国土交通省は4月28日、三菱自動車工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長兼COO:相川哲郎、以下、三菱自動車)の燃費データ不正問題を受け、国土交通省自らが今回問題となった軽自動車4車種の再試験を行い、燃費データを改めて計測すると公表した。
同省は、先の三菱自動車による燃費データ提出に関わる不正問題に対して、上記同日に検査制度の見直しを検討するため、同日13時より、同省自動車局の局長、次長、総務課長、技術政策課長、審査・リコール課長に加え、独立行政法人自動車技術総合機構・交通安全環境研究所代表理事(交通安全環境研究所所長)、自動車認証審査部長、首席自動車認証審査官による8人のタスクフォースが出席して、専門の作業部会を開いた。
議題は、自動車の型式指定審査において、メーカーが提出する走行抵抗値その他の数値に係る不正を防止するための具体的方策を検討すること。
三菱自動車では、燃費計測にあたり、接地タイヤに起因する路面との摩擦抵抗や、走行時の風圧抵抗等の発生抵抗値に不正に手を加えていたとされること。
さらに2000年に発覚したリコール隠しの問題を挟んで、この抵抗計測値算出にあたり、国が定めていた計測時環境である「惰行法」とは異なる「高速惰行法」を用いた計測方法を永年運用していたこと(※)。
加えて一部のグレードのみの計測データや、さらに燃費基準に対し、自社にとって最も都合の良いデータを国に提出するなど、法令遵守不在の企業体質などが露呈した。
同日の会議は、このような三菱自動車の複合的な不正問題解消についての同省としての回答を求めたものだ。
結果、行われた作業部会の中で、今回の問題露呈を契機に「燃費試験」のみに関わらず、広く自動車の検査項目について、自動車メーカーが提出するデータのみを鵜呑み状態に信用して、型式認定を行う現在の仕組みについて、今回、自動車メーカーとの信頼関係が崩れたことから、これを改め、自動車メーカーから提出を受けたデータを元に国の検査員が抜き打ちで測定に立ち会ったり、測定値をチェックしたりすることが必要という認識で合意に達した。
また併せて、特に今回、三菱自動車から提出されたデータ改ざん問題については、週明けの5月2日より、独立行政法人「自動車技術総合機構」が、対象の軽自動車4車種の走行試験を国自らが改めて実施し、公正な燃費データを測定し直すと公表した。
今回に見られる国が自ら走行抵抗値を測定し、燃費等の再試験を行うのは、昨今の政府行政に於いて、まさに異例中の異例のこと。
国土交通省は、再試験で燃費の正確なデータを測定し、リコール内容の是非や、エコカー減税の対象範囲の見直しなどを進めていくとしている。
なお試験結果については6月中に公表される見込みだ。加えて三菱自動車の他車種についても、データ改ざんがないか確認し、不正があれば走行抵抗値を測定する構えだ。
(※)「高速惰行法」並びに「惰行法」のいずれも、燃費データ計測時にシャシダイナモ(計測台車に車両を乗せた台上試験)に掛ける際の走行抵抗係数(主に車両の転がり抵抗値並びに空気抵抗値)を算出するためのもの。
惰行法は、時速90km/hなどの実用速度域から惰行走行を行い、速度低下10km/h分の減速抵抗値を算出する方法。
一方、高速惰行法は、より速度の高い車速状態から1秒毎の速度低下に伴う減速抵抗値を算出する方法として知られている。
今回、三菱自動車では、本来の惰行法で走行抵抗値を計測しなければらないと認識しながらも高速惰行法を利用し、その数値から逆算して、惰行法で計測されるに近い値を算出し提出していたとされている。
これについては算出値の不正以前に、自動車全メーカーに対して、公平に与えられたルールを遵守しなかった点に問題があると見られている。