市場調査・シンクタンクの株式会社・矢野経済研究所(本社:東京都中野区本町、代表取締役社長:水越 孝、以下、矢野経済研究所)では、デジタルイノベーションに対する意識や、その動向について国内の民間企業等に対して法人アンケート調査を実施した。
その結果、革新的な技術や、ビジネスモデルの採用などについて、日本国内に於ける多くの企業の自己評価は平均値3.17となり、総じてデジタルイノベーションの導入姿勢について、消極的であることが明らかになった。
より詳細には、同アンケート調査では、日本国内の民間企業等を対象として、デジタルイノベーションに対する意識、革新的技術・ビジネスモデルの採用に関する企業風土を調査した。調査対象等の概要は以下の通り。
1.調査期間:2016年7月~2017年3月
2.調査対象:国内の民間企業等551社、およびIoTプラットフォーム提供事業者。
3.調査方法:郵送アンケート調査、および当社専門研究員による直接面談他。
上記調査結果サマリーで、革新的な技術やビジネスモデルの採用などについて、多くの企業法人が導入姿勢で消極的であることが判明した。
さらに具体的には説明すると、国内の民間企業等への法人アンケート調査結果(n=542)によると、自社の革新的な技術やビジネスモデルの採用について、どのような企業風土と思うか、7段階で自己評価を依頼した。
その結果、4(普通)という回答が128件(構成比23.6%)と最多を占めたものの、平均値は3.17に留まった。これは普通を示す「4」を下回るもので、日本の平均的な企業はデジタルイノベーションに消極的であることが判る。
創業年が若い企業ほど、デジタルイノベーションには積極的
さらに法人アンケート調査結果(n=542)から、自社の企業風土の1(消極的)から7(積極的)の段階毎に、回答した企業の創業年の平均値を求めた。
結果、7(積極的)と回答した企業群が1967.5年と創業年が最も新しい(若い)という数字が浮かび上がった。
全体傾向では、「2」が1947.5年と最も創業年が古く、7(積極的)へいくほど創業年が現在に近くなっており、概ね、企業風土が積極的な企業は若い(創業年が新しい)企業とみることができる。
産業用IoTプラットフォームは概ね4つのタイプに分類できる
調査に関連して実施したIoTプラットフォーム提供事業者への調査結果によると、昨今のデジタルイノベーションの動きのなかで、産業用IoTプラットフォームといったソリューションの提供が行われるようになってきており、それらを分類すると概ね4つのタイプ、水平・業種フルカバレッジ型、垂直・機能フルカバレッジ型、垂直・アプリ提供型、垂直・基本機能提供型に分類できることが分かった。
【調査結果の詳報】
1.企業のデジタルイノベーションへの意識について
デジタル・ディスラプション、第四次産業革命などが注目されているなか、矢野経済研究所では、2016年 7 月~8 月にデジタルイノベーションに関する企業意識の法人アンケート調査を行った。
国内の民間企業等を対象として、作成した質問は以下のものとした。「AI、IoT、ロボットなどの新しいテクノロジーや Airbnb、Uber などのシェアリングエコノミーといった新しいビジネスモデルの登場により、将来、産業構造が大きく変革されると言われています。
貴社は新しい革新的な技術やビジネスモデルの採用について、どのような企業風土と思いますか?」という質問を実施した。その結果7 段階で以下の回答を得た。
その結果、4(普通)という回答が 128 件(構成比23.6%)と最多を占めたものの、平均値は 3.17 に留まった。
これは普通を示す「4」を下回るもので、自社のデジタルイノベーションに対する企業風土について自己評価をしてもらったわけであるが、日本の平均的な企業はデジタルイノベーションに消極的であることが明らかになった。
注1)調査期間:2016 年 7 月~8 月、調査(集計)対象:国内の民間企業等 551 社のうち、不明を除く 542 件、調査方法:郵送アンケート調査、単数回答、四捨五入のため表内合計が一部異なる。
また、1(消極的)から 7(積極的)の段階毎に、回答した企業の創業年の平均値を求めると、7(積極的)と回答した企業群が 1967.5 年と創業年が最も新しい(若い)という結果となった。
傾向では、「2」が 1947.5年と最も創業年が古く、7(積極的)へいくほど創業年が現在に近くなっており、概ね、企業風土が積極的な企業は若い(創業年が新しい)企業とみることができる。
注2)調査期間:2016 年 7 月~8 月、調査(集計)対象:国内の民間企業等 551 社のうち、不明を除く 542 件、調査方法:郵送アンケート調査、単数回答。
2.産業用 IoT プラットフォームの種類について
本調査に関連して実施した IoT プラットフォーム提供事業者への調査結果によるとIndustrie4.0(インダストリー4.0)や Industrial Internet といった昨今のデジタルイノベーションの動きのなかで、産業用 IoT プラットフォームといったソリューションの提供が行われるようになってきている。
産業用 IoT プラットフォームについては、図表 2 の通り、機能範囲と業界のマトリクスで描くことができる。
機能範囲は、クラウド基盤(IaaS・PaaS)および分析機能などを備えた基礎アプリケーション群(可視化~AI など)がセットにされているところ(灰色部分)がコアな要素となる。
そこに、下位層ではネットワーク(M2M など通信系)とセンサー類(センサーや端末、機器など)、上位層では特定産業向けの応用アプリケーション群、IoT ソリューションの開発・導入・運用支援(PoC、アジャイルなど)が入る。
また、産業用 IoT プラットフォームがカバーする業種・業界は、製造業や公共分野などさまざまなものが該当する。それらを分類すると概ね 4 つのタイプ、水平・業種フルカバレッジ型、垂直・機能フルカバレッジ型、垂直・アプリ提供型、垂直・基本機能提供型に分類できることが分かった。(以下、「産業用IoTプラットフォーム」に関わる種類・解説を参照)
多様な業界をカバーするプラットフォーム提供事業者も存在するが、垂直型で構成する場合、ある程度、分野は決まってくる。現在のところ、製造業やエネルギー分野で垂直型ソリューションを展開するケースが多いと考える。
【産業用IoTプラットフォームの解説】
種類_水平・業種フルカバレッジ型
内容_水平型のソリューションとしてどの業種もカバーしようとするもの。全業種に対して提供されるクラウド基盤であり、その基盤(プラットフォーム)上にユーザーや SIer などがIoT システムを開発することを主要コンセプトとする。
種類_垂直・機能フルカバレッジ型
内容_開発・導入から応用アプリケーション、基礎アプリケーション、クラウド基盤、ネットワーク、センサー類まで、IoT ソリューション構築にかかわる全要素をフルカバレッジでソリューション提供しようとするもの。
同領域は国内大手 SIer が主な提供者であり、ここでいうプラットフォームとは、“IoT ソリューションを開発・運用しビジネスとして動かすためのプラットフォーム”という意味合いが強い。
種類_垂直・アプリ提供型
内容_フルカバレッジ型から、開発・導入・運用支援を差し引いた領域を主に手掛けるのが垂直・アプリ提供型である。外資系の大手製造業が IoT プラットフォームの提供に乗り出しているが、概ねそうした企業の提供するものが該当する。
サードパーティによるアプリケーション開発のプラットフォームにもなっているケースも多い。
種類_垂直・基本機能提供型
内容_目的や機能を絞り提供される IoT プラットフォーム。遠隔監視・予防保全のみに絞った IoT プラットフォームなどが一部のベンダーから提供されている。