハルと同等の剛性に加え、軽量かつ、複雑な曲面形状にも対応できる「トヨタハイブリッドハル」の量産化技術に業界として初めて目途を付けた。
同時に、このハルを採用した試験艇「TOYOTA-28 CONCEPT」を完成させ、従来の同型艇を凌ぐ、走破性、旋回性能を確認している。
また、トヨタは、同試験艇の商品化も並行して進めており、ヤンマーにトヨタハイブリットハルに加え、舟艇の製造も委託する予定で、今年10月の発売開始に向けて具体的な準備を進めている。
トヨタは、今後、トヨタハイブリッドハルをベースに、自社のプレジャーボートのラインナップを強化するとともに、舟艇の供給能力増強を目指し、ヤンマーとの協業をさらに進める方針である。
また、トヨタとヤンマーは、今回の技術開発、生産分野での協業を契機に、エンジンを含めた主要部品の相互供給、および、互いの得意分野(トヨタ : プレジャー系、ヤンマー : フィッシング系)を生かした、商品開発、販売、アフターサービス分野における協業も検討する。
なお、トヨタハイブリッドハルを採用した「TOYOTA-28 CONCEPT」は、3月3日からパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される、ジャパンインターナショナルボートショー2016のトヨタブースに出展する予定。
トヨタハイブリッドハルの主な特徴
ボート船体(ハル)において、「素材」「構造」「形状」といった3つの観点で大幅な見直しを行い、FRPとアルミが持つそれぞれの特長を生かし、さらに、新素材のカーボンを加えることで、FRPハルと比較して約7倍の高剛性を実現。
アルミハルとの比較で船体重量も約10%低減を達成した。さらに、複雑な曲面形状の成型が可能となり、走航性能の向上と生産性向上の両立を実現した。
3素材のハイブリッド採用とインフュージョン成型による高剛性の実現
FRP材をベースにアルミ材、カーボン繊維の3種類の素材を採用
インフュージョン成型という真空注入成型により、空気を抜いた状態で型に樹脂を流し込み、3素材を一体成型。さらに、最大応力のかかる船底部分には中間に発泡材を加えた多層構造とした。
滑走時の推進抵抗低減と美しさを兼ねそなえたデザイン
従来のアルミ溶接では困難だった斬新なデザインが可能となるとともに、最新のシミュレーション解析を用いて走航安定性の高い船底形状を実現。