アウディ AG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、取締役会長:ルパート・シュタートラー、以下アウディ)は、フランクフルト国際モーターショー(IAA)で、いよいよAudi e-tron quattro conceptを発表する。
この電気自動車は、最大370kWのパワフルなe tron quattroドライブシステムと、空気抵抗係数(Cd値)0.25を達成した流れるようなデザインを特徴としている。
スポーティで、エネルギー効率に優れ、日常的な使用条件も完全に満たしたこのコンセプトカーは、アウディの考えるエレクトリックモビリティの未来を示すものとなった。
Audi e-tron quattro concept発表にあたり、AUDI AG技術開発担当取締役のDr. Prof. ウルリッヒ ハッケンベルク氏は、「アウディは2018年の初頭に、ラグジュアリークラスにおいて電気自動車のスポーツSUVを市場に導入する予定です。
Audi e-tron quattro conceptは、それがどのようなモデルであるかを、身を以て体現するクルマです。
このクルマは、もはやガソリンエンジン車の派生ではなく、EVならではの運転する歓びと、極めて長い航続距離、訴求力のあるデザイン、卓越した快適性を全て兼ね備えているのです」と述べた。
エレクトロニクスパワーが生み出す圧倒的な動力性能
Audi e-tron quattro conceptは、3つの電気モーターを搭載したクルマとなった。そのうちひとつのモーターが前輪を駆動し、残り2つのモーターが後輪を駆動する。
全てのパワーユニットの合計出力は320kWに達する。また短時間であれば、パワーブーストにより370kWの出力と800Nm(590.0 lb-ft)を超えるトルクが即座に提供され、スポーツカーに匹敵する動力性能を叩き出す。
フルパワー時に、ドライバーがアクセルペダルを床まで踏み込めば、Audi e-tron quattro conceptは、0-100kmを4.6秒で加速し、きわめて短時間のうちに電子的に制限された210km/hの最高速度に達する。
エネルギーマネージンメトも新時代に相応しいものになった
アウディが研究を重ねてきたe-tron quattroのテクノロジーが、この3つのモーターを用いたコンセプトモデルにより、初めて具現されることになった。
この3つのモーターは、インテリジェントな駆動管理システムに支配され、走行状況にあわせて3つのモーターが細かく制御される仕組みを備えている。
この機能に於ける最重要テーマは、エネルギー効率の最大化にある。Audi e-tron quattro conceptは、ドライバーがエネルギー回生のレベルを「S」または「D」の走行プログラムの中から、アウディドライブセレクトのモードにより任意で選択できるようになっている。
これにより、ワインディングロードをスポーティに駆け抜けるといった状況では、トルクコントロールマネージャーが、必要に応じてリヤ左右輪の駆動力の配分をアクティブに制御。このトルクベクタリングの機能により、最良のダイナミクスと走行安定性が提供される。
構造物の配置も車体の走行バランスに積極的に活かしていく
このAudi e-tron quattro conceptの室内の床下には、大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。
配置レイアウトは、前後アクスル間の最も重量バランス上、最適な位置に搭載されることで、クルマの重心自体が大きく下がり、これにより優れたハンドリングを実現するための前提条件が整う設計となっている。
気になるバッテリー容量は、95kWhを蓄えられるものでこれによって500kmを優に超える航続距離を確保している。さらに充電時には、コンバインドチャージングシステム(CCS)の採用によって、直流、交流、どちらでの充電にも対応するフレキシブル性を備えている。
充電時間は、出力150kWの直流急速充電プラグを車両のポートに接続すれば、約50分でバッテリーをフル充電することができる。加えて、アウディワイヤレスチャージングテクノロジーを搭載したことにより、非接触充電も可能となっている。
この場合の充電プロセスは非常に簡単で、車両にあらかじめ搭載されている自動パーキングシステムを使用すれば、充電用プレート上の最適な位置にクルマが自動的に導かれる。さらに、晴れていれば、大型ソーラールーフからもバッテリーに電力が補給される。
空力を味方に引き入れるエアロダイナミックデザイン
このコンセプトモデルは、シャシーも革新的な設計になっている。可変ダンパー機構を備えたアダプティブエアサスペンション スポーツにより、高速では空気抵抗を減らすために自動的に車高が下がる仕組みになっているのだ。
また、ダイナミックオールホイールステアリングは、前輪用のダイナミックステアリングシステムと、後輪用に特別に追加されたステアリング機構を融合したシステムで、走行スピードや走行状況に応じて、後輪を前輪と同じもしくは逆の方向に操舵する。
これにより、より素早く安定したステアリングレスポンスを得るとともに、低速におけるクルマの取り回しを改善する仕組みだ。
アウディのデザインチームはAudi e-tron quattro conceptに於いて、空力面での高い要求を満たしながら、電気駆動システムのための様々なコンポーネントを巧みに収納して、魅力的なスタイリングを生み出すことに成功した。
5ドアのボディは、全長4.88m、全幅1.93mに対し全高は1.54mと低めに設定され、クーペのようなそのシルエットは、グリーンハウスが極めて低くフラットなデザインになっており、それがリヤに行くほど絞り込まれ、ダイナミックな外観が生み出される。
ボディの空気抵抗係数(Cd値)はわずか0.25で、通常0.30を大きく超えるケースが多いSUVとしては、かつてない優れた値を実現している。
この低い空気抵抗も、500kmを超える長い航続距離に大きく貢献している。速度が80km/hを超えると、ボンネット、ボディサイド、およびリヤエンドに設置された電動エアロパーツが作動して、ボディ周囲のエアフローを整える。
これは、風洞トンネルを使った入念な研究開発の成果であり、室内に伝わるウインドノイズのレベルも低くなった。電気自動車のため、エンジンノイズも発生しない。絶対的な静粛性の高さというEVのアドバンテージがフルに発揮されるのだ。
サイドパネルの垂直分離エッジと、ボディ底面を完全に覆う新開発のマイクロストラクチャーのアンダーボディパネルも、空気抵抗の削減に貢献している。また、このコンセプトカーでは、サイドミラーの代わりにカメラが採用されており、この設計も空気抵抗を減らすとともに、未来的な運転感覚を実現する要素のひとつになっている。
高度なセンシング技術を備えたインテリジェントシステム
Audi e-tron quattro conceptのフロント部に搭載された主要なライトのすべてには、マトリックスレーザーテクノロジーを採用した。
ライトユニットのいちばん低い場所には、5つのライトエレメントが搭載され、斬新な光のシグネチャーを生み出す。
そのライトエレメントのそれぞれに、LED発光体ときわめて薄いOLED(オーガニック発光ダイオード)のエレメントが組み合わされている。
アウディは、市販モデルへの搭載を前提に、マトリックスOLEDのテクノロジーを開発してきたが、今回それをコンセプトモデルに初めて搭載してIAAで公開することになった。
リヤコンビネーションライトも2分割されたデザインになり、それぞれの一番高いところに9つの赤いOLEDユニットが搭載され、その下方に設置された3つのOLEDユニットとともに、テールライトの機能を果たす。
インテリアデザインに於いてもEVの強みを活かしきる
Audi e-tron quattro conceptは、卓越したパッケージングにより、4人の乗員用の広くて快適な室内空間と615ℓのラゲッジ容量を確保した。
室内は明るく開放感に溢れ、その基本デザインは、コンセプトモデルの新しい操作/ディスプレイ コンセプトと見事に調和している。
車内にあるすべてのディスプレイには、OLEDのテクノロジーが採用された。その非常に薄いフィルムは、どのような形にもカットすることが可能だ。
湾曲したOLEDを用いた新しいアウディバーチャルコクピットは、2014年に実用化されたアウディバーチャルコクピットをさらに進化させたものとなった。
フルデジタルのメータークラスターの左右下側には、黒いガラスと細いアルミフレームを備えた2つのタッチスクリーンが設置され、左側のディスプレイは、ライトおよび自動運転システムを制御するためのもの。
右側の大きなディスプレイでは、メディアおよびナビゲーションシステムを操作することができる。同様の操作はステアリングホイールでも行うことができ、スポーク部分にそのためのタッチパッドが設置されている。
センターコンソールのセレクターレバー下側には、さらに2つのOLEDディスプレイが設置され、そこではドライブシステムの状況を確認したり、空調を制御したり、インフォメーション機能のプログラムを行うことができる。また、ドアの前方に設置された曲面ディスプレイは、デジタル サイドミラーとしての役割を果たす。
一方リヤには、2座の快適な独立式シートが装備された。後席乗員は、センターコンソールに設置されたOLEDディスプレイを使って、後席用のエアコンディショナーおよびインフォテイメントシステムの操作をしたり、ドライバーとデータのやり取りをしたりできる。
また、インターネット接続のためにLTEモジュールも搭載されている。Audi e-tron quattro conceptは、コネクティビリティの面でも最先端の技術を誇っている。
さらにAudi e-tron quattro conceptには、自動運転のためにアウディによって開発されたあらゆるテクノロジー(レーダーセンサー、ビデオカメラ、超音波センサー、レーザースキャナー)が搭載された。
それらにより提供されるデータは、ラゲッジコンパートメントに設置されたセントラル ドライバーアシスタンス コントローラー(zFAS)に集められる。
zFASでは、集められたデータからクルマの周囲の状況が演算され、その情報が車載のすべてのアシスタンスおよび自動運転システムのあいだでリアルタイムに共有される。こうしたテクノロジーが市販車に搭載されるタイミングは、もはや間近に迫っているのである。