生産開始は2019年から。アウディでは2車種目となる電気自動車は流麗なクーペデザインを纏う
アウディは、上海モーターショーにおいて多様な性格を備えた電気自動車のコンセプトカー、「Audi e-tron Sportback concept(イートロン、スポーツバックコンセプト)」を発表した。
このデザインスタディモデルは、クーペのスタイルをまとい、320kWの電気駆動システムなど高度なテクノロジーを搭載した4ドアのグランツーリスモである。
この正統派GTモデルは、アウディの伝統的な特徴に、電気駆動テクノロジーと専用に開発されたアーキテクチャーによる、数多くの先進的なディテールを組み合わせている。
AUDI AG取締役会会長のルパート シュタートラー氏によると、Audi e-tron Sportback conceptはeモビリティ実現に向けた重要な節目となるモデルであると云う。
同氏は「日常ユースに対応したアウディの初めての電気自動車となるAudi e-tron(Audi e-tron quattroより呼称を変更)の生産は、2018年から開始される予定です。
この分野では、非常に激しい競争が繰り広げられています。我々は、500kmを超える航続距離と電気自動車ならではのドライブ体験を提供するこのスポーティなSUVを、2020年代におけるアウディの主力製品にするつもりです。
Audi e-tronに続き、2019年には、Audi e-tron Sportback conceptの生産バージョンを市場に投入する予定です。このクルマは、ひと目見ただけで電気自動車と認識できるエモーショナルなクーペです」と述べた。
そんなAudi e-tron Sportback conceptは、エンジンを始動させるかドアを開けた場合、微細にライトユニットを切り替えて、動きを伴った「挨拶」のサインを発する。
そうして乗り込んだ室内は、意識的に明るい色でまとめられ、ダッシュボードの水平面と、宙に浮いているように見えるセンターコンソールによって、4座の独立シートを備えた室内は、広々とした印象を与えている。
ドライバーと乗員は、中央のディスプレイの下、センターコンソールの上、そしてドアトリムにも設けられた広い面積を持ったタッチスクリーンを介して情報を受け取ったり、車載の各システムを操作したりすることができる。
また搭載された照明テクノロジーには、昼夜を問わずに最適な視認性を実現する革新技術が採用されている。特にボディ前後のデジタル制御式マトリクスLEDユニットにより、多彩な光の演出が行われる。
小さなデジタルマトリクスプロジェクター群は、前方の道路に向けてマークやサインを表示することで、周囲の道路ユーザーとの多様でダイナミックなコミュニケーションを可能にする。
数多くのLEDとマイクロミラーを組み合わせた表面と、複雑な制御技術を組み合わせることで、様々なアニメーションの動きや光のサインを表現することが可能になった。
デイタイムランニングライトの下、シングルフレームグリルの両側にも、約250のLEDから構成された2つの大きなライトエリアが設置されている。ここには、クルマが走行中でも、様々なグラフィックや、特定の意思を伝えるための表示を行うことが可能となっている。
さてここで車両概要をパワーユニットに移すと、同車に搭載されている駆動システムは、将来アウディが電気自動車の生産モデルに採用を予定している構成をそのまま搭載した形となっている。
すなわち、フロントアクスルにひとつ、リヤアクスルに2つの電気モーターをそれぞれ設置して4輪を駆動することで、このクーペを典型的なアウディのquattroモデルに仕上げている。
320kW(ブーストモードでは370kW)のパワーは力強い推進力を発生し、0~100km/hをわずか4.5秒で加速する俊足ぶりを発揮し、バッテリーのエネルギ—容量は95kWhであるから500kmを超える航続距離(NEDC)を可能にした。
なお先に発表したAudi e-tron quattro conceptと同様、水冷式のリチウムイオンバッテリーは、前後アクスルの中間、パッセンジャーコンパートメントの床下に配置される。
この搭載方法を採用することでクルマの重心を下げ、前後アクスルの重量配分も52:48(フロント:リヤ)と最適化することが可能になった。
それにより、スポーティなSUVコンセプトのAudi e-tron quattro conceptは、同セグメントの既存モデルよりも優れた運動性能と走行安全性を実現。バッテリーは、コンバインドチャージングシステムにより、交流(AC)と直流(DC)の両方で充電することができる。
こうした未来のアウディブランドの様式を受け継いだ「Audi e-tron quattro concept」について、AUDI AGセールス&マーケティング担当取締役ディエトマー フォッゲンライター氏は、中国市場における電気自動車の重要性を強調しつつ、「ここ上海でAudi e-tron Sportback conceptを初公開したことには意味があります。なぜなら中国は、電気自動車に関して世界をリードする市場であるからです。
それは販売面はもちろんのこと、インフラ整備や行政による補助の面でも当てはまります。
この国にはすでに約15万の充電ステーションが存在し、2017年末までにはさらに10万か所が増設される予定です。そうした急激な成長に我々も対応しようとしており、今後5年以内に中国で、e-tronモデルを5機種発売する方針です。
そのなかにはAudi e-tron Sportback conceptのような、500kmを超える航続を可能にした純粋なバッテリー式電気自動車も含まれています」と語っている。
Audi e-tron Sportback conceptのスタイリングは、フロントエンドに非常に幅広く、水平の開口部が設けられた八角形のシングルフレームグリルが設置された。
ここは実際には、電気モーターの場合は冷却エアをあまり必要としないため、大きなエアインレットを設ける必要はない。そこでボディ同色にペイントされた立体的なフロントには、従来のシングルフレームグリルの場合と同じように、4リングスのロゴが配置されている。
より微細にこの部分を眺めてみると、シングルフレームグリル中央部のエッジは内側に後退しており、上部を通ってエアが流れるようになっている。このエアインレットも、フロントエンド一杯に広がった黒い八角形のフレームのなかに収まっている形だ。
ボディサイドでは、ボディから大きく張り出して上端が水平にカットされたホイールアーチの造形により、このクルマがquattroモデルであることを体現している。
そこに収められた6スポークデザインを備えた大径23インチホイールが大型クーペとしての力強い存在感を演出。全長4.90メートル、全幅1.98メートル、全高1.53メートル、ホイールベース2.93メートルのAudi e-tron Sportback conceptは、実はサイズの面ではAudi A7に近い。
視界の確保という面ではサイドミラーが廃止され、代わりに小さなカメラがボディの両側に装着される。
このテクノロジーは、空気抵抗と風切り音を減らす以外にもメリットを提供する。従来のミラーにあった死角が事実上消滅し、同様に斜め前方の視界も改善されているからだ。なおカメラからの映像は、ドアに設置された専用のディスプレイに映し出される。
今を遡ること2015年のフランクフルトモーターショーで、アウディは、ブランド初の生産型電気自動車の先駆けとなるモデル、
Audi e-tron quattro conceptを発表した。
これはまったく新しい発想から生まれたSUVで、最長500kmに達する航続性能と、アウディのフルサイズカーならではの広い室内、快適性を実現。同時に、高性能スポーツカーに匹敵するパフォーマンスを備え、0~100km/hをわずか4.6秒で加速する俊敏性を誇っていた。
その先駆的なSUVの電気自動車、Audi e-tron quattro conceptの生産バージョン(Audi e-tron)は、2018年に市場に登場する予定だ。翌2019年には、今回初公開したAudi e-tron Sportback conceptの生産バージョンが続く予定である。