13の国際的企業のリーダーが気候変動の目標達成を目指す「Hydrogen Council(水素協議会)」が設立される
2017年1月18日(スイス現地時間:2017年1月17日)、エネルギー・運輸・製造業の世界的なリーディングカンパニー13社で構成された「Hydrogen Council(水素協議会)」が発足した。
この「Hydrogen Council」は、水素を利用した新エネルギー移行に向けた共同のビジョンと長期的な目標を提唱するグローバル・イニシアチブ(活動体)としての活動を担うもの。
また同カウンシル(協議会)は、世界初の水素に関するグローバル・イニシアチブとして、水素を将来のエネルギー移行に向けたひとつの主要な解であると位置づけた。
同協議会は、水素は様々な特長を有する多様性あるエネルギーとして定義しており、使用時にCO2を発生しないクリーンな燃料・エネルギーとして、クリーンで低炭素なエネルギーシステムへの移行に重要な役割を果たすとしている。
また水素関連の技術と製品は、この数年の間に大きく進化し、次第に市場に投入されつつあると述べている。
このカウンシルでは、政策立案者、ビジネス界、水素を利用する会社、国際組織、市民団体など、多くの主要ステークホルダーと協働しながら、水素利用の推奨策を示し、共同の目標を達成していくことを目指していく。
今回の発足に関わったメンバーは、水素並びに燃料電池の開発と商業化に関し、現時点で約14億ユーロ/年(2017年1月11日の為替レート換算で約1,714億円)と推定される大掛かりな投資を、更に加速させていくことを確認した。
そのため適切な政策とスキームのもと、主要なステークホルダーが 水素を将来のエネルギーミックスのひとつとして捉えることにより、この額は更に増額する可能性もあるとも云う。
今回のダボスに於ける第一回のHydrogen Council会合には、様々な製造業・エネルギー会社の13人のCEOならびに会長らが参加。
これらの企業は、2015年のパリ協定で合意された「(気温上昇を)2℃以下に抑える」という大きな目標の達成を目指し努力していく構えと云う。
なお現在、同カウンシルに参加している企業は、 Air Liquide(エア・リキード)、Alstom(アルストーム)、Anglo American(アングロ・アメリカン)、BMW Group(BMWグループ)、Daimlar(ダイムラー)、Engie(エンジー)、本田技研工業、Hyundai(ヒュンダイ)、川崎重工業、Royal Dutch Shell(ロイヤル・ダッチ・シェル)、Linde Group(リンデグループ)、Total (トタル)、トヨタ自動車の計13社。
このカウンシルは、地域・業種の異なる2つの共同議長会社により推進され、現在、その企業は「Air Liquide」と「トヨタ自動車」がその2社となっている。
Air Liquide社のブノワ・ポチエCEOは「気候変動を抑える2015年のパリ協定は、 社会を正しい方向に導く大きな一歩ですが、同時にこうした協定内容を現実のものとするためには、具体的な企業行動が 必要となります。
Hydrogen Councilには、製造業・エネルギーの世界的なリーディングカンパニーが参画し、エネルギー移行にあたって、水素が一つの主要な解であると注目されている理由を明らかにしていきます。
このエネルギー移行については、発電、家庭向けエネルギーに加えて、モビリティの分野も含まれます。
水素を中心に据えてエネルギー移行を果たしていく目標を達成するためには、新しい大規模な戦略を作り上げることが必要です。
しかしながら、こうしたことは当カウンシルだけではできません。カウンシル・ メンバーの活動に加えて、大規模なインフラ投資計画など、政府のサポートが必要です。
当カウンシルが、本日行った世界のリーダーへの呼びかけは、水素の可能性にコミットしていくことにより、気候変動抑止への目標を共有し、水素を中心としたエコシステムへと発展させていく大きな原動力になると確信しています」とコメントした。
一方、トヨタ自動車の内山田竹志会長は、「Hydrogen Councilは、水素技術とその便益を世界に示しリーダーシップを果たしていきます。
当カウンシルは、協働、協力、相互理解を政府や産業界から、そして何より重要なことではありますが、一般の方々から得ていくことを目指しています。
当社は、燃料電池車の導入などを通じ、自動車業界の中で、環境並びに関連技術の進捗を先導する役目を果たしてきましたが、今後はさらに、水素が運輸分野だけでなく産業界全体、並びにバリューチェーン全体で、低炭素社会への移行を支えていくポテンシャルがあると認識しています。
私たちHydrogen Councilは、この移行を積極的に推進してまいります」と語った。
加えて本田技研工業・代表取締役 副社長執行役員の倉石誠司氏は、「Hondaは、様々な電動化技術を開発・推進することで、化石燃料への依存を減らし、持続可能な社会の実現を目指しています。
具体的には2030年をめどに、四輪車の世界販売台数の3分の2を、ゼロエミッションビークルの燃料電池自動車(FCV)やバッテリーEV並びにプラグインハイブリッドやハイブリッドといった電動化技術を搭載した機種に置き換えることを目指しています。
中でも水素とFCVは、社会のエネルギーシステムの中核をなす可能性を秘めています。
FCV技術を開発するリーディングカンパニーの一つとして、当社は、世界中で水素社会を発展させる取り組みを強化したいと考えています。
このたびの水素協議会の発足を通じて、製造業・エネルギーの世界的リーディングカンパニーが協力することで、この取り組みが加速されると信じています」とコメントした。
続いて川崎重工業は、「当カウンシルの一員として水素の大量利用に必要な技術開発を行い、水素エネルギーの普及を推進していきます。
技術開発は、水素製造から輸送、貯蔵、利用までの水素エネルギーサプライチェーン全般にわたり、その製品化に取り組んでいます。
当社は、水素、ヘリウム、天然ガスなどの液化ガスの極低温技術について 50 年以上の歴史を有しており、水素を安全に、安定的に、そして経済的に取り扱い、大量の水素を世の中で利活用できるようにすることを目指します。
併せて2020 年には、日豪間の船舶による液化水素の大規模/長距離輸送の実証(H27年度、NEDO 課題設定型産業技術開発費助成事業「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」として技術研究組合 HySTRA を通じて実証)も開始します」と述べている。
Hydrogen Councilによる「How Hydrogen empowers the energy transition(いかに水素 は将来エネルギーへの移行を後押しするか)< http://www.hydrogencouncil.com >」と題するレポートでは、この水素に関する将来的なポテンシャルについてさらに詳しく説明している。
そのポテンシャルとは、水素にはカウンシルメンバーのビジョンを実現し、政策担当者の基本的な政策案に関し解決策を提供し、エネルギー移行の課題解決に貢献していくことが出来ると云うもの。
エネルギー・製造業の分野のグローバル企業にとって、エネルギー移行をマネジメントする方法や、低炭素で持続可能な経済実現に向けて一歩踏み出すことは責任の一環である。
この難しい課題に立ち向かうためには、協働で行動することが必要で、同カウンシルは水素がエネルギー移行にもたらす役割の認識のもと、政府や主要なステークホルダーとともに、効果的な実行計画を作り出すことを目指すとしている。
ちなみにHydrogen Councilメンバー企業全体では、収入全体で1兆700万ユーロ(1兆700万ユーロは、2017年1月11日の為替レート換算で約129兆5000億円)の事業規模を持つ。
人的リソースでは、世界全体で172万人の社員(参加企業の2015-2016会計年度<financial years 2015 and 2016>の数値に基づく)を有する。
水素について
同カウンシルによる水素の定義については、水素は多様で安全なエネルギーであり、発電用、もしくは産業用原料として使われる。
また、大規模な貯蔵も可能である。Hydrogen Councilのメンバーは、水素の展開と利用にコミットしている。
水素は(再生可能な)電気や低炭素の化石燃料から作ることができ、使用の段階ではエミッションを出さない。
水素は、高密度の液体もしくは気体の形で貯蔵・輸送でき、また燃料として燃やす、また燃料電池で熱と電力を発生させることが出来る。
この多様性により、今後輸送、製造業、家庭用のエネルギーとして重要な役割を果たすことが出来るとする。
また、再生可能なエネルギーを貯蔵できるという事でもあることから、エネルギー移行の様々な課題を解決できると期待されていると結んでいる。